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水滸噺 20年2月(上)【林公は今日も平常】

あらすじ
騎馬隊致死軍 隊長将魅力語り
豹子頭入雲竜 豹駆け竜雲隠れ
御竜子鬼臉児 シシハラの乱れ
海棠花への愛 神箭義足に散る

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝,楊令伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

ついに1周年です!
読んでいただく皆様に、心より御礼申し上げます!

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…一年経っても、調練やら激務やら、バカ騒ぎやらが盛んで愉快なねぐら。良い子は梁山泊に入らん!

騎馬隊

騎馬隊…激烈で過酷な調練を乗り越えに乗り越えた精鋭のみ選ばれる、梁山泊全員の憧れ部隊。なお、隊長の機嫌次第で、調練の厳しさは乱降下する。

人物
林冲(りんちゅう)…嫁の張藍におちょくられながらも幸せに惚気ている。こんな世界があってもいいだろう?
索超(さくちょう)…騎馬隊の調整係。彼がいない時の騎馬隊は、ただただ林冲の気分とノリに翻弄されていた。
扈三娘(こさんじょう)…バレンタインデーに、部下が妙に期待した目で見てくるのはなぜでしょう?
馬麟(ばりん)…案の定、結構もらえる。
郁保四(いくほうし)…定食屋のあの娘から義理をもらえてウキウキ。

1.
扈三娘「林冲殿」
林冲「どうした、扈三娘?」
扈「今日はバレンタインではありませんか」
林「…ああ」
扈「公孫勝殿と何をされるんですか?」
林「何を言っている!扈三娘!」
扈「…王英殿が」
林「王英?」
扈「このような事を」

扈三娘「林冲殿が」
王英「林冲?」
扈「バレンタインデーを公孫勝殿から聞いた、とおっしゃっていたのですが」
王「本当か?」
扈「はい」
王「これは俺の推測だが」
扈「はい」
王「きっと林冲と公孫勝の記念日の符牒なんじゃないか?」
扈「なるほど!」

林「…」

索超(凄まじい怒りの気が)
馬麟(自業自得だ)
郁保四(こんなこともありましたよね)

林「おい、扈三娘」
扈「はい」
林「お前、バレンタインって知ってるか?」
索(それは)
扈「知りません」
馬(ほう)
扈「林冲殿は何のことだと思いますか?」
林「それは」
索・馬・郁 (面白くなってきた)

扈「どこでお聞きになったのですか?」
林「それは、公孫勝の野郎が」
索(笑うなよ。郁保四)
扈「公孫勝殿?」
林「この話はやめだ。扈三娘」
扈「分かりました。公孫勝殿に聞いてくればいいのですね?」
林「やめろ扈三娘」
馬(素なのかわざとやってるのか判断に困る)

索(…一年経ったのか)
馬(感慨深いな)
郁(もっとも、今はそれどころではありませんけどね)

林「百里!」

王英「!?」
楊林「どうした、王英?」
王「当面梁山泊に帰らなくてもいい任務はないか!」
楊「今日は帰る気満々だったじゃねえか」
王「俺の命に関わることが起きる!」
楊「…馬蹄の音が?」

林冲…王英を叩きのめした後で、張藍のチョコに舌鼓。
扈三娘…なぜかボロボロになって帰ってきた王英に、チロルチョコを一つあげた。

索超…あっという間だったな。
馬麟…まさかここまで続くとは。
郁保四…旗は立てるものですね。

楊林…一年越しの伏線回収とは。
王英…全治三ヶ月だが自業自得。

騎馬隊&致死軍

騎馬隊&致死軍…いわゆるいつものイチャコラだよ。

2.
林冲「また貴様か、ウスノロ」
公孫勝「私の台詞だ、馬鹿」

索超(今日はよく会うな、劉唐)
劉唐(もう三度目だ)

林「そんなに俺の面を拝みたいのか、薄寒い面で」
公「貴様の分厚すぎる面の皮は、何をかければ液状化させることが出来るかな?」

索(出会うたびに一刻やりあうからな)
劉(もう三刻か…)

林「次会う時までくたばるなよ」
公「私の台詞だ、馬鹿」

索(さっき会ったばかりだよな)
劉(死にそうにない二人組なのに…)

林「まだくたばってないのか、死に損ない」
公「貴様こそ、もうくたばる頃だと思っていたのだが」

索(さっき別れたばかりじゃないか)
劉(曲がり角の出合い頭で出会うとは…)

林「いい加減にくたばれ、死に損ない!」
公「死んだことも気づかぬ馬鹿め」

索(またぴったり一刻か)
劉(二人の体内時計に搭載されているのではないか)

林「行くぞ、索超」
公「帰るぞ、劉唐」

索(四刻も遅れた)
劉(遅刻証明を文治省で発行できてよかった)

林「!」
公「!」

索「…」
劉「…」

林冲…今日まだ3回会うことになるのをまだ知らない。
公孫勝…明日もやたら会うことになるのをまだ知らない。

索超…俺たちはどうして待っているのかな?
劉唐…置いてったらどうなるか分からんだろう?

3.
#北水クラスタ林公罵り合い選手権
林冲「なんだこの選手権は」
公孫勝「お前が私を罵るせいだ」
林「貴様が俺を罵らなければ、こんなことにはならん」
公「初めて罵ったのはお前だ」
林「貴様が王和なんぞにぼろ負けしたウスノロだからだろうが」
公「馬を忘れて駆けてくる騎馬隊だと思ったからだ」

公「もしや騎馬隊は、お前ではなく百里風が率いているのではないか?」
林「馬鹿言え」
公「騎馬隊一の馬鹿が馬鹿言えなどと言ったら、言われた者はどうしたら良いのか分からんぞ?」
林「一体何を言っている、公孫勝」
公「お前を馬鹿だと言った」
林「野郎!」
公「待て。林冲」
林「怖気付いたか」

公「ようやく自分が馬鹿なことに気が付いたのか、林冲?」
林「首を捻じ切るぞ、公孫勝」
公「私は心配していた」
林「なにを」
公「馬鹿の意味も分からぬほどの馬鹿が、騎馬隊を率いているのかと、心配していたのだ」
林「貴様は自分の命の心配をしろ」
公「なぜ?」
林「今からお前の首を捻じ切る」

林冲…王定六すら周回遅れにする速さで、一日中追いかけっこしてた。
公孫勝…時遷すら見つからないレベルで、一日中かくれんぼしてた。

4.
林冲「致死軍の木偶どもと何かを競うことになった」
索超「何かとは?」
林「それが分からん」
馬麟「誰が決めるのですか?」
林「宋江殿だ」
扈三娘「またあの時の林冲殿のように、あらぬ方向性に走られそうですね」
林「うむ…」
郁(…扈三娘殿)
索(しれっとえげつないことを…)
馬(気付け、林冲殿)

公孫勝「…」
劉唐「公孫勝殿?」
公「騎馬隊と戦だ」
楊雄「何事ですか!?」
孔亮「ついに謀反を!?」
公「樊瑞」
樊瑞「来い、孔亮」
孔「」
公「…面倒なことに」
劉「何をやるんです?」
公「…及時雨に気ままに降られても、受ける器が無ければ濡れるだけさ」
劉「なるほど」
楊(今ので分かるのか?)

