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★ラガー箚記(42)★リーグワンD1 各チームの戦いぶりの総括 4位−1位(2024)

レギュラーシーズンは埼玉が全勝で独走。強いけれども、受けて切り返す、という戦いから、自らが主導権をとって攻めていくスタイルになり、現状はどこも太刀打ちできていないという印象です。

ただ、TOP4は早い段階で決定しましたので、準決勝に向けて対策は十分できます。一発勝負は、また違った展開もありうるのでは!


4位 横浜キャノンイーグルス

昨年完成した感のある、立体的なアタックが、今年は前半から不発気味。埼玉に負けた後、同じカンファレンスでは4連勝しているものの、中身は寒かった。クレバーに相手の陣形の弱みをチームで突いてくる、憎いくらいに手数少なくトライを取ってきた昨年の攻撃は形を潜め、頼れるのはFWの力技、というところで、その辺りの力勝負で負けてしまった、神戸、東芝、クボタあたりには勝てず、サントリーにも勝ったけれども、これは、サントリーに隙あり、というところもありました。

中盤からは、デ・クラーク、クリエルも不在となり厳しかったわけですが、逆に、この二人の不在が、チームの結束を強め、さらに、荒井や天野などのSHを独り立ちさせ、田畑がCTBの穴を埋めたり、ウイングがさらに力をつけたり、小倉が躍動したり、チーム力が大いに上がったように見えます。

苦しい交流戦で、最後にサントリーに勝ったのが大きかったですね。そこから同カンファレンスに3連勝して、一気にベスト4を決めました。

ただ、神戸とは、もしもカンファレンスが逆だったら、違った結果になったんだろうな、、と感じます。そのぐらいギリギリのベスト4、というところでしょう。

準決勝は埼玉戦。普通にやっても勝てなさそうですから、沢木監督がどんな手を打ってくるか、それはそれで楽しみです。

ただ、来季に向けては、繰り返しですが、二人の主軸の不在によって、戦力は底上げされてきているので、大いに楽しみな状況でしょう。また、来季は、本格的に、田村→ゆらぎ、への禅譲があるでしょうから、そこも。

得点が6位。静岡と同じくらい。昨年に比べて少し物足りないですね。


3位 サントリーサンゴリアス

サム・ケインとコルビというビッグネームの補強があり、いきなり昨年の王者のクボタを初戦で圧倒した時は、今年はサントリーと埼玉のマッチレースになるのか、と思わせたものです。

それが、風向きがすぐに変わってしまったのが、2節の東芝戦でしょう。点差は7点ですが、トライ数は4−1でボーナスポイントを献上。東芝の接点の強さと、モウンガが指揮する東芝のハイスピードで、強いワイドへのアタック、そしてリーチ、佐々木、フリゼルらの強烈な突進に、全面降伏、という展開でした。東芝には、しばらく負けていませんでしたので、チームづくりにおいてここから迷いが出たように見えます。

以降は、勝ってはいますが、静岡や相模原、トヨタにはサヨナラ勝ち。よく言えば勝負強いというところですが、悪いくえばこの辺りと、チーム力としてはそんなに差がないという印象。特に、今年はセンター陣が少し役不足感が否めず、尾崎弟が頑張っていましたが、中野やケレビに比べると比較は辛いところ。また、コルビがいない後は、松島も前半は動きがもう一つで、バックスリーも尾崎兄が一人で奮闘という感じ。

高本がSOとして完全に独り立ちできたのは、日本としての収穫ではありますが、まだ、アタック面以外では物足りないところも多々。それを埋めるはずのサンチェスも、いるのだかいないのだか。
FWはホッキングスが柱となっていて、安定しており、バックローも献身的ですが、FWのランナーとなると、ここも少し物足りない。

このチームの柱は誰なのか。サントリーのダイナミックのアタックを生み出すのは誰なのか。僕は、そういう点で、斎藤は大いに今シーズン物足りなかったと思います。彼が引っ張らないといけない。彼が、サントリーも、日本代表も率いないといけない。そういう覚悟が見えないことに、とても不満を感じます。

来季はメンバーの入れ替えもありそうです。少しチームが過渡期に見えます。

得点が3位、失点も3位。得失点差では東芝とさして変わらないのに、勝ち点差が15点。


2位 東芝ブレイブルーパス

東芝の復権が、今年の1番のサプライズでしょう。モウンガとフリゼルという弩級の補強があったとはいえ、そういう類の補強は、結構あちこちであったので、それ自体はサプライズとまでは言えません。ここ数年は明らかに、埼玉ークボターサントリーあたりとは水を開けられていたチーム状態。いきなり2位にまで食い込んでくるとは思えませんでした。

