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ホーム・アンド・アウェイ

 来週、教職大学院の院生たちに向けて「教員にとっての『越境学習』」というテーマで話をすることになった。
 そもそも、「越境学習」とは何か?
 法政大学大学院の石山恒貴教授は次のように定義をしている。

ホームとアウェイを往還する(行き来する)ことによる学び

「越境学習入門 」石山恒貴・伊達洋駆著
(日本能率協会)

 また、石山教授は「ホーム」と「アウェイ」についてこのように述べている。

【ホーム】
・個人にとって居心地のよい慣れた場所。
・そこには以心伝心で通じるよく知った仲間がいる。
・そこは変化も少なく刺激の少ない場所でもある。

【アウェイ】
・個人にとって居心地の悪い、慣れない場所。
・普段使う言葉やルールが通じない、見知らぬ人たちがいる。
・新しい刺激がたくさん受けられる場所でもある。

 この「ホーム」と「アウェイ」という表現について、私は実感としてよくわかる。
 来週の話の中では、小学校の教員という「ホーム」で20年以上を過ごしてきた私が、
「日本財団での1年間の派遣研修」
「教育委員会事務局での勤務」
 という「アウェイ」での経験をとおして、何を感じ、何を学んだのかについて話をしてみたいと思っている。
(ただし、「アウェイ」でしばらく過ごすうちに、そこで仲間ができたり、居心地がよくなったりしたことも事実なのだが)。


 ところで、教職大学院には2種類の院生が在籍している。

【現職院生】現職の教員が、教育委員会等からの派遣や自己啓発として学んでいる場合

【学卒院生】学部(他大学を含む)を卒業後、そのまま教職大学院に進学している場合

 このうち、【現職】にとっての「ホーム」は、あくまでもそれぞれの「所属校」であり、教職大学院は「アウェイ」ということになるだろう。
 いくら居心地がよく、仲間がたくさんできたとしても、自己紹介をするときには、
「○○県立○○高校の教員ですが、この1年間は東京学芸大学の教職大学院に通っています」
 と言うはずなのだ。

【現職】の院生にとっての教職大学院

 しかし【学卒】の場合には違う。
 他大学から進学したり、学部時代とは研究室や指導教員が代わったりして、進学当初には多少の「アウェイ」感があったかもしれない。しかし、2年間を過ごす教職大学院は、彼ら彼女らの「ホーム」であることに間違いはない。
 自己紹介をする際には、
「東京学芸大学の教職大学院に通っています」
 と言うはずなのだから。

【学卒】の院生にとっての教職大学院

【学卒】にとっての「アウェイ」とは、たとえば「学校実習(特定の学校で行う長期間の体験活動」であったり、「アルバイト」であったりするのだろう。

 教職大学院とは、そこが「ホーム」である者と「アウェイ」である者とが混在している、実にユニークな学びの場だと言えるだろう。

 それぞれの院生たちには、このユニークさを最大限に活かして学んでほしいものである。

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