宋江「…」
呉用「宋江殿?」
盧俊義(泣いている?)
宋「勢いで騎馬隊と致死軍を競わせてしまった…」
呉(これは…)
宋「私は、頭領失格だ」
盧(今日はどちらだ?)
呉(盧俊義殿です)
盧「…何を競わせるのですかな、宋江殿?」
宋「分からん。決めたくもない」
盧「ならば皆に決めてもらいましょう」

騎馬隊と致死軍、何を競わせる?
・統率力
・武力
・知力
・魅力

宋「見事だ、盧俊義」
盧「皆の者!各項目に投票していただいた上に、具体的な競わせ方のご提案もあるとなお良い!」
呉「marshmallow-qa.com/100syosyo
盧「呉用の窓口へのリクエストでも、こちらへのコメントでも、一向に構わぬぞ」
呉「ご投票、どうぞよろしくお願いいたします」

林冲…俺たちが負けるわけない。
索超…俺らが言ったら死ぬような事を。
扈三娘…何のことですか?
馬麟…俺らの胃がもたん、扈三娘。
郁保四…本当に気付いてないのかな…

公孫勝…宋江殿もアレだな。
劉唐…傘がないと困るだろ?
楊雄…そういう話ですか?
孔亮…絶叫中。
樊瑞…あと一刻だ、孔亮。

宋江…些細なことで、ちょくちょく頭領失格だと無自覚な泣き言を言っては、周囲にフォローさせていることに気付いてない。
盧俊義…次の泣き言フォロワーは呉用だぞ。
呉用…晁蓋殿に散々押しつけられたので、お手の物ですよ。

5.

2020年2月号上

林冲「…」
公孫勝「…」
盧俊義「投票の結果、騎馬隊、致死軍双方の魅力を競わせることになった」
呉用「ご投票、ありがとうございました」
宋江「なぜ知力に誰も投票しなかったのかな?」
林「自明だからです、宋江殿」
公「お前の大敗という結果がな」
林「野郎!」
盧(こういうことになるからだな)

盧「ここから先は、宋江殿が」
宋「隊長の魅力を部下が伝えるか。部下の魅力を隊長が伝えるか。どちらが先がいいかな」

索超(とんだトバッチリだ)
馬麟(観念しよう、索超)
扈三娘「…」
郁保四(自信ないなあ)

劉唐(何を言われるかな?)
楊雄(我らも考えないと)
孔亮「…」
樊瑞(孔亮にやりすぎたな)

公「劉唐」
劉「はい!」
公「私が捕縛された後、お前一人になっても拠点を守り通したな」
劉「…公孫勝殿?」
公「よくやった」
劉「!?」

林(ウスノロに先をとられた!)
宋(なんと)

公「楊雄」
楊「はい!」
公「よくぞ石秀と共に捕縛されて来てくれた」
楊「…」
公「感謝する」
楊「…当然です」

公「孔亮」
孔「…」
公「私はお前の仕事を全て把握している」
孔「…」
公「何も言うことはない」
孔「…どうも」
公「樊瑞」
樊「はい」
公「よく私と共に歩む道を選んだものだ」
樊「ええ」
公「後悔していないか?」
樊「微塵も」
公「ならいい」

盧(騎馬隊が唖然としている)
宋「林冲」
林「…」

林「…」
索(大丈夫か?)
馬(いっそ愉しもう)
扈「林冲殿?」
林「…なんだ扈三娘」
扈「まさか、照れているのですか?」
郁(扈三娘殿!?)
索(それは)
馬(ほう)

盧(そう来たか)
呉(張藍殿の影が…)

林「誰が照れるものか、扈三娘!」
扈「ならば早く、我らの魅力を伝えていただけますか?」
林「…」

林「索超!」
索「はい!」
林「見事な青騎兵だ!」
索「ありがとうございます!」
林「馬麟!」
馬「はい」
林「見事な鉄笛だ!」
馬「どうも」
林「扈三娘!」
扈「はい」
林「指揮も武術も良くなった」
扈「御礼申し上げます」
林「郁保四!」
郁「!」
林「お前ほどの旗手はいない」
郁「!?」

宋「やればできるではないか、林冲」
林「…」

索(泣くな、郁保四)
郁(…もう少しだけ)

盧「部下の魅力は存分に伝わった」
宋「甲乙つけるのは無粋だ」
呉「ならば次の企画」
盧「部下が隊長の魅力を伝える番」
宋「準備はいいか?」
劉「いつでも」
索「どうぞ」
郁「…」
馬(郁保四の面構えが違う)

索「しからば」

宋「索超」
盧「さすが急先鋒」

索「林冲殿の実戦指揮は天性の賜物」
林「…」
索「指揮に従うことすらやっとですが、林冲殿の指揮により、何度勝機を手にし、何度味方の危機を救い、何人の命を助けたことか」
林「…」
索「青騎兵を率いて共に駆けることができて光栄です、林冲殿」

劉「俺が」

宋「劉唐」
盧「致死軍はお前からだな」

劉「公孫勝殿の魅力は、真剣に民を思う熱い志」
公「…」
劉「公孫勝殿の志は、さながら蒼い炎。絶える事なく、燃え続けています」
公「…」
劉「ひとえにこの国の民を思う志、蒼い炎に私は魅せられ、飛竜軍を率いていることを誇りにしています」

馬「…」

宋「馬麟」
盧「鉄笛を…」

馬「♪〜鉄笛〜♪」

林「…」

宋(美しい…)
盧(滄洲の雪を思い出す)

馬「♪〜鉄笛〜♪」

宋(荒々しくなった)
盧(戦だな)

