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縄文の「鬼くるみ」、もう一つの顔

縄文人の食料であった「鬼くるみ」。
脂質やタンパク質が豊富で、当時の健康的な食生活を支えていた1つに数えられるようです。

この日本古来の鬼くるみは現在も山に自生し、また栽培により様々な商品となって販売されています。が、その数は少なく、私たちが口にしている殆どは輸入品であるようです。

それには、こんな理由が。
「とにかく硬い」
通販サイトで「殻付き鬼くるみ」を購入しようとしたら「一般のクルミ割り器では割れません」と注意書きあり。
「身が少ない」
殻の中身の可食部分がとても少ないとされています。

これでは栄養満点とはいえ、手軽に食べるのは難しそうですね。

「凹み石」は、縄文時代に硬い殻を割る道具であったようです。石に叩きつけて割っていく。
凹みにピタリとはまった鬼クルミ…よく使い込まれた縄文の調理道具のようです。

共に神奈川県立歴史博物館

鬼くるみは実を食用する他、幹は木材として使われていたと推定されています。

また葉や樹皮、根などにある「ユグロン」という有毒な成分は、触れると皮膚がかぶれたり、他の植生物に悪い影響を与えることでも知られています。

昔、北海道や東北地方では、この毒素を利用した「毒もみ」「毒流し」と呼ばれる漁が行われていました。鬼クルミの葉や根、実などを砕いて川に浸け、魚が一時的に麻痺して浮いてきたところを捕りました。
*この漁法は現在、水源資源保護法(第6条)により制限されています。

川口市立郷土資料館
「縄文のナニコレコレミテ」展より抜粋

さらに葉や樹皮にはタンニンを含み、駆虫剤や皮のなめしに使うことができます。

そして、縄文時代には大きな「くるみ形土器」や、くるみそっくりの「くるみ形土製品」が作られました。
土器とは言えども、とても煮炊きに使ったとは思えませんね。
土製品と共に祭祀で使われたと考えられています。

左:神奈川県田名向原遺跡 右:東京都木曽中学遺跡
下:神奈川県勝坂遺跡 / 山梨県立考古博物館企画展

貴重な食料であり、一方で毒をも持っている。
そして、祭祀の道具が作られる…

この条件に当てはまるものが、他にも!

それは「きのこ」。
各地で「きのこ」そっくりの「キノコ形土製品」が出土し、祭祀の道具として作られたと考えられています。一方で、「毒きのこ」の見本であったという説もあります。

青森県三内丸山遺跡

自然の恵み、毒の脅威。
数ある食料の中で「鬼くるみ」と「きのこ」がもつ共通点。

美味しいものには、毒がある…
相反する特徴に縄文人は畏れを感じ、神への捧げものにしたのでしょうか。

「鬼くるみ」のその硬い殻に秘められたものとは、いったい…?

最後までお読みくださり有難うございました。


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