俺が開発したアプリ知ってる?

池袋で会ったDMM新卒1年目の男はとにかく自慢しかしなかった。
その頃は夏だったから、その人はまだ入社4か月くらいだったと思う。

DMMのウェブ広告の部署でディレクターとして広告制作をしているらしい。

ジョナサンかどこかのファミレスで、「俺はHTMLを3か月で習得した」
「昨日、っていうか今日の朝4時まで働いてた。毎日そんな感じ」とべらべら話す。

とにかく多忙そうだ。

文系出身なのにプログラマーみたいなことをして頑張っているらしい。
自分が手掛けた「ラブホテルって英語でなんていうか知ってる?」という広告がすごく売り上げに貢献したと言って、その広告見たことある?と聞いてきた。

見たことないし聞いたことすらねえよと思ったが、その人の切れ長の一重の目が真っすぐわたしのことを見てきて、勝手に気まずくなり、「あ、なんか見たことある…かも…」と答えた。

大学時代はアプリの開発をして、そこそこダウンロードされたらしい。

「〇〇(アプリの名前)って知ってる?」と聞かれて、これも見たことも聞いたこともねえよと思ったが、目線の圧がすごかったので「あ、なんか聞いたことある~!」と答えた。

その後も「俺は就活生の時70社にプレエントリーした」「300人のESを見て全部通過させた」「だから就活に顔の良し悪しは関係ない」といろいろ話していた。
わたしのESも見せたが、何かをアドバイスされた記憶がない。たぶん具体的な助言は何もしていなかった気がする。

その人がいる広告の部署はエロ広告専門で、新入社員が半年以上勤続したことがないらしい。
「俺はとりあえず半年は働いて、新人の記録更新したら辞めて起業しようかな~」と言っていた。

社会人はこういう人ばかりなのだろうか。

休んでないとか、仕事の自慢と苦労話ばかりしかしない。
「寝てない」とか言っていきがってる学生と同じじゃないか。

お会計の時、「全部出すよ」と言ってくれた。
年収自慢もしていた(まだ1年働いてないのにね)ので、たくさん稼いでいるんだからそうしてくださいとは思ったが、一応ポーズとして「相談に乗っていただいたので」と500円を差し出した。
わたしの飲み物代は300円くらいだったと思う。

すると、「え、そう?」と案外あっさり受け取って会計していた。
わたしにおつりは戻ってこなかった。

店を出ると、「眠すぎるからネカフェで寝てから帰ろうかな~」と街に消えていった。

新卒の男は大学生と変わらなかった。

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