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パンパンになった「弁当箱」

 投資や資産形成などについて学ぶ「金融経済教育」の学校現場への普及に取り組んでいる「金融経済教育を推進する研究会」が、こうした教育の拡充を求める要望書を文部科学省に提出したそうだ。

 4月5日付の『教育新聞」の記事によれば、

「現行の学習指導要領では資産形成に関する学習内容が増えたものの、同研究会が実施した調査の結果、教員の知識や指導体制、生徒の理解などの面で課題が見られたと指摘。次期学習指導要領では、投資の意義や役割に関する学習を一層充実させるとともに、担当教員を養成する段階で経済学の知識を身に付けてもらったり、お金や金融などの知識を体系的に学べる教科の新設を検討したりするよう求めた。」

 ということである。


 たしかに、こういう内容を子どものうちから学んでおくことは、人生のなかで賢明な選択をしたり、経済的に安定した未来を築いたりするうえで大切なことだろう。

 だが、すでに学校のカリキュラムには「〇〇教育」が溢れている。

 キャリア教育、情報教育、人権教育、国際理解教育、健康教育、安全教育、防災教育、平和教育、主権者教育、消費者教育・・・。細分化されたものまで全て数え上げていったら、確実に100は超えるだろう。

「弁当箱」にたとえると、
「美味しそうだから」
「体にいいから」
 と、おかずを詰め込みすぎて、すでにパンパンの状態になっているのである。これ以上、新たに何かを入れる隙間はないのだ。

 もし、どうしても入れたいのであれば、
「唐揚げを入れるかわりに、ソーセージをあきらめる」
「ブロッコリーを外して、ホウレンソウの胡麻和えを入れる」
 という具合に入れ替えを考えていくしかない。

 何かをやりたいと考えるのは自由だ。しかし、具体的に提案をするのであれば、
「何を廃止し、縮小するのか」
 という話とセットにするべきである。

 当然、そんな提案をすれば既存の「〇〇教育」の側から猛反発を食らうだろう。けれども、本気で何かを推進しようというのであれば、それくらいの覚悟は必要だ。


 ちなみに、「弁当箱」の蓋の裏に、海苔のように貼りついているものがあるとしたら、それはたぶん「キャリア・パスポート」である。

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