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煉瓦・タイル・土偶 … みんな土から出来ている | 弘前街歩き

弥生時代の田んぼ跡を体感した後は、
再び「田んぼアート」駅からワンマン電車に揺られ弘前へと向かいます。


弘前駅前のホテルで一泊し、
翌朝は縄文時代の『イノシシ』に会うために、3㎞ほど離れた弘前市博物館へと歩き始めます。


歩き始めてすぐ、
ドーンと大きな石のオブジェが目に入ります。
何だか随分無骨で重そうな石の屋根、なにかしら?

題名は 白神「津軽の箱」
― 白神山地には「津軽の箱」と呼ばれ、そこに逃げ込んだ動物たちをそれ以上追わないという聖域があるという。―
傍らの石碑より

この街からもほど近い白神山地は、世界最大級の原生的なブナ林が分布する世界遺産。

多種多様な動植物が生息・自生する貴重な生態系を保ち、それは約9000万年前の花崗岩が基盤となって支えています。


総重量は25トン!


大きな白い花崗岩が白神山地、黒い円盤石が動物たちの聖域を表しているよう。箱の中に入ると、逃げのびた動物の気持ちが少しわかるようにも思えます。

花崗岩が支える台地で、
人と動物が折り合いを付けながら暮らしていく教え…自然と一緒に守りたい先人からのメッセージですね。



さて街歩きの続き。
あっちこっちへと寄り道をしながら、洋館が点在する地域へとやってきました。弘前は明治や大正期の洋館が多い街、旧市立図書館に銀行、陸軍施設などいくつかを見て回りますが、とても全てを見るのは無理…ということで、

洋館や近代建築が、それぞれ実物の10分の1のサイズで再現してある広場へ。ミニュチュアながらかなりリアリティ!


追手門広場・東奥義塾外人教師館付近



そこから10分ほど歩いて、目的地である弘前市立博物館へ到着です。
怪しくなってきた空の元、威風堂々と構えるのは日本のモダニズム建築の巨匠・前川國男の建築。
弘前市内には公共施設や企業、高校など8棟の前川建築が現存しています。



弘前市立博物館で
期間限定で公開中なのが『猪形土製品』

縄文時代後期(今から約4000年前)の遺跡である十腰内2遺跡から出土した
体長18.0㎝、高さ9.7㎝、厚さ4.8㎝のイノシシ。

北海道から関東地方にかけて出土する『猪形土製品』は、その殆どが体長4~5㎝でデフォルメされたもの。
それらと比べると極めて大型で写実的かつ精巧。その完成度は現在の工芸品と比べても遜色ないのでは、と思えるほどです。


弘前市博物館


実はお尻の穴まで表現されていて、この後ろ姿に思わずキュン!

縄文時代の主要な食料の一つであったイノシシ、一方で多産であることから命を繋ぐシンボルとされていた…縄文人の精神文化の一端を良く示す土製品であるようです。


博物館のマスコットキャラクターにもなっています。
愛称は「いのっち」


「いのっち」の隣には珍しい弥生時代の土偶が!



弘前の縄文時代に弥生時代…それぞれの歩みを学んだ後は、博物館の隣の市民会館へ。


この市民会館も前川建築。
コンクリートのはつり仕上げやスクラッチタイルが特徴的、そして構造、素材、光、外から取り込む景色…とそのすべてが計算されていて、シャープでありながらもどこか包みこまれるような空間を生み出しています。



中二階のカフェの待ち時間はこのスペースで。
建物と一緒にデザインされたチェアもお馴染みの前川デザイン。
座り心地の良さと場所ごとに感じる心地良い部屋の景色に、あちらこちらと座ってみたりして。



カフェのテーブルには、
背の高いガラスの燭台?に乗った素敵な〝リンゴのペッパーミル〟が。
さすが弘前、名産のリンゴ形の雑貨を多く見かけます。
つい、ぐるぐるするのが楽しくて、ランチの蟹リゾットがスパーシーになりすぎてしまいました。




前川建築でのランチで心もお腹も満たされて、
次に向かうのは、昨年の今頃も訪れた「弘前れんが倉庫美術館」

昨日乗車した弘南鉄道、
今日は電車には乗らずにホームの後方半分の「自由通路」を通ります。
ここは「美術館」への近道として開放されています。




ホームをどんどん歩き先端の階段を上がると、
そこは原っぱ!
原っぱを抜けて美術館へ…
このシチュエーション、なんだか映画みたい!



原っぱの先にあるのが
『弘前れんが倉庫美術館』。
美術等とカフェの2棟で構成され、その周辺を芝生の広場が囲む開放的な美術館は、リンゴを原料とするシードルを日本で初めて大量生産した煉瓦倉庫を改修したものです。



美術館は、約築100年の煉瓦の建物の耐震性能を高めつつも、できるだけ元の素材を活用しその姿をとどめることをコンセプトに改修され、過去・現在・未来をつなぐ美術館として2020年に生まれ変わりました。




高い天井を活かして、国内外の先進的なアートを紹介するとともに、弘前や東北地域の歴史、文化と向き合う作品も展示し、地域の人々が集い創造するコミュニティの場としても活用しています。

今回も、弘前の自然から生み出されたインスタレーションが繰り広げられていました。




館内にはゆったりとしたライブラリーがあり、展覧会資料、美術関連や郷土にまつわる図書が多数所蔵されていて、観覧後の余韻を楽しめます。



ふと傍らの窓から隣のカフェを見下ろすと、
そこには弘前出身のアーティスト奈良美智の〝犬〟のぬいぐるみの姿。




〝犬のぬいぐるみ〟に誘われて、カフェを訪れます。
こちらも煉瓦作りで天井が高く広々した空間、運よく彼の隣の席に失礼させていただくことに。

窓越しには、奈良美智氏から弘前市へ寄贈された真っ白な犬のオブジェ「A to Z Memorial Dog」の後ろ姿が。



弘前はりんごの街でありアップルパイの街。
アップルパイガイドマップには市内で提供されるアップルパイが41種類掲載。マップ片手に食べ歩きをしている人の姿も見られます。

ここでいただくのは、カスタード入りの熱々のアップルパイ。
カリカリの生地と甘酸っぱいリンゴとカスタードはとっても美味!




朝から歩きに歩いた〝弘前の街歩き〟は
アップルパイをいただいて終了です。

今日一日、時代を感じる茶褐色のタイルや煉瓦をたくさん目にしたなぁ、と振り返ります。

〝土から生まれた〟煉瓦やタイルは、どこか暖く安らぎを感じさせてくれます。それには何千年も前の縄文土器や土偶に始まり、私たちの身近にはいつも〝土から生まれた〟陶器や磁器などがあったからかもしれません。

煉瓦やタイルのどれもが街にしっくりと溶け込み、ずっと大切にしていきいと思える街並みの一部となっています。

何度も訪れたくなる街…弘前です。



「A to Z Memorial Dog」



最後までお読みくださり有難うございました☆彡

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