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あなたたちは意識が高いです

大学2年の冬、就活を始めた。
成人式が終わったばかりの頃だ。

新卒就活を支援しているとかいう会社がやっている「就活キックオフイベント」に行った。外苑前とかその辺のオフィスビルにその会社はあって、広い会議室に学生が100人くらい集まっていたと思う。
みんな、これから自分が作り上げていく素晴らしいであろうキャリアに想いを馳せているようなキラキラした目をしていた。

イベントで何をしたかはほとんど覚えていないけれど、「僕はここの社員じゃないんですけど」などとスーツ姿の若くて細身の男が壇上でしゃべっていたことだけ覚えている。

その人は自己紹介で自分は24歳とか言って、「就活はしたことがないけれど面接で相手に言いたいことを上手く伝えるアドバイザーをしている」と話していた。
今思うと、就活にはこういう、経歴的にアドバイスする立場にないのに偉そうなことばかり言ってくる謎の人がたくさん出てきた。

その謎の男はみんなの前で、「こんなに早い時期から就職に向けて準備を始めているみなさんは、かなり意識が高いです」と言った。
学生の緊張感が少しほぐれるのが分かった。

でも、今なら分かる。

いくら早く動いても、
説明会に行っても、
インターンに参加しても、
OBOG訪問を50人にしても、
そこで「あなたなら絶対就活うまくいくよ!」と言われても、
就活オンラインサロンに入っても、
何十社受けても、

うまくいかない人はうまくいかない。

別にやりたいことなんてなかったけど、大企業に入って、都会のキラキラオフィスに通って、高い給料をもらいたかった。

でも無理だった。

ESで書くことが思いつかなくてイライラする気持ち、
面接で話したことが面接官に伝わってないと感じる瞬間、
4年の夏ごろ、3年の夏とは就活生のレベルが明らかに違って、「ああ、自分売れ残りなんだな」ってさとる時、

あれから何年もたつのに、毎日、就活のつらかった瞬間を思い出す。

そこしか内定がもらえなかった地元企業の内定承諾書にサインした時から、わたしの時間は止まった。


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