見出し画像

メジャーリーグ観戦旅行記:ヒューストン

アメリカに野球を見に行く旅行に出ていました。

これまでのメジャーリーグ観戦経験はといえば、2012年と2019年の日本開幕戦、2015年の日米野球ぐらいだったのですが、ついに念願叶い、ファン歴10何年目にして初めての現地観戦を味わうことができました。

最初の目的地、ヒューストンへ

格安便での移動だからか、直通便が無いのかは分からないですが、まずは東京からシアトル・タコマ国際空港へ。

アメリカ本土上陸は初めてということで感慨もひとしお。シアトルからメジャーリーグに挑戦した多くの日本人選手、菊池雄星・川崎宗則・マック鈴木らの顔が頭に浮かびました。

シアトルではそこまで時間の余裕もなく、慌ただしく乗り継ぎをしました。せっかくシアトルに来たんだからスターバックスでもと思って、スターバックスに入った程度。提供が遅く、日本人の陽キャ店員たちの手際の良さを痛感しました。

アメリカの国内線に乗るのはドキドキしましたが、なんとか何事もなくヒューストンに到着。ロストバゲージ対策でAppleのエアタグを買っておいた(ただのGPSでこの値段?と思いましたが)のも安心材料になりました。


ヒューストンといえば、全米第4位の大都市。空港からUberでホテルへ向かう際も、広い通りで碁盤目状に区切られたブロックに、歴史ある石造りの建物ないしは高いビルが立ち並ぶといった景色が続き、迫力を感じました。

ミニッツメイドから数ブロック先にある壁画

観光スポットにも事欠かないヒューストン。その最大の観光スポットであり街のアイデンティティともいえるのがNASAの宇宙センターですが、ダウンタウンからUberを飛ばして見に行くほどの興味がなく、観光はスキップ。こちとらお金がない。

なにか一回くらいは外食にしようということで、せっかくテキサス州にいるのだからとステーキに奮発することに。ダウンタウンから徒歩圏内に構える「モートンズ・ザ・ステーキハウス」へ。

美味しかったですが、味が濃くてびっくりしました。

後から調べてみて分かったのですが「モートンズザステーキハウス」はテキサス由来のステーキではなく、シカゴに本拠を構え、アナハイムや東京丸の内にも支店を構えるチェーン店とのこと。

知った当初はガッカリしたのですが、丸の内店のメニューを調べてみてガッツポーズ。この円安でも、丸の内で食べるよりメニューの値段は安かったです。

ステーキといえば、プロレス好きにはお馴染みの学芸大学「リベラ」しか知らずに育った僕ですが、上品なステーキってこういう味がするんだなと終始胃が落ち着かなかったです。


そして、その日の夜からお待ちかね、野球観戦に。

野球観戦しか目的のない旅行だったこともあり、ホテルは球場から徒歩圏内にこだわりました。ホテルからは数ブロック歩けばミニッツメイド・パーク。

一応グーグルマップを開きながら向かっていたものの、開場時間を目指してヒューストンの街中には既に「ALTUVE #27」のユニフォームがちらほら。あとはその多くの27番の背中についていくことにしました。

そしてミニッツメイド・パークに到着。外装はレンガ造りで非常に洒落ています。

荷物検査やら金属探知機を当てられるやらをし、入場土産のミニッツメイド・パークの模型ロゴをもらうと、ついにフィールドへ。

長年憧れてきたメジャーリーグの球場に足を踏み入れたその瞬間はかなりの感動を覚えました。

開場時間に到着すると、だいたいはビジター側のチームが練習しています。

練習はだいたいホーム→ビジターの順に行われるからなんですね。そのため、お目当てのチームを見に行くなら、むしろそのチームの本拠地よりも敵地での試合に行ったほうがファンサを受けられる可能性は上がります。

そして打撃練習中には守備に就くトラウトの姿も。

実在した

三塁側でサインをもらおうと構える子どもたちに名前を呼ばれていましたが、ファンサはなし。それもそのはずで、もしこの時間にトラウトがサインし始めようものなら大騒ぎになっていたはずです。ミニッツメイド・パークには、日本人ファンはもちろん、エンゼルスファンの数もそこそこ多かったです。


練習が終わってからの時間は球場を散策することに。

三塁側からレフトスタンド側へ移動すると、その通路はアストロズの球団殿堂入りのレジェンドを表彰する道になっていました。

伝説的クローザー・ワグナーと初代オーナーのホフハインツ
00年代を象徴する強打者・バークマン
投手としてチーム歴代WARトップ・オズワルト

昔、ロイ・オズワルトとロイ・ハラデイ、クリフ・リー、コール・ハメルズの4人のポスターを自室と中学の野球部の部室に飾っていたので、オズワルトを見つけたときはテンションが上がりました。


