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美しい橋に興味があります。その歴史にも!

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美しい橋に興味があります。その歴史にも!

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2.橋の起源について

 橋とは、「交通路・水路などが、河谷・くぼ地その他、これら道路の機能を阻害するものに突き当たった場合に、これを乗り越える目的をもって造られる各種の構造物」と、土…

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3か月前
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18.屋根だけでなく壁も付けたー廊下橋

 日本で多用された木造橋の大きな課題は、その耐久性の向上であった。そのため、雨水の侵入を防ぐ「屋根付き橋」が架けられた。この屋根付き橋の発想は、部屋と部屋とを…

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1時間前

17.雨水を防ぐ屋根付き橋ー愛媛の田丸橋ー

木造橋の耐久性対策について  過って、日本で多用された木造橋の大きな課題は、その耐久性の向上であった。現存する国内の木造橋の維持・管理に関して、土木学会木材工…

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8日前
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16.人は何からでも学べるー京都木津川の流れ橋ー

学びの本質は観察にある  知識を得ることは大切なことである。知識を得るために、人は何からでも学ぶことが出来る。先人から学ぶことは当たり前であるが、堺屋太一の「…

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2週間前
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15.完成された木造りの美しさー伊勢神宮の宇治橋ー

伊勢神宮で和橋を観る  飛び石に始まり、丸太橋のような単純桁橋が連続桁橋へと長大化する過程では、創造的思考に基づく多くの発明・発見と試行錯誤が繰り返されてきた…

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3週間前
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13.コンクリート製アーチ橋への道ー京都七条大橋ー

鉄筋コンクリ―トの発明と橋への適用  ローマ時代の技術者が石灰岩を砕き焼いて創ったセメントに砂と水を混ぜてモルタルとし、このモルタルにポッゾラーナ(ナポリ近郊…

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1か月前
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14.ハイブリッド化による創造的思考ー福井の九十九橋ー

既成概念の組合せ、ハイブリッド化  京都の鴨川に架かる三条大橋は、1590年(天正18年)に豊臣秀吉が増田長盛に命じて行った改修工事により、従来の木造橋について橋脚…

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1か月前
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12.常識の非常識についてー京都の水路閣ー

常識と非常識について  常識(Common sense)とは「誰でも知っているありふれたこと」の意味で、広辞苑によれば「良識、社会通念、一般知識」と解釈されている。この常…

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1か月前
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11.学ぶことの大切さー中国の盧溝橋ー

知識を得ることの大切さ  吉田兼好による随筆「徒然草」の一節(第52段)に、次のような話が出てくる。  ある時、仁和寺(注1)の老僧がひとりで男山八幡宮(注2)に…

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1か月前
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10.古代メソポタミアでのアーチ橋発明ートゥールーズのボンヌフ橋ー

メソポタミア文明の誕生  人類の歴史上にはエポックメイキングな出来事がある。その多くは、気候変動によって引き起こされた。  長かった氷河期が終わると紀元前6000年…

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1か月前
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9.イノベーションを起こすにはー沖縄の天女橋ー

天草市の町山口川に架かる祇園橋  石造りの桁橋は、橋脚数を増やすことで広い川幅にも対応できる。技術の水平展開である。  熊本県天草市船之尾町の町山口川に架かる…

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2か月前
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8.水平思考で創造的思考力を伸ばすー三条大橋ー

飛び石から桁橋への垂直展開  創造的思考力を伸ばすために、橋を対象にして水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみた。  水平展開では、古くからある「飛…

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2か月前
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7.垂直思考で創造的思考力を伸ばす一京都の行者橋ー

垂直思考で飛び石から桁橋へ  創造的思考力を伸ばすために、水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみる。  水平展開とは、対象とする技術や知識などを他の…

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2か月前
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6.創造的思考力を伸ばすためにー鴨川の飛び石ー

飛び石とは?  万葉集第七巻1283に、柿本人麻呂による歌が収められている。   はしたての倉橋川の石の橋はも          男盛りに 我が渡りてし石の橋はも …

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5.想像をたくましくして思考力を高めるーつるのはしー

 JR西日本大阪環状線の鶴橋駅で下車し、東口(近鉄線)改札を出て、通称コリアンタウンを南北に貫く「鶴橋本通商店街」を南に向かうと、徒歩約15分で「つるのはし跡公園」…

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3か月前
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4.創造的思考法に磨きをかけるには

 創造的思考を実現するには、右脳が持つ直感や無意識の感性を用いて新しいアイデアを導き出すこと、左脳が持つ客観的事実に基づいて合理的に事象を組み立てる論理的思考と…

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3か月前
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2.橋の起源について

2.橋の起源について

 橋とは、「交通路・水路などが、河谷・くぼ地その他、これら道路の機能を阻害するものに突き当たった場合に、これを乗り越える目的をもって造られる各種の構造物」と、土木学会編纂『土木用語辞典』に定義されている。
 古(いにしえ)の時代に、水に濡れずに河川、湖沼などを渡るという問題を解決するために、人類が考え出したアイデアである。

