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きっといつかね


 わたしは、ふたりの子どもを育てている。

 子育てのゴールは、子どもたちを一人前にして、送り出すことだった。そのことに気がついたとき、なんともせつない気持ちになった。手を離すことが、ゴールだなんて、と。

 子どもたちが小さい頃は、無我夢中だった。怪我や病気のたびに気を揉み、成長のひとつひとつに顔が綻んだ。かわいくて愛おしい。こんな存在があるんだと驚いた。母性。わたしにはないものだと思っていたのに、自然に湧いてきた。

 それでも、教え、導いていくのが、正しいと思っていた。厳しくやったと思う。娘は、とことん、それを跳ね除け、息子は素直に従った。今、思うと、余計なことばかりしていたような気がする。

 息子の不登校を経験して、振り返る余裕ができた今、学校へ行かないことは、なんの問題もないことだとわかる。問題だと思い込んだことが、問題だった。学校に行かずとも、子は育つ。学校に行けないことで、息子が自分を責め、自分への信頼感を下げることの方が、大問題だった。

 それから、登校しぶりから、8年がたった昨年、身に染みて、わかったこともある。

 息子を、学校の枠に合わせて、変える必要なんか、全くなかった。ただ、親のわたしたちが、そのままの息子に合う環境を一緒に探し、そこに導けばよかっただけ。楽々と、安心して、過ごせる場所に。ひとつじゃなくて、できたら、たくさんの場所に。それは、学校に限らない。

 通信制高校に通い、社会人サッカーチームに所属する息子。わたしの元からゆっくりと、順調に、離れていっている。子育てのゴール、まだ先だけれど、うっすらと見えてきた。息子より3つ上の娘も。

 大学進学を機に、ひとり暮らしをして、はや1年の娘。たくましくなった。とても苦労しただろうこと、よくわかる。そして、わたしとの距離、それは、心理的な距離のことだが、ゆっくりと、けれど、着実に離れていっていることを、ひしひしと感じる。

 娘は、昔から自我がはっきりとしている。自分の力量をはっきりと自覚し、無理は決してしない。けれど、新しいことが好きで、果敢にチャレンジもする。

 「迷ったらね、やってみることにしてる。」

 そう言う娘に、時々、驚かされる。春休み、1泊2日のひとり旅で、仙台、松島、秋保温泉に行ってきたようだ。そして、今は、西オーストラリアのパースに、3週間の短期留学中だ。

 そんな娘は、4年前には、うちから電車で1本の名古屋にすら、ひとりでは行けなかった。知らぬ間に、ぐんと、成長している娘が眩しくて、うれしい。そして、ちょっぴりさみしくもある。

 娘の長年の夢が、ようやく、ようやく、叶った。うんと、楽しんで、そして、肌でいろんなことを感じ、学んできてほしい。もう、わたしは、全く、心配していない。

 大人サイズになった今でも、変わらず、かわいくて愛おしい子どもたち。少し前から、そのままの子どもたちを受け止めて、ただ見守っている。自分で、いろいろとできるようになっておかないと、困るのは、子どもたちだ。だから、自分でやってもらう。手はかけすぎないように。

 こう、できるようになったのは、最近のことで、それまでは、過保護なかあちゃんだった。特に、息子に対して。世話を焼くことがわたしの役割であり、生きがいのようになっていた。それは、子どもをダメにすると、ようやく、わかった。

 見守ること。待つこと。それは、実にシンプルだ。けれど、それはときに、難しい。わたしがやった方がはやいし、簡単だもの。口も手も出したくなる。ハラハラも、やきもきもする。だから、今は、そっと、その場を離れる。大丈夫だから、任せよう。

 それから、ここからは、自戒を込めて、未来の自分に向けて、かいておきたい。

 さみしいからといって、手をつなぎたがるのは、違うよね。さみしくても、そんな素振りさえ見せず、軽やかに笑って、送り出そうよ!

 そうして、夫と互いの健闘を讃え合うんだ。わたしたち、よくやったね、と。

 きっと、いつかね。


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noteを始めてから、たくさんの方に支えられております。記事を通して、共感、励ましや助言をいただきました。また、新たな気づきもいただきました。本当にありがとうございます♪

息子のような経験をされた方がいて、それを乗り越えられたことに、勇気づけられました。学校に行かずとも、生き生きと過ごされているご家庭を知り、安心して息子を見守れるようにもなりました。

息子のことだけでなく、自分にも目が向くようになり、自分の人生に主体的に関わっていくこと、自分自身をまずは大切にすること、心があったかくなる選択をすること、素直になること、自分らしくあること…

体感で学んだことがたくさんあります。それから、知らなかったことを知ることができ、わたしの世界も思考も広がっています。それをベースに、感じることを大切にしたら、また新たな自分を再発見しました。

道半ばですが、わたしと同じように悩まれている方々と、背中を押し合い、一緒にこれからも進んでいけたら、と願っています。

最近では、詩やエッセイ、絵だけでなく、創作や、朗読にチャレンジし、歌まで歌ってしまいました。楽しい!自分らしさがわかってきました。わたし、好きなものがいっぱいあるのだと気づきましたし、それが、ひとつにまとまると、もっと楽しいのだとわかりました。

これからも、自分の経験や感じたことを、もっとかいてゆきたいですし、自分の意見もかけるようになりたいです。それから、いろんなものを創りたい。

どこに向かっているのかは、わたしにもわかりません。ただ、楽しく、ワクワクとやっていきます。お付き合い、いただけたら、とてもうれしいです。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。それから、いつもいつもありがとうございます!

暑い日が続きます。ご自愛ください。
楽しく、元気に、この夏を過ごせますように。

読んでいただき、ありがとうございました♪


※写真は、娘が送ってくれた、パース近郊の海辺の夕日です。



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