馬「♪〜鉄笛〜♪」

宋(また静かに…)
盧「宋江殿」
宋「どうした、盧俊義」
盧「空を」
宋「…なるほど」

林「…」

宋「月夜か」

楊「俺も」

宋「楊雄」
盧(馬麟の後でやるとは勇気がある)

楊「俺は文字も読めず、公孫勝殿のように難しいことは言えません」
公「…」
楊「それでも公孫勝殿は、俺のような者だろうと致死軍に受け入れてくださる大きな懐をお持ちなのです」
公「…」
楊「公孫勝殿ほど暖かい人を、俺は知りません」

扈「私の番ですね」

宋「扈三娘」
呉(騎馬隊の面々に緊張が…)

扈「…」
林「…」
扈「林冲殿は、私が女であることを全く気にされません」
林「…」
扈「それが何より私にとって居心地が良いのです」
林「…」
扈「これからも、私が女である事を気にされず、厳しい調練をよろしくお願いいたします」

孔「…」

宋「孔亮」
盧(深傷をどこで負ったのだ?)

孔「俺は、闇が好きなだけです」
公「…」
孔「たまたま公孫勝殿の醸す闇が、妙にしっくりきたから致死軍にいるだけです」
公「…」
孔「俺には、それ以上でも、それ以下でもありませんよ」

劉(わりに熱心だよな)
楊(公孫勝殿も、頼りにしている)

郁「…」

宋「郁保四」
盧(林の旗を…)

郁「…」
林「…」
郁「…」

呉(語らぬのか、郁保四?)
盧(呉用)
宋(郁保四は語っているぞ)

郁「…」
林「…」

索(この旗がある限り、俺らは無敵だと常々思うよ)
馬(違いない)
扈(やはり旗手は、郁保四殿以外考えられませんね)

郁「…」
林「…」
郁「…」

樊「…」

宋「樊瑞」
盧(何を語るのだろう)

樊「…俺は生きることと死ぬことの境目を知りたかった」
公「…」
樊「致死軍にいたら、それが分かるような気がしました」
公「…」
樊「俺の考えが、分からぬ者がほとんどであろうとも一向にかまいません」
公「…」
樊「公孫勝殿だけがご存知であれば」

宋「騎馬隊、致死軍、見事な魅力の語らいであった」
索(今になって恥ずかしくなってきた)
劉(俺もだ)
楊(ノリと勢いって怖いな)
馬(違いない)
林「宋江殿」
公「審判を」
宋「…なんの?」
林「どちらが勝ったのかを」
公「決めていただかなければ」
宋「それは知力の立合いで決めよう」
林「」
公「」

林冲…恥ずかしさのあまり、しばらく調練を倍以上キツくしたのにも関わらず、連中が軽々こなしてくるから腹が立つ。
索超…こうなるのも想定内さ。
馬麟…即興だが、我ながら良い曲が吹けた。
扈三娘…張藍の林冲殿マニュアル通りでした。
郁保四…馬から落ちても嬉しそう。握る旗は土一つ付いてない。

公孫勝…任務だ。
劉唐…王英と楊林にも聞かせてやりたかった。
楊雄…石秀のことを新しい兵によく話しているよ。
孔亮…しばらく休暇って、どう言う風の吹き回しですか?
樊瑞…人生の転機ってのは、案外こんなものかもしれんな。

宋江…知力試験の結果?ものの見事な同点だったぞ。
盧俊義…双方正しい解答と誤った解答が見事に相容れてないとは。
呉用…それで、競わせるきっかけは何だったのですか?

本隊 

本隊…二竜山セレクションを乗り越えた一軍兵の集まり。個性的な武器を使うのは、基礎をきちんと会得してから!

人物
関勝(かんしょう)…開封府にいた頃、鍛冶屋に作ってもらった青龍偃月刀を今でも愛用。冷艶鋸(れいえんきょ)と名付けているとか。
呼延灼(こえんしゃく)…鞭を二本使おうと思ったのは、子供の頃二刀流剣士の話に憧れたから。
穆弘(ぼくこう)…持参してきた108の眼帯には、それぞれの趣向を凝らしている。
張清(ちょうせい)…礫はお父さんから習った。曰く最後の200勝投手らしい。
宋万(そうまん)…組討ちや体術の稽古に熱心。デカくて良かった。
杜遷(とせん)…若い兵に一抹の羨ましさを感じているが、惜しまずに自分の経験や技術を話してくれる。
焦挺(しょうてい)…燕青とは体格差で圧倒しているのに、あと一歩のところで負けてしまう。
童威(どうい)…走るのも舟を漕ぐのも自信あり。
李袞(りこん)…そろそろ戦の実戦で飛槍デビューしたい。
韓滔(かんとう)…棗木槊(そうぼくさく)という棗の木で作っためっちゃ長い棒の遣い手。
彭玘(ほうき)…三尖両刃(さんせんりょうじん)という、三又の槍の遣い手。
丁得孫(ていとくそん)…一本しかない叉を、ここ一番でぶん投げる飛叉の達人。

6.
穆弘「また死角からとは卑怯な!」
関勝「お前が抉らなければ良かっただけの話ではないか!」
薛永「…何を揉めているのですか?」
関「おう、薛永。良いところに」
穆「目玉を再生する薬を作ってくれ」
薛「…目玉を?」
関「穆弘は目玉がない弱点をつくと拗ねるのだ」
穆「男のすることではない!」

薛「たかが卓球ではありませんか」
関「男の勝負に貴賎はない、薛永」
穆「文句があるならば、残りの目玉ですら賭けるぞ、俺は」
薛「そうすれば…」
関「薛永?」
薛「穆弘殿の目玉が一つあれば、再生する薬を作れるかもしれません」
関「それは」
穆「俺の目玉は一つだ、薛永」
薛「作らないので?」

関「前例は?」
薛「守りに入った役人みたいなことを言わないでください」
穆「失敗したら?」
薛「薬学に失敗はつきものです」
穆「戦に出られなくなるではないか!」
薛「その時は別の道を歩みましょう」
穆「いかん、死角に!」
薛「!!」
燕青「!」
薛「」
穆「…」
関「強引だな」
燕「まあな」

穆弘…ピンポン玉が目玉に見えてきた。
関勝…スポーツはフェアプレイすることを自分ルールに刻んだ。
薛永…新しい薬が作れる高揚から、つい…
燕青…薛永の丸太は初見では見切れんぞ。

