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『チェルノブイリ』で兵士が犬を殺した理由

放射線汚染を広げないためでしょ、と言われればそのとおりなんですけど。
気になるのは、なんで第4話であのエピソードを入れてきたのかということ。

『チェルノブイリ』#4「掃討作戦」では、バリー・コーガン演じる新米兵士が隔離地域で野犬を殺す任務を与えられるサイドストーリーが突如として挿入されますが、この話はレガソフらが事態収拾に奔走している本筋と直接絡むことはありません。

なぜこのタイミングなのか。

もちろん構成上の都合として、メルトダウン回避のための事後処理が終わってようやく別の挿話を混ぜ込む余地ができたということはあるのでしょうが、第4話はソ連政府がRBMK炉の構造的な欠陥を意図的に隠蔽していたことが発覚する回でもあります。

チェルノブイリの大惨事は、人間の嘘の代償によるものでした。

なんの罪もない動物を殺すというのは、人間のエゴが招いた事態をわかりやすく示した象徴的な行為ですよね。

このシーンで出てくる犬たちは警戒したり襲いかかってきたりということをまるでしません。無抵抗のまま、当然その理由も知らず兵士たちに射殺されます。

これは第1話で放射線の危険性をなにも知らず、橋の上で発電所の火事を眺めていた野次馬の姿と重なるように感じます。
あの橋にいた人間はのちに全員が死亡したということが語られますが、彼らもまた、あの犬たちと同じようになにもわからないまま死んでいったわけです。

もののけ姫なんかでもそうでしたが、純粋な生き物を殺すという行いは、宗教的にも特別な意味を持つ行いです。
その辺の知識はないのであまり掘り下げませんが、『聖なる鹿殺し』で主人公に代償を求める超自然的な存在だったバリー・コーガンがこのエピソードでキャスティングされているのは非常に示唆的な感じがしますね。

でもその一方で、同じエピソード内では作業員たちが自らの命を賭して建屋の黒鉛を除去しようと奮闘する姿を描いているのも人間のエゴとの対比になっていてニクいなあと思う。

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