 橋の起源に関しては、川を渡るために飛び石を利用したり、川をまたいだ風倒

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18.屋根だけでなく壁も付けたー廊下橋

18.屋根だけでなく壁も付けたー廊下橋


 日本で多用された木造橋の大きな課題は、その耐久性の向上であった。そのため、雨水の侵入を防ぐ「屋根付き橋」が架けられた。この屋根付き橋の発想は、部屋と部屋とをつなぐ「渡り廊下」につながる。
 一方、目的は異なるが、屋根だけでなく塀や壁まで設けた廊下橋の存在も古くから知られている。 

寄藻川に架かる宇佐神宮の呉橋

 大分県宇佐市の「宇佐神宮」は、全国に4万社あまりある八幡社の総本宮で、応神天皇

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17.雨水を防ぐ屋根付き橋ー愛媛の田丸橋ー

17.雨水を防ぐ屋根付き橋ー愛媛の田丸橋ー


木造橋の耐久性対策について

 過って、日本で多用された木造橋の大きな課題は、その耐久性の向上であった。現存する国内の木造橋の維持・管理に関して、土木学会木材工学特別委員会による調査結果(2011年11月)が報告されている。
 報告書には、木造橋の耐久性能に関する1~7の項目が記されており、優れた耐久性を実現する筆頭に「屋根付き橋」があげられている。

屋根付き橋と上路橋の健全性は、他の構造形式

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16.人は何からでも学べるー京都木津川の流れ橋ー

16.人は何からでも学べるー京都木津川の流れ橋ー


学びの本質は観察にある

 知識を得ることは大切なことである。知識を得るために、人は何からでも学ぶことが出来る。先人から学ぶことは当たり前であるが、堺屋太一の「歴史から学ぶ」、畑村洋太郎の「失敗から学ぶ」、安岡正篤の「論語に学ぶ」など、学びは人からとは限らない。

 佐道健の「木を学ぶ 木に学ぶ」を読んで木の素晴らしさを実感することができる。重田康成の「アンモナイト学 絶滅生物の知・形・美/国立

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15.完成された木造りの美しさー伊勢神宮の宇治橋ー

15.完成された木造りの美しさー伊勢神宮の宇治橋ー


伊勢神宮で和橋を観る

 飛び石に始まり、丸太橋のような単純桁橋が連続桁橋へと長大化する過程では、創造的思考に基づく多くの発明・発見と試行錯誤が繰り返されてきた。
 これまでは石橋を中心にして、石造りアーチ橋にいたる「橋のイノベーション」を垣間見てきた。

 一方、メソポタミアや中国沿岸地域とは異なり、国内では森林資源が豊富なため、石橋とは異なる木造橋が、独自の発展を遂げた。
 すなわち、橋を架

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13.コンクリート製アーチ橋への道ー京都七条大橋ー

13.コンクリート製アーチ橋への道ー京都七条大橋ー


鉄筋コンクリ―トの発明と橋への適用

 ローマ時代の技術者が石灰岩を砕き焼いて創ったセメントに砂と水を混ぜてモルタルとし、このモルタルにポッゾラーナ(ナポリ近郊のポッツォリに産する良質の火山灰)を加えると硬度と水密性が良くなることを発見した。

 ローマでは、それに砂利を混ぜたものをオプス・カエメンティキウム(Opus caementicium)と呼び、道路・水路・浴場の建設に利用した。現在のコ

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14.ハイブリッド化による創造的思考ー福井の九十九橋ー

14.ハイブリッド化による創造的思考ー福井の九十九橋ー


既成概念の組合せ、ハイブリッド化

 京都の鴨川に架かる三条大橋は、1590年(天正18年)に豊臣秀吉が増田長盛に命じて行った改修工事により、従来の木造橋について橋脚のみを石柱とする水平展開により生み出された。
 「腐食に強い石材」と「曲げ力に強い木材」を組み合わせることで、当時としては最強の耐久性を有する桁橋を実現したのである。

 既成概念の組合せではあるが、社会には大きなインパクトをもたら

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12.常識の非常識についてー京都の水路閣ー

12.常識の非常識についてー京都の水路閣ー


常識と非常識について

 常識(Common sense)とは「誰でも知っているありふれたこと」の意味で、広辞苑によれば「良識、社会通念、一般知識」と解釈されている。この常識は人が社会において生きるための重要な知識であるが、個々人によって必ずしも一致してはいない。