水軍

水軍…冬場の梁山湖が冷たすぎて、湖での調練中止令が出てしまった。

人物
李俊(りしゅん)…とりあえず兵は歩兵に混ぜて調練している。今の梁山湖に落ちたら命に関わるからな。
張順(ちょうじゅん)…俺と甥の張敬ですら、しんどくなってきたぞ。
阮小七(げんしょうしち)…小五兄貴!ありがとよ!
童猛(どうもう)…我慢大会してた兵が、養生所に緊急搬送されてたのを目撃。
項充(こうじゅう)…今はもっぱら陸の調練に従事。
阮小二(げんしょうじ)…実家近辺の昔馴染みに聞き取り調査に行った。

7.
李俊「梁山湖寒冷化の調査は進んだか?」
阮小七「小五兄貴の記録があった」
阮小二「水温変動のグラフだ」
童猛「少しづつ低くなってやがるな」
張順「俺らが入山してからも気になる変化があった」
李「それは?」
張「鯉の長老曰く」
七「あいつな」
李「分かるのか?」
張「主の様子がおかしいと」

李「梁山湖の主ってやつは、本当にいるのか?」
二「間違いなくいる」
七「俺たちは餓鬼の頃、絶対に逆らうなと教えられてきたんだ」
童「俺も不穏な陰を見たことがあるぞ」
項充「張順と対立しているという噂があるらしいが」
張「入山した時、仁義を通さなかったのがまずかった…」
趙林(何の話だ?)

李「魚の世界にも仁義があるとは」
張「しかし、俺に対して好意的だった奴もいた」
二「ほう」
張「そいつが主との調整役を買って出てくれたんだが」
七「何かあったのか?」
張「釣られちまったんだ…」
童「それは」
李「所詮魚だ」
張「この湖でも一際大きな鰱魚だったんたが…」
二(もしかして…)

李俊…この冷たさじゃ、夏場になるまで調練もできやしねえ。
張順…団子に釣られちまったって噂だ。
阮小二…小五が少華山に行った頃から急落している…
阮小七…俺らが餓鬼の頃から生きてる鯉さ。
童猛…魚も色々あるんだな。
項充…迂闊に釣りもできないな。
趙林…どうしてみんな真顔なんだろう…

双頭山 

双頭山…髭を剃った朱仝に様々な付け髭をつけて遊ぶ福笑いを販売したら、結構売れた。

人物
朱仝(しゅどう)…髭剃りが下手くそ。美髭公(びぜんこう)が髭剃り上手いわけないだろう。
雷横(らいおう)…梁山泊陸上大会の跳躍系競技で、格の違いを見せつけた。
董平(とうへい)…バンドで楽和の抜けた穴が大きすぎるが、必死で方向性を模索中。調練は?
宋清(そうせい)…歌の上手い者は誰かいないか…
孟康(もうこう)…飲馬川?あそこは宋と遼のあいのこにある、辺鄙な山だぜ?
李忠(りちゅう)…やれやれ。黄信が露骨に私を無視するのは困ったものだよ。
孫立(そんりつ)…嫁の楽大娘子のバンドの売り上げが右肩上がりなのは、楽大娘子の踊りのおかげに違いない!
鮑旭(ほうきょく)…李忠の良さを全く理解できない黄信に辟易。
単廷珪(たんていけい)… 黄信の実力は認めるが、愚痴を聞かされるのはそろそろしんどい…
楽和(がくわ)…北京の姉のバンドに強制加入させられている。孫新の笛との相性は抜群。その他メンバーは末恐ろしいくらい、貢献してない。

8.
黄信「なんとかして双頭山に、もう一山足すことはできないか…」
単廷珪「宋清に提出した企画書は?」
黄「二枚目の途中で屑籠送りだ」
単「厳しいな」
黄「このままでは、鎮三山と名乗れん」
単「確かに、現状鎮二山だ」
黄「春風、秋風にあと一つ山はないか、単廷珪」
単「そもそも山があったかな」

単「起伏がある場所は?」
黄「丘じゃない」
単「昔、飲馬川という山に、孟康たちはいたというが」
黄「北への距離がありすぎる」
単「やはりないぞ、双頭山に加えるにふさわしいもう一つの山は…」
黄「知恵を絞れ、単廷珪」
単「絞った所で、山がないことには話にならんではないか」
黄「やれやれ」

単「まるで俺に知恵がないみたいではないか、黄信」
黄「聖水将も水がなければ話にならんな」
単「おい」
鮑旭「…山ならありますよ」
黄「本当か、鮑旭!」
鮑「あなたの中に」
黄「俺の中に?」
鮑「あなたは、お山の大将ではありませんか、黄信殿」
黄「」
単「鮑旭!?」
鮑「朱仝殿が、お呼びです」

黄信…朱仝に調練の緩みを叱責されたが、鮑旭に言われた言葉がリフレインして、全部右から左。
単廷珪……川がある拠点なら水攻めできなくもないかもしれんが、事後処理が大変だから、やりたくてもやらんよ。
鮑旭…黄信の李忠殿への無礼が見ていられなかったもので…

流花寨

流花寨…そこら中に花栄が射た矢が散らばってて、あと片付けもしないもんだから、回収するのも一苦労。

人物
花栄(かえい)…岩に突き立った矢が抜けない?当然だ。
朱武(しゅぶ)…通行の邪魔になるんだよ!
孔明(こうめい)…なんだか絶妙に邪魔な位置に突き刺さってないか?
欧鵬(おうほう)…矢に引っ掛かったら負けだからな。
呂方(りょほう)…木にいる毛虫を貫いた矢が貫通してやがる…
魏定国(ぎていこく)…さすがに鏃が露出しているのは取り除かないか?
陶宗旺(とうそうおう)…そこら中で稽古しますからね、花栄殿。

9.
花栄「そういえばお前たちの武器は一風変わっているな」
欧鵬「鉄槍」
呂方「方天戟」
陶宗旺「鉄鍬」
魏定国「瓢箪矢」
朱武「実は俺も双刀を使っていた」
孔明「光線」
花「本当か、孔明!?」
孔「嘘ですって」
朱「…いや、分からんぞ孔明」
欧(また朱武の悪ノリが)
呂(軍師はいたずら好きだからな)