そうこうしている内に、試合前のアップが始まります。

実在した

大谷翔平が出てくると信じられない大歓声が上がりました。

イケメンすぎた柱

ランドール・グリチックも出てきました。アップ終わりに子供にボールをあげる姿が凛々しかったです。

エンゼルスの先発はリード・デトマーズ。そしてアストロズの先発はなんと、ジャスティン・バーランダーでした。

バーランダーはこの日がトレード移籍後、初めてのヒューストンでの登板。35番のユニフォームを着たファンも多かったです。

そうして始まった第一戦でしたが、やはりこの試合のハイライトはバーランダーでした。

エンゼルス打線を退け、ヒューストンでの久々の勝利を手にしました。

三塁側の席に座っていましたが、バーランダーの均整の取れたデリバリーをよく見ることができました。ミニッツメイドパークには変化量の表示があり、そこに表示されるバーランダーの4シームのIVB(縦変化量)にはビビりましたね。

そしてもう1人、ヒューストンへの凱旋を果たした選手がこの試合のMVPとなりました。

それがかつてのアストロズの有望株ジョン・シングルトン。

挫折を味わい、薬物に溺れ、一度は野球を引退したシングルトンでしたが、今年メジャーの舞台にカムバック。そして古巣アストロズに移籍し、再びヒューストンのファンの前に帰ってきました。

そしてヒューストン凱旋初戦となるこの試合で2ホーマー。ド派手なバットドロップも決めました。

エンゼルスは初戦に大敗。プレーオフ争いということを考えれば、アストロズ相手でもこれ以上の負けは許されない局面にこの時はありました。


2戦目、球団殿堂セレモニーとカイル・タッカー

2戦目、この日はアストロズの球団殿堂セレモニーが執り行われました。

往年の名二塁手ビル・ドーランと長年実況アナウンサーを務められていた方が球団殿堂入りを果たしました。

セレモニーには主要な球団殿堂入りを果たしたレジェンドが集結。

メジャー殿堂入りを期待されるビリー・ワグナー、ランス・バークマン、今もフロントで要職を担うジェフ・バグウェル、そしてもちろん一番歓声を浴びたクレイグ・ビジオもいらっしゃいました。

前日に球団殿堂のプラークなどを見ただけでテンションが上がっていたので、唐突な本人たち登場に流石に沸き返りましたね。

球団殿堂入りのセレモニーを見ながら、2017&2022の世界一メンバーが球団殿堂に入るときはそれは盛り上がるんだろうな~と思いました。そのときにまたヒューストンを訪れたいものです。


2戦目の先発はJP フランスとタイラー・アンダーソン。

この日はライトポール際のカイル・タッカーを見るには最高のポジションに陣取りました。

前日に三塁側から見ていて、やけにライトスタンドがキラキラしているなと思っていたのですが、ライトスタンドにはタッカーの愛称”キング・タック”にちなんだプラスチックの王冠を被ったファンが陣取っているんですね。

この日はタッカーのユニフォーム配布日ということもあって、ライトスタンド側は一層熱を帯びていました。

そしてこの日はタッカーがその期待に見事に応えました。この3ランは本当に目の前に飛び込んだのですが、放物線はなんとも美しかったです。タッカーの打棒はやはり天才的でしたね。


前日もなんやかんやでハードヒットを連発し、大敗の中で孤軍奮闘していた大谷でしたが、この日も同じ展開に。この頃は体の痙攣が頻発しており、休養を検討していたタイミングでしたが、結局休まずに出続けていましたね。

二塁打を放った大谷

この日、フランスから放った二塁打は打球初速118.3マイル。今季最速の当たりだったそうです。なんかめちゃくちゃ速くね?と思っていたら、本当に速かった。

試合は前日と代わり映えしない展開でエンゼルスが大敗。

大きな補強をデッドラインで敢行してからまさかの転落を喫していたエンゼルスにとっては、ヒューストンから始まるアストロズ、レンジャーズとの同地区上位との直接対決は挽回の最後のチャンスに思えました。しかし、ちょっとアストロズが強すぎました。

2000本安打まで数本に迫っていたアルトゥーベと、そしてタッカーは特にその時は調子が良く、生で目の当たりにする天才的打棒には驚かされましたね。


3戦目、ミニッツメイド・パークが素晴らしいっていう話と、エンゼルスの勝利

厭戦ムードも漂っていた3戦目はデイゲームで行われました。

日曜だったこともあり、1時の試合開始の2時間前には、灼熱の中でファンが列をなしていました。

ヒューストンは暑く、私が行ったときは最高気温が42度とかだったと思います。その暑さの種類でいえば、熱波警報が出るような、太陽の日差しにジリジリと刺されるような暑さ。

