立田 順一

横浜市在住。教育関連のことを中心に書いていきます。

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45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

突然の電話「立田さんには、4月からの1年間、企業等への派遣研修に行っていただきます」  教育委員会の担当者から学校に電話がかかってきたのは、3月中旬のことだった。  私は大学を卒業後、すぐに横浜市立小学校の教諭として働きはじめた。それから20数年間、何度か市内での異動はあったものの、小学校以外の職場で働いたことはない。私にとって、その連絡は晴天の霹靂だった。  と言いたいところだが、予感がまったくなかったわけではない。当時の横浜市教育委員会では、毎年、副校長昇任試験の合格者の

    • 新任指導主事が直面する「リアリティショック」(前編)

       早いもので5月である。 「4月は、あっという間に過ぎ去った」  と感じている人も少なくないことだろう。  その一方で、4月の1か月間が永遠であるかのように長く感じられ、ゴールデンウイークが来るのを心待ちにしていたという人もいたはずだ。  この4月から学校現場を離れ、新任の指導主事として働いている人たちの多くも、この「長い4月」を実感していたに違いない。  新任指導主事の場合、教員時代に学校間での異動をした際にも、不慣れなことの多さなどからこうした「長い4月」を感じたこ

      • 「結論ありき」の文章

         給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が4月19日に開催され、  給特法の教職調整額を「少なくとも10%以上」とする  という方向で決着をすることが濃厚になった。  しかし、これは「教師の長時間労働の是正」を抜本的に図るための方策にはなり得ず、むしろ「定額働かせ放題」と揶揄される働き方を定着させることになってしまう可能性が高い。  この中教審の審議内容に対しては、批判的な報道も相次いでいる。  ・・・そもそも、今回の特別部会の

        • 未来の学校

           4月27日(土)・28日(日)の2日間、幕張メッセで「ニコニコ超会議2024」が開催された。  そのなかで注目されたイベントの一つが、角川ドワンゴ学園のN高等学校・S高等学校・N中等部による「磁石祭」である。  N高とS高は、通信制による正規の高等学校だ。両校の学習内容や学び方は共通で、パソコン・スマートフォン・タブレット・VRゴーグルなどを活用したオンラインによる学習が中心だが、スクーリングも行われている。  一方、義務教育段階に当たるN中等部は非正規の学校で、フリ

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        45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

          もう一つの「保護者対応」

           教職課程を履修した学生への調査の結果、教育実習中に「教員になりたくないと思うようになった」という者が4割を超えたことがわかった。  この調査は、名古屋大学大学院の研究チームが昨年11月にオンラインで行ったものである。  一方、教育実習中に「(教員の仕事への)やりがいを感じた」という回答も8割に上っており、魅力は感じつつも教員になることをためらうという学生の姿が浮き彫りになっている。  なお、回答した620人のうち、教員免許の取得をやめた者は149人だった。その理由で最

          もう一つの「保護者対応」

          「ニコニコ超会議」にはあって「大阪・関西万博」にはなさそうなもの

           昨日(4月27日)は、2日間にわたって幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議2024」の初日に参加をしてきた。  この「ニコニコ超会議」は、日本最大級の動画配信サービスである「ニコニコ(niconico)」のコンテンツを地上に再現するというコンセプトのもとに、ユーザーが主体となって開催するイベントだ。  また、その模様はインターネットでも配信されており、世界中のどこからでも参加をすることが可能となっている。  今回のテーマである、 「ひとりのこらず主人公。」  という

          「ニコニコ超会議」にはあって「大阪・関西万博」にはなさそうなもの

          「遊び」「学び」「仕事」の一体化?

           教職大学院の授業では、新入生に対して「研究の進め方」をレクチャーする際などに、この『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎著・光文社新書)がよく用いられている。  著者である前野ウルド浩太郎氏は、1980年に秋田県で生まれた昆虫学者である。前野氏は31歳のときにアフリカのモーリタニアへ渡り、農作物を食い荒らすサバクトビバッタの生態を約3年間にわたって研究した。  その成果が認められ、現在は国際農林水産業研究センターの主任研究員を務めている。なお、ミドルネームの「ウ

          「遊び」「学び」「仕事」の一体化?