主役は言うまでもなくモウンガでしょう。クルセイダーズで常勝チームのSO、オールブラックスのレギュラーSOは、ここまで役者が違うのだと言うことを、ほぼ全てのプレーで見せてくれました。キック、パスの精度に、ランの鋭さ、そしてゲームをしっかりコントロールできる目。そう、彼は、きちんとゲームをコントロールしているという感じを受けます。彼のタクトが、自信が、とにかく僅差の試合をものにし続けた原動力でしょう。

しかし、1番素晴らしいと思ったのは、なんといっても、ディフェンスです。東芝がトライをされる時、印象としてはいつもモウンガがいます。本当にいます。そして、彼が、最後の砦として、どれだけトライを防いできたか。その数は、彼が生み出したトライよりも多いような印象があります。
世界のエースが、これだけ走りこれだけタックルをする。これを見て、他のメンバーが燃えないわけがありません。

昨年は失点の多かったチームが、リーグ2位の失点の少なさまで来たのは、モウンガ効果と言っていいのでは。

そのほか、若いいきのいいプロップ陣、そのまま日本代表でいいロック陣に、佐々木、フリゼル、リーチという、リーグ最強と言ってもいいバックロー。ここに、ナイカブラ、タマニバルの爆弾2つに、松永がFBとして独り立ちし、桑山、森というもう1枚のウイングも一気にブレイク。SHでは杉山が完全に小川を追い出した感じ。

アタックも、とにかく、トライを取り切る力が強烈。手数をかけずに一気にトライまで行くシーンが多かった。

課題は、ベスト8以上のチームでは最も多い反則、規律のところでしょう。ここは相変わらずというところがあって、特に、相手のボール保持が続くと、どうしても我慢できずペナルティを犯してしまい、いいディフェンスをしてもマイボールにできないというシーンがとても多いです。ここを改善できれば、もう少し、埼玉に迫れるかもしれません。

ただ、全体として見れば、今年はできすぎ、というところがあります。圧倒して勝ったというわけではない試合も多く、僅差で凌いだものが多いです。本当に良くなるのは来年以降では。モウンガが長くいるというのがなんと言っても大きいでしょう。

反則の多さが目立ちます。得点自体は、4位タイで、圧倒的な攻撃力というわけではないのですが、印象としては、強烈な攻撃力だな、、という感があります。


1位 埼玉パナソニックワイドナイツ

得点は2位の神戸に100点差、失点は2位の東芝に98点差。得失点差は実に472点で、2位の神戸の188点とは段違い。全ての面でレギュラーシーズンを圧倒しました。大きな何かがなければ、しっかりプレーオフも勝ち切るでしょう。

今季の特徴は、今までは「相手の攻撃を受け止めて、切り返す」というような戦い、ディフェンスからのチームという印象で、失点は少ないけれど、そこまでトライをする印象ではなかったのですが、今年は、自分たちで主導権を持って、ボールを保持して、立体的な攻撃を駆使して相手を崩してトライをとり切る。試合をしっかりと支配する、その中で着実に加点していく、相手からすれば、どうにもなりません・・という試合が多かったです。

明らかに、去年までのチームから、一段レベルが上がった、という印象です。それに対して、追随すべきサントリーやクボタが少し停滞したということもあり、東芝という予想外の抵抗にあいながらも、しっかりと全勝で駆け抜けました。

自分たちがやろうとすることへの意思統一と理解、それを遂行するためのトレーニング、そして、ゲームの中での局面局面での強さ(そう、埼玉は、とにかく接点で強い!)、キックゲームも強い、FWの突破も、BKの突破も、オフロードも、キックでのアタックも、どれをとっても充実しています。

もしも隙があるとすれば、それは、「完全なガチンコの力勝負」となって、スクラムでガンガンやられるとか、接点周りでゴリゴリガツガツやられると、苦労をするかな、と。東芝との試合で、東芝が14人になってから、なりふり構わずFW周りで突っ込む、持ち出す、突っ込むを繰り返して行った時、あっさりと5分で2トライを献上したシーンなどが印象的です。ただ、それを、たとえ東芝といえども80分はできないですからね。。なかなか、現状のリーグワンのチームでは難しいのかな。。あとは、天候ですね。雨で、足元も悪い、ハンドリングも死ぬ、そんな展開でのタックルとモール勝負、みたいになると、埼玉の優位性はだいぶ消えるかな、とも。

ただ、来年は、堀江に、内田というこれまで核となってきたメンバーが二人抜けます。若手も、素晴らしいメンバーがたくさんいますが、やはり来季は少し変化の年になるのではないか、今年が、埼玉としての1つの完成形なのかなと思って見ています。

得失点が+472ということは、16試合ですから、1試合当たり平均して30点近く引き離していることになります。圧倒した、というに相応しい数字でしょう。



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