ある人間に興味を持った侵略者4

 男の居るマンションの前に私は立った。チャイムを鳴らす。
「はーい……ひっ……なんで……」
 男は私の予想した反応とは反対にとても怯えていた。私は不思議そうに首をかしげた。
「夜山さんが、なんで、ここに……」
 私の姿は男が好いていた女の夜山であった。
「湯沢くん、こんにちは元気にしてた?」
 私は男が好いていた夜山の声と姿で男に問いかけた。夜山という女は身長が155センチほどであり、髪の毛はダークブラウンに染めてウェーブをかけている。縦向きの灰色のセーターを着ており平均より大きな胸が平均よりさらに大きく見えている。
 ウェスト周りは少しふくよかなためロングスカートでウェストサイズを隠している。
「あ……えっと……夜山さん、旦那さんは?」
 男はいまだにインターフォン越しに私に問いかける。
「あ~えっと……秘密ってことじゃダメかな。」
 答えを曖昧にした。本当の答えは「夜山と夜山の旦那を殺した。」であるが、それを言うと男が悲しむのが分かっていたからである。
「秘密って、俺のところに来るなんて、なんで……」
「あ~寒いな~。湯沢くんとりあえず家入れてくれる?」
 夜山の性格はこうしたざっくばらんな性格であり、良くも悪くも男を勘違いさせる性格である。それも分かった上で私は夜山の姿になったのである。この女の方が男の家に入り込むには違和感としては一番少なかったからである。
「あ……、えっと……ごめん。えっと、今開けるから」
 どたばたとした音が扉越しから聞こえた。男が部屋の中にあるゴミやちらかったモノを一緒くたに押し入れに入れ込むのが私の視界に映り込んだ。
 五分ほどして、扉が開かれた。女を寒空の下五分待たせるのは一般男性としてどうなのだろうかという疑問が夜山の身体である私には浮かんだが、私自身は別に5分も500年も大したことはないので気に留めなかった。
「夜山さん、こんにちは」
 ボサボサの髪の毛、休日ということもあり若干生えた顎の毛、不摂生がたってこけた頬、くぼんだ瞳、ずっと昔に買ったファストファッション店での服。
 湯沢浩平の姿であった。
「湯沢君こんにちは」
 あぁ湯山、君を瞳に映したかった。私と湯山の一番距離が近づいた瞬間であった。
 私は湯山を抱きしめた。
「え?夜山さんどうしたの??旦那さんは??」
「会いたかった」
 その言葉は夜山から出た言葉ではなかった。私自身から出た言葉であった。

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