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これは小説です。

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勢いで初めてみました。 短編小説を投稿していく予定です。マガジン名悩み中。
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2021年9月の記事一覧

あなたのためのパンケーキ

あなたのためのパンケーキ

 明日好きな人が家に来る。泊まりとかではなくて午後二時から夜までの短い間だ。初めてその人が家に来ることが私にとって胸が高まって仕方なかった。あの人に会いたい、あの人にもっと好きと言ってもらいたい。

 あの人が来たら手料理を振る舞おうと思っている午後三時のパンケーキ、焦げ茶色の丸いパンケーキをあの人が食べて美味しいと言ってくれる所を想像する。

 うん、これであの人がもっと私を好きになってくれるは

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ある幸せな家庭の一面

ある幸せな家庭の一面

扉を開ける10秒前から分かる。ドタバタとしたうるさい音。私はリビングで飲んでいた紅茶を持ち上げ台所に向かう。
「ただいま」
近所迷惑なんて気にしない大きな声とともに扉を開けるのは息子である。
「おかえり」
私はまだ残っていた紅茶を台所に流して、カップを洗い場に置く。息子の次の言葉は決まっている。
「お腹減った。」
洗面所で手を洗いながら帰って来た時より大きな声でそう叫ぶ。そんなに叫ばなくても家中響

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脳味噌の中知っているか?

脳味噌の中知っているか?

 人を殺して後悔したのは今日が初めてである。

 私は座り込んで頭を抱えた。目の前には脳味噌がでろりと現れている女の死体が一体転がっている。

 あぁ私は見てしまった。その脳味噌を見てしまった。

 人を殺すのは土曜日の昼下がりが良いと決めていた。なぜなら皆が元気でにぎやかであるからである。人を殺すのには明るければ明るいほうが良い。

 気分も明るくなるし殺すときの手も軽くなる気がするからである。

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