一方で湿度は低く、日陰に入れば比較的涼しかったです。真夏の東京に比べればうんと不快指数は低く、快適でした。

それでも日なたはだいぶ暑いです。ブライアン・マクタガート記者が「屋根を開けろ!」といつも言っていますが、実際にこの日差しを味わってみると正気かとなります。

中継で見る限りでは、薄暗く陰気臭い印象の否めないミニッツメイド・パークでしたが、現地で言ってみるとそのイメージは完全に払拭されました。

建物は極めて現代的で、入場してからフィールドに至るまでは、チームショップ・アッパーデッキへ続くエスカレーター・バーや食べ物のお店が綺麗に立ち並んでおり、デパートのような雰囲気があって良い意味で野球場らしさを感じません。屋根が閉まっていて、空調がよく効いているのもそう感じる一因でしょう。

いざフィールド部分に入ると、中継で見るより意外とコンパクト(どの球場にも言えることでしたが)で、臨場感を味わうことができます。中継で見るときにはマイナスポイントだった屋根付き故の閉鎖感も、現地では手狭で落ち着く印象を作り出していて良かったですね。


この日は猛暑の昼間にも関わらず開場前に列ができていたように、ヒューストンのファンは非常に熱心でした。

週末のホームスタンドということもあってか、3連戦は毎試合先着の入場土産が配布されました。1試合目がミニッツメイド・パークのレゴ模型、2試合目がタッカーの復刻ユニ(よりにもよってこれを逃した)、3試合目が選手の背番号と名前入りのコーンホールバッグ、いずれも先着1万人という気前の良さでした。

「こんなに毎試合お土産があるなんて、メジャーはすごいな…」と思っていましたが、こんなに毎試合お土産があるのは結局ミニッツメイド・パークだけでしたね。

他にもミニッツメイド・パークはファンを楽しませる仕掛けが充実していました。イニング間の企画の数も今回回った球場の中では群を抜いて多かったです。

ダンスはもちろん企画の回しも行う千両役者のチアリーダー軍団”シューティング・スターズ”

これだけチアリーダーに仕事があるのもミニッツメイド・パークだけでした。(他球場はせいぜいイニング間の企画1回程度で、踊りはしなかった)

おもてなしが凄かったミニッツメイド・パークでしたが、その分客足もすさまじかったです。

ミニッツメイド・パーク付近のヒューストンの街はかなり都会。良くも悪くも生活感がなく、大きな駐車場も発達した公共交通機関にも事欠く印象を受けましたが、試合となるといったいどこから湧いてきたんだとなるほどに、たくさんの家族連れがつめかけていました。

ここ数年は常にリーグチャンピオンシップに進出しているアストロズですが、東地区のファンからは「プレーオフでマスコットに煽られなければファンは立つタイミングもわからない」とチクチク言われることもしばしば。

メイン層が家族連れということもあって、確かに東地区の名門のファンのように熱狂的というと的外れかもしれませんが、アストロズのファンは行儀良く熱心です。アストロズがミニッツメイド・パークで無類の強さを誇る理由が分かる気がしました。

ファン人気が高いのは、もちろんアルトゥーベでした。長年チームを支えるコアプレイヤーが多いアストロズですが、正直アルトゥーベ人気は他の人気プレイヤーと比べても圧倒的。

バットを横にするアルトゥーベ

低迷期から1人でチームを牽引してきたスターの献身をファンは忘れていないんだと思いました。


さて、3戦目はデイゲームでした。3連戦最後のデイゲームということで、試合前練習は無いんじゃないかと危惧していましたが、3戦目はエンゼルスの選手たちの素晴らしいファンサービスに恵まれる日となりました。

いつものような打撃練習はなく、代わりに投手陣が三々五々キャッチボールに取り組んでいました。

前日に登板したアンダーソン。シャツイン
リオンに声をかけた後、ブルペンへ向かうネビン監督

練習の最中には、フィールドで練習する全員に声をかけて回るネビン監督の姿が。

事前にどこかのメディアで拝読したのですが、ネビン監督には「毎日クラブハウスの選手全員に声をかける」というモットーがあるそう。

これはネビン監督が現役時代に師事した現レンジャーズ監督の老将ブルース・ボウチー監督の習慣にならったもので、スター選手でもロスターの端っこの控え選手でも同等に扱うという意味が込められています。

この記事を読んで感銘を受け、ネビン監督の立ち振舞を注視していましたが、確かにキャッチボールする投手たち一人一人に声をかけてフィールドを回っていました。本当にやってるやん!と思って興奮気味にカメラを回しましたが、どの写真もブレブレでした(照れ)。

