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「ガラスの天井」のロールモデル

 今年のノーベル経済学賞の受賞者に、男女の賃金格差の要因や労働市場における女性の役割などを研究しているハーバード大学のゴールディン教授が選ばれた。

 近年のノーベル経済学賞の中でも、ゴールディン教授の研究は社会的なインパクトが大きいと言われており、今回の受賞に関して慶應義塾大学の坂井豊貴教授は次のようにコメントしている。

長時間働き、そして会社に誠意を見せるようなことが評価される文化は、まだ、日本の企業にも多く残っているところがあると思う。

ただ、それは柔軟な働き方と逆行するものであり、男女の格差を不用意に拡大させるものでもあるということがゴールディン教授の研究から言うことができる。

長時間労働はできるだけやめる、また、この時間は必ず働かなければならないというようなことはやめよう、柔軟に働けるようにしようという方向に世の中が動く1つの大きなきっかけとなるのではないかと思う。


「会社」や「企業」を「学校」に置き換えても、日本の場合には何の違和感もないように思われる。

 夜遅くまで学校に残って仕事をし、休日出勤も厭わない男性教師が重用され、学年主任や教務主任を経て管理職になっていくという構図は、間違いなく全国の学校現場に存在している。

 子育てや家事と仕事との両立の難しさに「ガラスの天井」を感じ、仕事の継続や管理職になることを断念する女性は依然として多いことだろう。

 坂井教授が指摘する「柔軟な働き方」を実現するためには、「行政が主導する働き方改革」と「教職員たち自身の意識改革」の両面からアプローチすることが不可欠である。

 もしもそれを怠れば、その不利益を被るのは現役の女性教師たちばかりではない。

 その学校で学ぶ子どもたちに、好ましくないロールモデルを提供することにもなってしまうのだ。

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