孔「どうやって出すんだよ」
朱「穆弘が眼帯から出すのを見たことがある」
花「本当か、朱武!?」
陶(面白いな、花栄殿)
魏「俺の火薬技術を応用すれば、いけるかもしれんぞ?」
朱「さすが神火将!」
欧(いらん仕事抱えたな、魏定国)
孔「…そこまで言うなら」
呂(ここで流されるのが、孔明殿だな)

朱「孔明光線のお披露目だ」
孔「…」
欧「この羽扇か、朱武?」
朱「いかにも」
花「早く見せてくれ、孔明!」
孔「では花栄殿にお見舞いしよう」
花「なに!」
孔「!」
花「目が!?」
呂「…」
陶「…孔明殿」
孔「言うな、陶宗旺」
魏「火薬はまだ早い」
花「見事な光線だぞ、孔明」
朱(天然の鑑だ)

花栄…この光線があれば、官軍を吹き飛ばせるな、朱武。
朱武…マジで言ってるのか、花栄?
孔明…子供騙しで高揚しすぎだろう…
欧鵬…曇りや雨の日には使えませんぜ?
呂方…面倒な気配がする…
陶宗旺…石積んできます。
魏定国…瓢箪矢作ってます。

塩の道

塩の道…科挙を合格できて当たり前の連中しか働けない。それでも仕事についていくのがやっと。

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…なんだこのドス黒いブログは…
燕青(えんせい)…鉄腕ハッピーのソルティーブログ?
蔡福(さいふく)…梁山泊にいる者たちには決してアクセスできないブログの中で、心のけだものを大暴れさせている。
蔡慶(さいけい)…まさか、これが兄貴のやっているという噂の…

10.
盧俊義「蔡福」
蔡福「…」
盧「貴様の私への罵詈雑言を、ブログで逐一読ませてもらった」
蔡「…」
盧「俺の上役の皮下脂肪は、鯨の脂よりも長持ちする」
蔡「…」
盧「俺の上役の皮下脂肪は、水分すら吸収したであろうパーセンテージを誇る」
蔡「…」
蔡慶(笑ってないか、燕青?)
燕青(お前こそ)

盧「蔡福」
福「…」
盧「この私の上半身を見ても同じことが言えるか?」
福「!?」
盧「貴様への怒りの熱が脂肪をことごとく燃焼させた結果、体脂肪率は男の平均を少し上回る程度だ」
慶(やっぱり少し多いのな)
燕(しかしあの筋肉量はさすが盧俊義様だけのことはある)
盧「今から貴様を断罪してやる」

福「やはり少し多いではありませんか、盧俊義様!」
慶(同じ指摘すんなや)
燕(それどころじゃないだろう)
盧「どうでもいい!」
福「!」
盧「今からお前を疲弊し尽くすほど干からびさせて、贅肉が干し肉にもならぬほどキツい仕事を与えるから覚悟しろ」
福「…同じレベルではありませんか、盧俊義様?」

盧俊義…その後気を抜いたら案の定すぐに戻った。
燕青…やはり蔡福のブログには容易くアクセス出来んな…
蔡慶…Webの水面下で一体何してやがるんだ、兄貴は?

蔡福…干し肉にもならないほど性も根も尽き果てたが、その憂さ晴らしをアップした日のPV数は大宋国をも震え上がらせるほどだったという。

練兵場 

練兵場…場所取りの陣取り合戦も調練の一環。

人物
徐寧(じょねい)…騎乗の槍は林冲にも並ぶほどの名手だが、賽唐猊のノイズは馬も嫌がる。

11.
李逵「!」
焦挺「それ!」
武松(梁山泊に行く度に、焦挺と相撲をとりたがるな)
李「もう一丁だ!焦挺!」
焦「甘い!」
李「くそっ!」
焦「李逵の攻めは正直だからな」
武「焦挺」
焦「武松殿?」
武「俺とやろう」
李「珍しいな、兄貴」
焦「…武松殿の胸を借ります」
武「俺も本気でいくぞ、焦挺」

焦「!」
武「!」
李(兄貴と力勝負で負けてねえ)
焦「…」
武「…」
宋万「おや?」
杜遷「珍しい取り組みだな」
李「よう、宋万、杜遷」
焦「!!」
武「!?」
李「兄貴が!」
武「…今の技はなんだ、焦挺?」
焦「分かりません…」
宋「夢中だったのか」
杜「武松を転がすとは…」
李「もう一丁!」

李「参った!」
武「…」
焦「ありがとうございました、武松殿」
武「焦挺の奥義か」
宋「俺にも教えてくれ」
杜「それにしても強くなった、焦挺」
焦「…もう一度できるかな」
武「きっとできるさ」
焦「俺だけの技にします」
宋「なぜだ!」
焦「没面目ですから」
杜「なるほどな」
武「お前らしい」

焦挺…李逵と話してるとなんだが楽しいんですよね。
李逵…次は板斧を教えてやるよ。
武松…拳の使い方を教えた。
宋万…体術も面白いな。
杜遷…歳は重ねたが、地道な鍛錬を怠らない将校の鑑。

朱貴・朱富のお店

朱貴・朱富のお店…お通しを魚肉饅頭にしてみたら、酒以外の注文がほとんど来なくなった。

人物
朱貴(しゅき)…王倫が独りでクダ巻いてるのに比べたら、連中が楽しそうに大暴れしてることくらい、なんてことないよ。
朱富(しゅふう)…もっとも、器物破損や食べ残し、モラル違反は断じて許しませんけどね。

12.
鮑旭「たまに梁山泊に来ると、心が安らぐな」
馬麟「…そうだろうな」
鮑「おや?」
馬「どうした、鮑旭?」
鮑「朱富の店の方で、喧騒が…」
馬「相変わらず耳が良い」
鮑「今から行くからな」
馬「何が起きているんだ?」
鮑「少し待て…」
馬「…」
鮑「!?」
馬「どうした?」
鮑「見事な音がした」

馬「見事な音?」
鮑「我ら風流喪叫仙に足りぬ、最後の一欠片かもしれん」
馬「急いで行くぞ」

鮑「これは…」
馬「…」

林冲「…」
史進「…」

扈三娘「これは、馬麟殿、鮑旭殿」
鮑「何事ですか、扈三娘殿?」
扈「私の身繕いを覗いた遊撃隊の兵の落とし前をつける所ですよ」
馬(真顔の扈三娘だ)

林「棒打ち尻に二十三回!」
史「…」

鮑「二十三?」
扈「私が腕を折った兵の数です」
馬「関節技の名手だ。扈三娘は」

林「一!」
史「!」

鮑「!?」
馬「鮑旭?」
鮑「今の音だ…」
馬「.…嘘だろう?」

林「二!」
史「!」

鮑「この音がほしい…」
馬「諦めろ、鮑旭」
扈「何の話ですか?」

鮑旭…あの音は生半可な鼓では出せない音なのだぞ、馬麟。
馬麟…落ち着け、鮑旭。

扈三娘…体術は燕青殿に習いました。

林冲…百八!
史進…多すぎる!林冲殿!多すぎる!

