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パーティーへようこそ!!

今日はアニメの女の子の可愛いコスプレ画像がなぜかいっぱい流れてくる日ですね。

こんな日にやることと言ったらひとつしかない。

というわけで久々に『ダイ・ハード』見てました。
魔女の旅々終わっちゃったので。

一番好きな映画はダイ・ハードと何度も言ってきたけど、見れば見れるほど凄い映画だなあと思う。

アクションやキャラが良いのは言うまでもないんだけど、もっと凄いのがミステリ映画ばりに緻密に張り巡らされた伏線の数々。

ふつうここまで細かくやるとやたら説明臭くなったり退屈になったりしがちなところを、ごく自然な形でストーリーに組み込んでるのがすごい。

「飛行機は苦手ですか? なら良い方法がありますよ」
「俺は刑事だ。もう11年やってる」

最初の会話からもう後の展開の布石になっている。
最初の10分だけで10個近くバラまかれてます。

たとえばホリーが会社で旧姓のジェネロを使っているという設定。

この『ダイ・ハード』という映画ではジョンとテロリストの対決と並行してジョンとホリーの夫婦関係の修復を描く構成になっているのですが、この「苗字」という要素がストーリー上の重要な鍵となっています。

冒頭、ナカトミプラザビルを訪れたジョンが受付の名簿でホリーの名前を探すも、マクレーンでなくジェネロで登録されていることに気づきます。
(ここでデジタル名簿を登場させることでしれっとハイテクビルという設定もアピールしている)

ジョンはキャリアのためにLAへ渡ったホリーに対してわだかまりを抱えており、マクレーン姓を使っていないホリーを責めます。失敗して自分のところへ逃げ帰ってくるに違いないと思っていたのに、出世して自分とはまるで違う世界に行ってしまったように感じているようです。

ここでホリーは「日本の企業では既婚者は不利だから」という説明をしますが、舞台をわざわざ日系企業という設定にしてくるのがちょっとユニーク。当時のアメリカ人が持つ日本のイメージも見えてきて面白い。

「日本にもクリスマスがあるとは知らなかった」
「融通が効くんです。真珠湾がダメならテープデッキで大勝利」

この旧姓問題をジョンとホリーの確執の原因として使いつつ、一方では夫婦としての関係性をテロリストのリーダー・ハンスにギリギリまで勘付かせないための設定として機能させています。
「ホリーがマクレーン姓を名乗らない」というひとつのファクターが、ジョン&ホリーの関係性においては軋轢を生むネガティブ要素、ジョン&テロリストの関係性においては弱みを隠す有利な要素として、両義性を持った役割を担っているわけです。

そして終盤、我らがリチャード・ソーンバーグ記者のじつに余計な行動によってジョンとホリーの夫婦関係が露呈し、物語は一気にクライマックスへなだれ込みます。
余談だけど『3』以降の作品にダイハード感の薄い理由のひとつはソーンバーグの不在だと思うんですよね。

ホリーを人質に取ったハンスは、単身乗り込んできたジョンを迎え撃ちます。

「今回ばかりはグレース・ケリーの手を取って夕陽に消えるジョン・ウェインのようには行かなかったな」
「あれはゲイリー・クーパーだ、アホ!」

ダイ・ハードの劇中ではしばしば西部劇が引き合いに出されますが、このシーンではゲイリー・クーパーとグレース・ケリー主演の『真昼の決闘』を引用しています。
主人公の保安官が街の人々からの協力をいっさい得られずたった一人で無法者の集団に立ち向かうという、まさしくダイ・ハードの雛形のような映画です。
ヨーロッパ系のハンスはアメリカの西部劇を中途半端にしか理解できていないというギャップを示すシーンでもあります。

ジョンは不意をついて隠していた拳銃でハンスを撃ち、ホリーを救います。
ハンスとエディがわけも分からずジョンにつられて笑っているなか、ホリーだけがジョンの狙いにいち早く勘付いてとっさに身をかわす瞬間は、夫婦の阿吽の呼吸を感じられて非常に良い。

クライマックス、ビルから転落したハンスがホリーの腕にしがみつく有名なシーン。
ハンスは死の間際にホリーを撃って一矢報いようとしますが、直前でロレックスの腕時計が外れて真っ逆さま。

「人質じゃないといいが……」

ロビンソン警視の他人事みたいなリアクション好き。FBIのヘリが吹っ飛んだ時も「FBIはまだ補充があるんだよな?」とか言ってるし。

このロレックスの腕時計はもちろん序盤に登場した会社からホリーへの記念品。
そのオフィスのシーンで、エリスは執拗に「夫に時計を見せてやれ」とけしかけていました。
エリスはホリーに気があるので、ジョンの知らないホリーの一面を示すことで、こちら(会社側)の身内であると暗に示したかったのでしょう。

ロレックスは、ホリーの(妻ではなく)キャリアウーマンとしての存在意義を象徴するものであり、さらに言えばジョンとホリーの間に生じたわだかまりそのものを示す存在でもあります。
ジョンは会社でのやり取りでホリーが会社に必要とされている人材であることをはっきり理解してしまい、しかしそれを認めることができずに攻撃したことで不和を生んでしまいました。

中盤のアル・パウエル巡査部長の会話で、ジョンは初めて「ホリーを応援してやるべきだった」と後悔の念を示します。

「『愛してる』は何回も言ったが謝ったことは一度もない」

そしてアルに懇願します。

「こう伝えてくれ。『すまなかった』と」

この『ダイ・ハード』がそこらのアクション映画のロマンス要素と一味違って面白いなあと感じるのが、ここのセリフ。
ジョンとホリーはもう熟年の夫婦なので、ボーイ・ミーツ・ガールの青春劇みたいにI love youで解決する過程はとうの昔に通り過ぎています。
ジョンにとって必要なのは単に愛情を示すことではなく、ホリーに対して理解と歩み寄りを示すことでした。
この瞬間に、「ハンスを倒す」という第一のストーリーラインとは別に、「ホリーに歩み寄る」という第二の軸が生まれたのです。

ジョンがホリーを救うため必死にこのロレックスを外そうとするシーンは、ハンスとの対決のクライマックスであるのと同時に、ジョンの歩み寄りを示す夫婦関係のクライマックスでもあります。
そして腕時計が外れた瞬間、ジョンとホリーのわだかまりは解かれ、ハンスは敗れました。

ラスト、無事にビルから生還したジョンがアル・パウエルと再会を果たす場面。ここの無言で通じ合ってる感じがすごく良い。
そしてアルに「妻のホリー・ジェネロだ」と紹介するジョンに対し、「マクレーンよ」と訂正するホリー。
このたったふたつの短いセリフだけで、ジョンとホリーがお互いに歩み寄りを見せていることがはっきりわかるのが見事。
夫婦関係を巡るストーリーラインもようやく大団円を迎えます。

「苗字」というたったひとつの要素を使って二本のストーリーラインを牽引し、ラストに両者を結びつける構成力は本当に凄いとしか言いようがない。

そこにきて最後にカールの復活とアルの銃撃シーンを最後に入れることで、ストーリー上の山場とアルのトラウマ脱却まで描いて見せるのはもはや出来過ぎで感動する。

これでもしラストに"Let it snow"でも流れようものならもうスタンディングオベーションするしかなくなってしまうけど実際流れるのでスタンディングオベーションするしかない。

これでなんで離婚しちゃうんだよ。

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