見出し画像

月のランドルト環【朗読:いぬいゆうた氏】

「右!」

と思わず指が、瞳が、脳が反応した。

上記の見出し画像を見た瞬間、心を鷲掴みにされたわたくし。

画像は、拙作『月のランドルト環』をイメージしていぬい氏が編集、加工してくださったもの。
(人物イラストの作者は武川蔓緒 氏)

遊び心があり、面白い。
それに、この1枚に当拙作が要約されている。

この時点ですでに、いぬい氏への畏敬の念がふつふつと込み上げてきた。

そしていよいよ、わたくしは、いぬい氏による朗読、「初めて自作小説を耳から読む」という、新しい世界に足を踏み入れたのである。

その朗読で出会ったものとは。

聴く者の「心を操る」美声と発声。

朗読空間に設けられた「聴き手のための席」

私は導かれるまま席に座り、いぬい氏が創る 3D の世界に身を委ねた。それはプラネタリウムを鑑賞するときの雰囲気に似ていた。

魅惑的な声と技術力の高さは、周知の事実。

わたくしがいぬい氏について語るなんて、おこがましいかぎり。しかも、先日「はじめまして」のご挨拶をしたばかりなのに。

でも、言いたい。

いぬい氏が奏でる「音」のハーモニーは、奥行きを生成し、別の次元へと昇華させる。

感度の良さ、洞察力、そして論理的な思考との合わせ技。経験という磨きのかかった技術、廃れない探究心と柔軟性。
それらが合わさって一つの作品が創られているに違いない。そう感じた。

具体的な内容は後述します。

その前に……

いぬいさーん!
前置きが長くなりましたが、このたびは、拙作『月のランドルト環』を朗読してくださり、ありがとうございました。
また、わたくしの重ね重ねの図々しいお願いにも快諾してくださり、感謝の念に堪えません。

みなさま、まずはいぬい氏の朗読をじっくりお聴きください。
今日の着眼点はここ。
後半、BGM が変わって「実は、数日前から、私の周りには……」のあたり。ゾクゾクします。

いかがでしたか?

わたくし、また鳥肌が。
何回聴いたんだって話ですけれど。
ほら。
見て。
二の腕のあたり。きっともうじき羽毛が生えて、わたくしは鳥に生まれ変わるはず。
あらら、わたくしったら、また妄想の世界に落ちました。スミマセン。時々落ちます。
でも、そう思うくらい鳥肌が立ったのです。

軌道を修正します。
『月のランドルト環』の主人公にとっては当たり前の日常。
なにか引っかかることが過去にあったのかもしれない。
でも、思い出せない。
それなら先延ばし。
そんなドライな彼女。 

でも傍から見ると、彼女の日常は奇妙であり、不気味さに包まれている。
なにかがちょっとずれている。そんな少し不思議な世界。
月は変わらず美しく、鑑賞の対象でもあり、彼女を見守っているようにも思える。

そして、エンディング。
朗読は静かに「余韻」を残して終わる。

その余韻は、いぬい氏曰く、
「読んだ方聞いた方が妄想を広げることができる作品だと思います。その意味では、連作短編のうちの一作のような味わいを残せたら、と思った」とのこと。

嬉しいお言葉です。

しかし、原作を書いたわたくしが、まんまとその「余韻の罠」に引っかかったのです。

聴き終えて、最初に発した言葉は、
「え、この先どうなるの?」

わたくしは自分の言葉を合図に、また一人妄想の世界へと深く落ちて行ったのです。
いつか続きが書けるといいな。

いぬいさんの当拙作の解釈についてもお聞きしたのですけれど、大変興味深い内容でした。
自分とは違う、他者の考えや発想をお聞きする機会がある、というのは実に幸せなことです。


「朗読」についても少し考えてみました。

朗読は、2D といわれる小説の世界を、3D へと変容させるという。

今回、朗読を通して感じたのは、登場人物の心情の変化や場面ごとに変わる空気感など、臨場感にあふれている、ということ。

想定外だったのは、筆者、つまりわたくしの「感情が代弁されている」という不思議な感覚。
言葉の代弁はあっても、それにともなう感情の代弁は初めての体験。
これは、拙作を理解してくださったうえでの朗読だからだろう。

すごいなぁ。



褒められるのは純粋に嬉しい。
でもそれ以上に、気づきを与えてもらったり、なにかに挑戦し続けている者から自分とは異なる考えを聞いたりすることは、この上ない幸せを感じる。

このたびも、そう思える素晴らしい体験をさせていただいた。

当拙作に「彩り」と「奥行き」を与えてくださった
武川蔓緒さん
いぬいゆうたさん
本当にありがとうございました。

また、ご一緒できたら嬉しいです!


原作はこちら。
あとがきには、武川蔓緒さんへのイラスト依頼に関わる話や、いぬいさんの朗読へとつながったいきさつなど、話題満載(ほんとかな)。

イラストを担当してくださった武川蔓緒さんの人気作品はこちら。
こちらも、いぬい氏による朗読バージョンがあります。

下記のいぬいさんの記事は、わたくしの拙い小説を朗読したためか、通常よりもスキが少なく……、申し訳なく思っております。
もしよろしければ、こちらの記事もお読みいただけると救われます。


ume15 の記事に立ち止まってくださった方
最後までお読みくださった方
朗読をお聴きくださった方
貴重なお時間をありがとうございました。

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