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特定のセリフ・会話内で、1つの言葉を異なる意味で使う ~映画「ラストベガス」の場合

エズラ「(老父アーチーの体を心配して)バカなことは止めてよ!子どもじゃないんだから!」

アーチー「お前の言う通りだ。俺は子どもじゃない。立派な大人だ。だから親友のバチェラー・パーティに参加して悪いはずがない」「脳梗塞は軽かったし、いまは薬も飲んでいる。発作が起きたって最悪死ぬだけだ」「死ぬまで人生を楽しみたいんだ」

映画「ラストベガス」




◆概要

【特定のセリフ・会話内で、1つの言葉を異なる意味で使う】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「ラストベガス」

▶1

本作の主要キャラの1人・アーチー(70代頃の男性)。


いまから少し前、

・Step1:アーチーは脳梗塞で倒れた

・Step2:幸いすっかり回復したものの、それ以来エズラ(アーチーの息子)はアーチーの行動にあれこれ口出しするようになった

・Step3:やれ遠出するな。やれ酒を飲むな。やれタバコは止めろ。アーチーは内心うんざりしつつも、愛する息子の言いつけにしたがって暮らしていた


だがある時、

・Step4親友のバチェラー・パーティ(独身さよならパーティ)がラスベガスで開催されることになった。これは行くっきゃない!

・Step5:アーチーは嘘をついて家を抜け出すと、ラスベガスに向かった。そして友人たちと大いにはしゃいだ。


ところがやがて、

・Step6:アーチーの嘘に気づいたエズラが、ラスベガスまで追いかけてきた

・Step7:エズラはアーチーを捕まえると「バカなことは止めてよ!子どもじゃないんだから!」

・Step8:アーチーは決意した。もう我慢するのは止めよう。いまこそ本音をぶつけよう。というわけで彼は言った「お前の言う通りだ。俺は子どもじゃない。立派な大人だ。だから親友のバチェラー・パーティに参加して悪いはずがない」「脳梗塞は軽かったし、いまは薬も飲んでいる。発作が起きたって最悪死ぬだけだ」「死ぬまで人生を楽しみたいんだ」。

・Step9:エズラはやれやれといった感じで笑うと「わかったよ」。かくして親子は和解し、酒を飲み交わしたのだった。


▶2

ご注目いただきたいのは、エズラのセリフ「バカなことは止めてよ!子どもじゃないんだから!」と、アーチーのセリフ「お前の言う通りだ。俺は子どもじゃない。立派な大人だ」である。

要するにエズラは「もういい年なんだからバカなことはしないでくれよ」と説教、対するアーチーは「俺は自分のことは自分で決められる。お前の気持ちはありがたいが過度に干渉しないでくれ。俺にはバカなことをする自由だってあるはずだ」と抗議したわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。

そこで【特定のセリフ・会話内で、1つの言葉を異なる意味で使う】という技法の出番だ。


改めて2人のセリフをご覧いただきたい。

「バカなことは止めてよ!子どもじゃないんだから!」「お前の言う通りだ。俺は子どもじゃない。立派な大人だ」。

【子どもじゃない】を「バカなことはしない」と「自分の判断で時にはバカなことだってする」という2つの意味で使ったことで、印象的なやりとりになったといえるだろう。


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