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燃えかすの意味【掌編小説/あとがき】
いつの日からか、仕事が終わり帰宅する頃には、僕のポケットは「燃えかす」で一杯になっていた。
燃えかすの存在に気づいたのは、中年といわれる世代になってから。多少のショックはあったものの、極々少量だったし、不自由さも感じていなかったので、ポケット内に溜まったゴミと同程度の扱いをしていた。
けれど、歳を重ねるごとに燃えかすは徐々に増えていき、今では一日でポケットが一杯になる。
そこで僕は、
壊れる価値【掌編小説】
「からだが、思う、もうように、うごき、きま、きません」
昨日届いたもみの木の前で、形状を変えられずにいる物体。
板の間の上で、ガタッ、ゴト、ゴトンと不連続な音を立てている。
買い出し用の荷物を抱え、土間から家に入ると、もがきながらそう訴えていたのは、シズムだった。
「壊れたのか?」
「ごめ、んなさ……」
シズムは僕が大事にしているオーナメントの一つだ。
何かエラーがあったのだろう。ボデ