朱富…今宵の営業妨害の損失被害書を、聚義庁相談窓口に即日で提出していた。

間者

間者…各々の仕事の流儀が違いすぎて、一緒に仕事するのはぶっちゃけ無理。

人物
時遷(じせん)…自分一人で黙々と仕事するのが流儀。
石勇(せきゆう)…組織で連携して仕事するのが流儀。
侯健(こうけん)…必要とあらば相手に媚びることすら厭わず仕事をするのが流儀。
孫新(そんしん)…コミュ力で相手の懐に入り、仕事をこなすのが流儀。
顧大嫂(こだいそう)…料理と人殺しが特技。
張青(ちょうせい)…時間がかかっても、目立たぬよう黙って周囲を観察し続けて仕事をするのが流儀。
孫二娘(そんじじょう)…自分を怒らせた相手にあえて愛想良くして、こっぴどく痛い目に合わせるのが流儀。

13.
張青「…」
孫新「…」
孫二娘「一体どういう趣旨なんだい、顧大嫂」
顧大嫂「夫婦者の間諜が、顔合わせするのも悪くないだろう?」
娘「あんたら仲は良さそうだねえ」
顧「当たり前さ。あんた、私にぞっこんだもんね?」
新「お前もな」
顧「何を言ってんだい!」
新「!?」
張(俺が食らったら死ぬな)

顧「おたくはどうなんだ、孫二娘」
娘「おい、あんた」
張「この有様だ」
顧「悪くないね」
張「どうだか」
娘「とんだ穀潰しの菜園子さ」
張「こちとら、お前の物騒な噂で商売あがったりだ」
顧「噂?」
娘「言ったら殺すからね、あんた」
顧「私の好きなことは料理と人殺しだよ!」
張「声がでけえ」

新「痛え…」
顧「何を突っ伏してたんだい、あんた」
新「お前の張り手が効いてんだよ」
顧「撫でただけだよ」
張「お前にあのクソ力はねえが」
娘「何が言いたいんだい」
張「同じくらいのもんは持ってるよな」
娘「潰されたいかい?」
張「あいにくもう効かなくなっちまったよ」
娘「後でひどいよ」

孫新…顧大嫂の照れ隠しの打撃を喰らいすぎたからか、兄の鞭は意外と痛くなかった。
顧大嫂…孫立には武芸で負けるけど、腕相撲なら多分いける。
張青…いつこいつと夫婦になったんだっけな…
孫二娘…商家で一人ベソかいてたのを面倒見てやった恩を忘れたのかい?

断金亭

断金亭…聚義庁の会議にて、遊撃隊の参加を認めるか否かで激論になった。

14.
晁蓋「冬の盛りの隠し芸大会を行う」
宋江「事と次第によっては、屋外追放するからな」
呉用「一番、遊撃隊将校による…」
宋「…」
呉「大きな下部」

施恩「昔々、お爺さんとお婆さんがおりました」
陳達「!」
施「お爺さんは山で獣を狩りに」
穆春「…」
施「お婆さんは川で魚を釣っておりました」

〜尻〜
施「どんぶらこっこ。どんぶらこっこ。と、大きなお尻が流れてきました」

宋「警告」
晁(あと二回で、屋外追放だ)
呉(羞恥心とは…)

穆「なんとおぞましい…」
施「見るに見かねたお婆さんは、そのお尻を見なかった事にしました。文字通り、水に流したのです」

宋「上手いこと言ったつもりか」

〜〜尻
施「大きなお尻は、みるみる川を下っていきます」
穆「…この急流を下るとは、あの大きなお尻の持ち主は、剛の者に違いない」
施「水連が巧みなお婆さんは、激流をものともせず、大きなお尻の剛の者を、川から引き上げました」
穆「大丈夫か?」
史「ここは?」
穆「東渓村」

晁(私の実家!?)

陳「おう。なんだその小僧は」
穆「この激流を尻だけで下ってきた、バカな小僧だよ」
陳「くだらねえ…」
史「下ってきたと言っただろう、爺!」

宋「警告」
呉(本当にくだらない…)

史「爺」
陳「なんだ、小僧」
史「今、尻と尻が触れたな」
陳「それがどうした?」
史「これが本当の」

宋「退場」

宋江…見なかった事にしよう。
晁蓋…次の演目は?
呉用…本隊将校による組体操です。

史進…何がいけなかったんだ!
陳達…全てだ!
穆春…寒い!兄者!
施恩…宋江様の哀しい目が忘れられない…

少華山

少華山…大暴れしか出来ない頃の某九紋竜がやりたい放題やっていた山。朱武の寿命は10年縮んだだろうと弟分は、かく語る。

15.
史進「曹正のソーセージしたたかチーズが販売取り辞めだと?」
陳達「どっかの山が投稿した下品な動画が大炎上した弊害らしい」
史「官軍の火攻めにでもあったのか」
陳(火種はお前だ)
史「あの逸品が失われるのは惜しい…」
陳「…」
史「俺たちで新商品を作り上げるぞ、陳達」
陳「兄貴に言うなよ」

史「太くて硬めか、細くて小ぶり、どちらが良いと思う?」
陳「食い物の話だよな?」
史「先端の形はどの様な意匠がいいかな」
陳「卑猥でなければなんでもいいと思うぞ」
史「なぜ卑猥にする必要がある?」
陳「…お前のことだから」
史「中からしたたかに放つものは…」
陳「やっぱそうじゃねえか」

史「出来た!」
陳「冷たいな」
史「細長い筒に、氷菓を詰めた菓子だ」
陳「特徴は?」
史「見て驚け」
陳「…なぜ上下にしごくのだ」
史「お楽しみだ」
朱武「史進、陳達、調練の時間が」
陳「兄貴!」
史「朱武!」
朱「」
史「…」
陳「少華山のしたたかバニラか…」
楊春「史進。懲罰室へ」
史「」