 往々にして、『自分にとっての常識は他人にとっての非常識』でもある。この常識は様々な主体(世界、国、地域社会、企業、学校、家庭など

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11.学ぶことの大切さー中国の盧溝橋ー

11.学ぶことの大切さー中国の盧溝橋ー


知識を得ることの大切さ

 吉田兼好による随筆「徒然草」の一節(第52段)に、次のような話が出てくる。

 ある時、仁和寺(注1)の老僧がひとりで男山八幡宮(注2)に参詣した。ところが老僧は山麓の極楽寺、高良の末社に参拝したのみで、山上にある本殿は拝まずに帰ってきた。そして、次のように言ったそうだ。
 「お参りの人々がみんな山に登って行く、山登りに来た訳でもないのに・・・・」、あらまほしきは・・

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10.古代メソポタミアでのアーチ橋発明ートゥールーズのボンヌフ橋ー

10.古代メソポタミアでのアーチ橋発明ートゥールーズのボンヌフ橋ー

メソポタミア文明の誕生

 人類の歴史上にはエポックメイキングな出来事がある。その多くは、気候変動によって引き起こされた。
 長かった氷河期が終わると紀元前6000年頃からヒプシサーマルと呼ばれる気候温暖化が始まり、大型動物の生息地であるステップ(草原)が森林に覆われることで、食糧危機が引き起こされた。

 これに対して、人類は農耕と牧畜による生活方式を発見して対応する。しかし、紀元前3000年頃

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9.イノベーションを起こすにはー沖縄の天女橋ー

9.イノベーションを起こすにはー沖縄の天女橋ー


天草市の町山口川に架かる祇園橋

 石造りの桁橋は、橋脚数を増やすことで広い川幅にも対応できる。技術の水平展開である。

 熊本県天草市船之尾町の町山口川に架かる祗園橋は、橋長:28.6m、全幅:3.3mで、約30cmの角柱の橋脚が5本並立の9列、合計45本が立てられている。川上側の橋脚は水切りのために三角に尖っている。

 祗園橋は、1832年(天保3年)に庄屋の大谷健之助が発起して、庶民の協

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8.水平思考で創造的思考力を伸ばすー三条大橋ー

8.水平思考で創造的思考力を伸ばすー三条大橋ー


飛び石から桁橋への垂直展開

 創造的思考力を伸ばすために、橋を対象にして水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみた。
 水平展開では、古くからある「飛び石」に川床を安定化するという新たな役割を見出して、現在でも数多く使われている。

 一方、垂直展開では、より多くの人が安全に川を渡るために、「飛び石」を基台とし、板状の石や丸太を上に置いてつなぐ橋が考え出された。
 飛び石は、橋脚の原

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7.垂直思考で創造的思考力を伸ばす一京都の行者橋ー

7.垂直思考で創造的思考力を伸ばす一京都の行者橋ー

垂直思考で飛び石から桁橋へ

 創造的思考力を伸ばすために、水平思考(展開)と垂直思考(展開)について考えてみる。
 水平展開とは、対象とする技術や知識などを他の分野や領域に適用することである。一方、垂直展開とは、対象とする技術や知識などを深めてさらに進化させることである。

 実際、水平展開として、古くからある「飛び石」に川床を安定化するという新たな効果が見出された例があげられる。

 一方、垂

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6.創造的思考力を伸ばすためにー鴨川の飛び石ー

6.創造的思考力を伸ばすためにー鴨川の飛び石ー


飛び石とは?

 万葉集第七巻1283に、柿本人麻呂による歌が収められている。
  はしたての倉橋川の石の橋はも
         男盛りに 我が渡りてし石の橋はも
 歌の意味は、「倉橋川の石の橋はどうなったでしょう。私が若いときに、渡るように置いておいた、あの石の橋はどうなったでしょう。」である。
 人麻呂が懐かしんだ「石の橋」は、恋しい人を訪ねて対岸へ渡るために置いた「飛び石」のことで

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5.想像をたくましくして思考力を高めるーつるのはしー

5.想像をたくましくして思考力を高めるーつるのはしー

 JR西日本大阪環状線の鶴橋駅で下車し、東口(近鉄線)改札を出て、通称コリアンタウンを南北に貫く「鶴橋本通商店街」を南に向かうと、徒歩約15分で「つるのはし跡公園」に到着する。

 「つるのはし」は、日本最古の橋として名高い「猪甘津の橋」の古跡とされている。「つるのはし」の由来は碑文に詳しい。
 西暦324年に仁徳天皇が、大阪の百済川(後の平野川)を渡るために猪甘津(江戸時代の猪飼野村、現在の桃谷

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4.創造的思考法に磨きをかけるには

4.創造的思考法に磨きをかけるには

 創造的思考を実現するには、右脳が持つ直感や無意識の感性を用いて新しいアイデアを導き出すこと、左脳が持つ客観的事実に基づいて合理的に事象を組み立てる論理的思考とを、バランスよく繰返すことが必要である。

 言葉で示すことは簡単でも、これを実現することは難しい。どのようにアイデアを導き出し、どのように事象を組み立てるのか、具体的な方法が常人(凡人かも)には見えてこない。しかし、何ごとにも原理・原則が

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