          「主体的・対話的」な学びを支える環境

           東京学芸大学教職大学院の総合教育実践プログラムが運用している X(Twitter)に、4月24日付で次のような投稿があった。  ある2年目の学卒院生(学部を卒業後に進学してきた教員未経験の院生)が、1年次の学びを振り返って綴ったものである。  4回に分けて投稿された内容を繋ぎ合わせると、次のような文章になる。 (「グループで一人一人順番に考えを出し合うのが話し合いではなく」という部分は、先日の中教審・特別部会の審議を思い起こさせるが、今回はそれには触れないでおく。)

          「主体的・対話的」な学びを支える環境

          「会議は踊る。されど進まず」(後編)

           前々回と前回の記事では、給特法の維持に一貫して反対してきた立教大学・中原淳教授による X(Twitter)の投稿を紹介し、その指摘について補足をしてきた。  もちろん、この投稿は給特法の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)の内容を踏まえたものである。  かつて私が勤めていた教育委員会の事務局には、文部科学省との人事交流制度があった。同省からの出向者は、それぞれが高い能力と意欲をもつ方々ばかりで、一緒に仕事をしていて学ぶことが多かったものだ。  また、

          「会議は踊る。されど進まず」(後編)

          「会議は踊る。されど進まず」(中編) 

           給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が、4月19日に開催された。その審議の内容については、すでに多くのメディアが報道しているとおりである。  この会議の翌日、給特法の維持に一貫して反対してきた立教大学・中原淳教授は、X(Twitter)に次のような投稿をしている。  中原教授自身、中教審の「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」で委員を務めていた時期がある。この投稿の前半の4行は、そのときの体験を踏まえての感想だ

          「会議は踊る。されど進まず」(中編) 

          「会議は踊る。されど進まず」(前編)

           1814年~15年にかけて、オーストリアの首都で「ウィーン会議」が開催された。その目的は、フランス革命とナポレオンの対外進出によって混乱したヨーロッパ社会の秩序を再建することにあった。  だが、参加国の元首や大使たちは舞踏会への出席と水面下での駆け引きに明け暮れ、会議は一向に進まない。 「会議は踊る。されど進まず」  という言葉は、その様子に業を煮やしたフランスの代表タレーランが、皮肉を込めて放った言葉だといわれている。  給特法に基づく教職調整額の在り方などについて

          「会議は踊る。されど進まず」(前編)

          「◯◯大賞」の決め方

          「〇〇大賞」という言葉からパッと思い浮かぶのは、「日本レコード大賞」「全日本仮装大賞」「流行語大賞」などだろう。この3つに共通しているのは、いずれもその人気に陰りが見えることである。  一番目の「日本レコード大賞」は、かつては大晦日にテレビで放送されていた。子どものころは、 (誰が大賞に選ばれるのだろう?)  と、テレビの前で緊張しながら観ていたものだ。  けれども、歌手の所属事務所やレコード会社などの意向が選考に少なからぬ影響を与えているようだ、ということが素人目にも明ら

          「◯◯大賞」の決め方

          「おじいちゃんは、どうして?」

           今から30年ほど前に、こんな話を聞いたことがある。  給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)が、4月19日に開催された。  その結果、注目の「教員の処遇改善」については、  給特法の教職調整額を「少なくとも10%以上」とする  という方向で決着をすることが確実になった。  しかし、これは「教員の長時間労働の是正」を図るための方策にはなり得ない。むしろ、「定額働かせ放題」と揶揄される働き方を定着させることになってしまうだろう。

          「おじいちゃんは、どうして?」

          ここは「パラレルワールド」ですか?

           給特法に基づく教職調整額の在り方などについて審議している中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」が、4月19日に第12回の会議を開いた。  今回の会議では、これまでの検討内容を踏まえた「審議のまとめ」の素案が事務局から示され、その内容について各委員が意見を述べた。  その結果、注目の「教員の処遇改善」については、素案に示されたとおりに、  給特法の教職調整額を「少なくとも10%以上」とする  という方向で決着することが確実となった。  素案では、「教員の業務は自主

          ここは「パラレルワールド」ですか?

          【重要】本日(4/19)、中教審・特別部会が開催されます!

           これまで、給特法に基づく「教職調整額」の在り方などについて審議してきた中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」が、本日(4月19日)の16時から第12回の会議を開きます。  これまでのところ、同特別部会の委員の間では「『教職調整額』を維持する。ただし、その増額はする」という意見が大勢を占めています。  しかし、それでは絶対に「教員の長時間労働」は是正されません。この問題については、立教大学の中原淳教授がブログで論点を整理していますので、ぜひご覧ください。   同特

          【重要】本日(4/19)、中教審・特別部会が開催されます!

          【至急・重要】中教審・特別部会(4/19)の「Web傍聴」の申込みは、本日(4/18)の12時が〆切です!

           これまで、給特法に基づく「教職調整額」の在り方などについて審議してきた中央教育審議会の「質の高い教師の確保特別部会」が、明日(4月19日)の16時から第12回の会議を行います。  これまでのところ、同特別部会の委員の間では「『教職調整額』を維持する。ただし、その増額はする」という意見が大勢を占めています。  しかし、それでは絶対に「教員の長時間労働」は是正されません。  同特別部会の今回の議題は「教師を取り巻く環境整備について」です。  おそらく、これまで議論されて

          【至急・重要】中教審・特別部会(4/19)の「Web傍聴」の申込みは、本日(4/18)の12時が〆切です!