史進…九つの逆鱗全てにお灸を据えられて悶絶。
朱武…ベタベタしすぎだろう。
陳達…凄い粘着力だ。
楊春…なにか生臭いな、兄者。

黄門山

黄門山…欧鵬の近所の山の名前をつけて集まった有志。なんとなく居心地のいい集まりだとか。

16.
欧鵬「なんだかんだで毎度盛況だな、黄門山の会」
陶宗旺「何回目だ、蔣敬?」
蔣敬「41回目だ」
馬麟「よくやったもんだ」
欧「それでいて、皆が親しくなったのかといえば…」
陶「これが俺たちの程よい距離感ではないか?」
蔣「確かに」
馬「この面子も、案外悪くないな」
欧「そうだろう、馬麟?」

陶「馬麟は俺より前に宋江様と会っていたのか?」
欧「こんな話がある」
蔣「なんだ、欧鵬」
馬「!」
欧「武松と李逵の兄貴を相手に、馬麟が大立ち回りした後の話だ」
馬「離せ、陶宗旺!」
陶「話せ、欧鵬兄貴!」
欧「宋江様の前で、ここで死んでみせると啖呵を切った馬麟」
蔣「剣でも持ってたのか?」

欧「いや、息を止めたのだ」
蔣「…それは?」
馬「!」
陶「無駄な抵抗はやめろ!」
欧「どれほどの時が経ったか…」
蔣「そんなに止めたのか?」
馬「…」
陶「…」
欧「足をばたつかせて死にかけるほどな」
蔣「止めすぎだ…」
欧「俺より馬鹿だと、李逵兄貴に笑われていたよ」
馬「」
陶「馬麟?」

欧鵬…次回は鮑旭をゲストにしようか。
蔣敬…拗ねて帰ってしまったが、鉄笛を忘れてるぞ。
馬麟…拗ねた勢いで飛び出した時に渡した勘定が少なかったんじゃないかと不安になってきた。
陶宗旺…絞め殺したんじゃないかと心配したよ…

子午山

子午山…初めて死域に入った門下生には、王母様がご馳走を作ってくれる。

人物
王母(おうぼ)…そろそろ息子の死域を解く技を伝授する相手を見つけなければ…
王進(おうしん)…死域じゃない時間を計算してたら死域。

17.
張平「今日はお互いが入れ替わったという設定で、一日を過ごしましょう」
楊令「つまり、私がお前で、お前が私ということだな」
張「そういうことです」
楊「いいだろう」
張「楊令!」
楊「!」
張「私に饅頭を持って来い」
楊「張平。言葉使いが」
張「今の私は楊令殿の立場だ、楊令」
楊「おのれ」

張「いかん。着物が後前だ」
楊「私はそんな事したかな」
張「いかん。楊令の好物を多く食べてしまったが、兄だから仕方がない」
楊「おのれ!」
張「兄に向かって、その言葉遣いはどういう事だ、楊令!」
楊「…兄上、そろそろ王進先生との稽古の支度をしなければ」
張「ならば棒を持って来い、楊令」

張「何をしている、楊令。王進先生が、お待ちだぞ」
楊「今日は、張平殿が私で、私が張平の立場ですよね?」
張「!」
楊「王進先生。今日は張平殿を私とみなした稽古をお願いいたします」
張「!?」
楊「私は、気を絶った時にかける水を、嫌というほど汲んできますので」
張「…」
楊「始め!」
張「」

楊令…自分の稽古前の水汲みでだいぶ消耗した。
張平…気絶してる時に、あの世の張礼お爺ちゃんが、アドバイスしてくれた気がした。

王進…張平を楊令だと思ったまま死域に入り、しばらくそのモードで稽古をしてしまった。

青蓮寺

青蓮寺…入庁プロセスは、実は不透明。知らず知らずの間に取り込まれて、気がついたらえらい仕事に一枚噛んでて引き返せなくなることもザラ。

人物
袁明(えんめい)…若手が入ってこないな…
李富(りふ)…彼がいなくなったら業務の4割は滞るであろう、青蓮寺不動の大黒柱。
聞煥章(ぶんかんしょう)…彼がいなくなったら清々するだろうけど、いないといないで業務効率が悪くなるから痛し痒し。
洪清(こうせい)…開封府の子供たちに体術を教える時の顔は、信じられないほど穏やか。
呂牛(りょぎゅう)…本当に自分の息子なのかと思うほど、くそ真面目な息子がいて、違う意味で手を焼いている。

18.
袁明「…」
洪清「…」

講談師「北斗の党の英雄七人!十万貫を知略で強奪!」
子「すごいや!」
子「あっぱれ!梁山泊!」
子「俺も梁山泊に行ってみたいなあ」
子「俺も!」
子「私も!」

袁「…」
洪「…」
袁「洪清」
洪「はい」
袁「由々しいな」
洪「確かに」
袁「提案がある、洪清」
洪「…」

聞煥章「なぜ私が?」
呂牛「逃げ遅れたお前が悪い」
趙安「我らフレッシュマンズも全面協力するから良いではないか」
聞「…しかし、これは」
趙「観念しろ、聞煥章」
呂「さっさと行け」

聞「良い子の皆。こんにちは!」

子(なんだこいつ)
子(生理的に嫌)

呂(青蓮寺一の悪い子がなに言ってやがる)

聞「青蓮寺と一緒の時間だよ!」

子(帰りたい、母上)
子(義足の音がキモいわ)

聞「青蓮寺の歌を歌おう!」

呂(絶対録音しておけよ)

聞「フレッシュマンズ!」
趙「フレッシュ!」

子(臭っ)
子(なぜここにいるのかな…)

聞「体術のお爺さん!」
洪「…」

子(怖っ)
子(尋常じゃない気を感じるわ)

袁明…子供向け青蓮寺入庁番組総監督。
洪清…体術のお爺さん。収録中に見所のある子どもを見つけた。
聞煥章…歌のお兄さん。会議の議題に上がった瞬間、逃げ遅れたがために。
呂牛…演出。梁山泊を巧みにディスる手法に定評あり。
趙安…フレッシュな着ぐるみ。フレッシュと言いつつ汗臭い臭気。

禁軍

禁軍…俺のスマホの「ち」の予測変換も調練になっちまったよ…

人物
童貫(どうかん)…調練の鬼。いや、調練が息して歩いてるのだ。
趙安(ちょうあん)…フレッシュに手足の生えた禁軍将軍。色々付加しすぎた設定を消化できずに困っている。作者が。

19.
童貫「調練と言わなければならない調練を行う」
鄷美「その調練の真意は?」
童「兵の頭と身体と心に調練を叩き込む調練だ、鄷美」
畢勝「調練と言わなかった者は?」
童「死ぬまで忘れられぬ調練を課す」
鄷「調練と言わなければならない調練」
童「始め」
鄷(あれ?)
畢(今のはアウトではないのか?)