昨年はマリナーズとの間で起きた大乱闘の引き金となる報復を命じ、現役時代から”武闘派”というイメージもあるネビン監督。報復を命じたきっかけにあるのも「ゲームに対して失礼ではないか」というオールドスクールなこだわりがあるようで、大差でチームが勝っている試合では自分の選手たちがゲームや相手チームに対する礼を失わないようにと、気にかけていらっしゃるといいます。

お世辞にも戦略家というタイプではないですが、いわば現代の”ベースボール・ヤクザ”とでも言うような、昔気質のネビン監督の人間的魅力が垣間見えるシーンでした。


そしてこの日はたくさんエンゼルスの投手陣たちがファンサービスをしてくれました。

僕自身は目の前でキャッチボールを終えたデトマーズに「リード!」と声をかけると、快く応じていただきました。間近で見ると本当にイケメンでしたね。

エンゼルス投手陣はどの選手もファンサービスが最高でした。

ファンサービスが良いと評判だったカルロス・エステベスはサインを求めてきたファンには全員サインしていました。

新人のホセ・ソリアーノもファンサービスに応じていた。


このときは試合の前だけでも十分に満足モードになってしまいました。ですが、結局はこの日の試合が最大の好ゲームとなりましたね。

エンゼルスの先発は7月下旬からローテに抜擢されたチェイス・シルセス。投げてる球でいえば、既にローテでは大谷の次くらいに期待できます。

アストロズの先発はこの日が復帰戦となったアルキディー。ファンタジーでも保有する彼を果敢にセットして臨みました。

3試合目は最も近い座席をチョイス。ネクストで待機する大谷の姿も良く見えました。

試合は両先発の好投で進みました。

この日はアルキディーの調子が良く、4シームを積極的に狙っていたエンゼルス打線に対して、ベストピッチのチェンジアップで躱し、チェンジアップをケアすればブレーキの効いたカーブを投げ、と思うようなバッティングをさせません。
マルドナードのリードの上手さ、どれだけ打てなくても、そして今季は守備指標が悪くとも、使われ続ける理由の一端を肌で感じました。

対するシルセスも負けておらず、前日・前々日と大爆発したアストロズ打線から得点を許しません。

試合を動かし、決定づけたのはこの男でした。

目では打席を追っていたので、決定的一枚ながら痛恨のピントズレ。

大谷がよくホームランを打っている印象のある中途半端な左腕が出てきたのであるいは…と思って見ていたのですが、案の定打ちました。

生で見る大谷のホームラン、すごすぎました。

過去2戦は大差で勝利し、ブルペンには余裕があったはずのアストロズでしたが、ここの大谷に対してもっとマシなマッチアップを用意することはしませんでした。結果的にこれが大きな追加点となったことを思えば、すこしもったいなかったですが、リリーバーを育てる意図もあるのでしょう。

投手交代で話し込むモニアックと大谷

その後、9回にも出塁した大谷。

一塁ベンチと何やらやり取りしているようだったので、見てみるとアルトゥーベとどうやらやり取りしていたようです。アルトゥーベはこの日DHでの出場でした。

大谷はその後、盗塁も決めました。

ここの局面では追加点とはならず。1点リードでクローザーのエステベスを投入。サインをくれたエステベス、頑張れ。

9回のアストロズの打順はケッシンジャー、マルドナードのところに恐らく代打、そしてアルトゥーベ。比較的有利なマッチアップでした。ケッシンジャーは初戦レフトで見ていた際に代打でコールされると、コアな感じのお兄さんから「Woo, Kessinger sucks」と言われていました。

夏場となってからは珍しい(?)エステベスの三者凡退のセーブ成功で、エンゼルスはスイープを免れました。


あとのアナハイムでのタンパベイ戦での勝利も見て、それが大谷のルーティンと分かったのですが、大谷は勝利を決めると真っ先にベンチから飛び出してきます。そしてマウンドで、シャドーの真似事のようなことをします。

そして向かう先はマウンド。

感覚を確かめているのか、あるいは投手としての本能でただマウンドで戯れているだけなのか。

この時にフィールドに乱入して、腕の違和感に正直になってMRIを録るなりしておかないと、あなたのUCLに最悪の事態が訪れることになる。。。と言いに行けばよかったです。

ビクトリーフォーメーション。


意気揚々とミニッツメイド・パークから出ると、1戦目の前に写真をお願いし、こちらも写真を撮ってあげたエンゼルスファンの親子に再会しました。こちらもエンゼルスの勝利にご満悦の様子でした。

他愛もない世間話をして「次はどこへ行くの?」と聞かれて「サンディエゴ」だと言うと、カリフォルニア出身らしいその親子は「サンディエゴは最高だよ」と次なる目的地に太鼓判を押してくれました。

こうして気持ちよくヒューストンを後にし、我々はメキシコとの国境にある”ファイタータウン”へと向かいました。


この記事が参加している募集

夏の思い出

野球が好き

よろしければサポートをお願いします