李明「遠駆けの調練四刻!」
馬万里「その後歩兵は武芸の調練!」
韓天麟「騎兵は動きの調練を徹底するぞ!」

童「三人とも欠かさずに言っているな…」
鄷(今も言ってないぞ)
畢(言葉尻をとらえるようだが、どうも釈然とせん)
童「陳翥、王義、段鵬挙の検分に行くぞ、鄷美、畢勝」
鄷「…」
畢「…」

陳翥「判断力を鍛える調練だ、周信!」
段鵬挙「調練に迷いは禁物!」
王義「思いついた事をまず試すのが調練だ、周信!」
周信「もう一度、調練をお願いします!」

童「さすが我が軍」
鄷「元帥」
畢「大変申し上げにくいのですが」
童「今言わなかったな」
鄷「それは…」
畢「元帥も…」
童「…」

童貫…死ぬまで忘れられぬ調練のメニュー表を二人に渡した時の顔は、死ぬまで忘れられぬだろうな。
鄷美…死ぬまで忘れられぬ調練は、たとえ死んでも、もう二度とやりたくない。
畢勝…元帥に一矢報いたかもしれないが、あまりにも割にあわんぞ。

李明…なんだあの元帥たちのやられている調練は…
馬万里…苛烈な調練にもほどがある。
韓天麟…調練もやり過ぎると毒だぞ。
陳翥…調練と言わなかったばかりに…
段鵬挙…語尾が調練になるな。
王義…まさか元帥が調練と言わなかったのか?
周信…戦の調練が厳しいのはよいのですが、今日のは意味が…

楊令伝

遊撃隊

遊撃隊…シシハラ被害者の会は敗れたものの、「シシハラ」という言葉は生きていたようで…

人物
班光(はんこう)…史進の言葉に死線をさまよっている最中。
鄭応(ていおう)…兵どもがまともに調練しようとしねえ…
穆凌(ぼくりょう)…シシハラ被害者の会のポスターを見て笑っているところを史進に見つかった。

20.
史進「たるんでいるぞ!貴様ら!」
兵「シシハラではありませんか、史進殿!」
史「…」

史「棒の振りが弱い!」
兵「どっちの棒の事ですか!?」
兵「シシハラです!」
史「…」

史「班光め…」
鄭応「どうされました?」
史「シシハラに悩んでいるのだ」
鄭「…史進殿は我らを悩ませる側ですよね?」

史「班光の小僧は懲らしめたが、奴は最期に一矢報いた」
鄭「それは?」
史「奴はシシハラという言葉を生み出した」
鄭「はあ」
史「その結果、今まで問題視されなかった俺のやることなす事が、全てシシハラ扱いされるようになってしまったのだ」
鄭(今まで問題視されなかった方が、アレだと思うがな)

史「そしたら今月は、シシハラ撲滅月間とされたもんだ」
鄭(酷えポスターだ)
史「文治省のどこに相談すれば良いのだ…」
鄭(シシハラ諸悪の根源が、シシハラ相談窓口に行ったらどんな顔されるんだろう)
史「ポスターも引きちぎりたい所だが、来月まで掲示せんといかんのが口惜しい」
鄭「律儀ですね」

史進…シシハラ被害者の会による被害者の会を発足させるのはどうだろう?
鄭応…いたちごっこってやつになりませんか?

班光…史進による最後の一言で大ダメージを受けたが、シシハラ撲滅月間ポスターの素案を杜興と一緒に予め作成しておいてよかった…

21.
班光「やっと史進殿の悪夢から覚めた」
杜興「わしもだ、班光」
班「私たちは、遊撃隊に希望の光を見出す魁になれたでしょうか」
杜「これからだ、班光」
班「!?」
杜「班光?」
班「なんだ、この有り様は…」
杜「!?」

兵「厳しい調練などやってられんな」
兵「我らは充分強い」
兵「調練もいらん」

班「お前たち、調練はどうした!」
兵「おお!班光殿!」
兵「復帰おめでとうございます!」
班「そんな事はどうでもいい!調練はどうしたのかと聞いている!」
兵「厳しい調練など、シシハラではありませんか」
兵「我らはシシハラに真っ向から異を唱えた、班光殿と杜興殿に敬意を評しているのです」

班「なんという事だ」
杜「シシハラとは下品な史進の振る舞いに迷惑を被った者の救済で、調練をサボる口実ではないぞ、屑ども」
兵「今のは聞き捨てなりませんな、杜興殿!」
兵「シシハラ反対運動の急先鋒、班光殿と杜興殿がシシハラとは一体どういうわけですか!」
班「何を言っている、お前たち!」

班光…私たちのこれまでの戦いの本質が忘れられているなんて…
杜興…これは大変なことになったぞ、班光…

22.
班光「楊令殿」
杜興「お話ししたいことが…」
楊令「どうした、二人とも」
班「実は、我らの掲げたシシハラ被害者の会が…」
杜「遊撃隊の兵に、予期せぬ事態を招いてしまったのだ」
楊「聴こう」

楊「調練すらシシハラだと?」
班「私たちの言葉で都合の良い解釈をし始めたのです」
杜「屑ですな」

楊「どう思う、呉用、張平?」
呉用「次の戦の死に兵にしよう」
班「」
杜「…もう少し穏便に」
張平「黒騎兵と青騎兵の調練に加えれば、シシハラではなくなるのでは?」
班「なるほど…」
杜「史進直属の命令でなければ、シシハラではなくなりますな」
楊「だが、遊撃隊は、史進あってこそだろう?」

杜「そうですな…」
班「しかし、私たちは、史進殿の破廉恥を止めるため決起したのに、なぜこのような誤解を招いたのでしょうか?」
呉「調練をしたくないだけさ」
張「堕落する口実を与えたら、普通そうなります」
楊「だが本来は、俺たちに相談するよりも先にすることがあるよな」
班「…」
杜「…」

・班光…ここは肚を据えるところですな、杜興殿。
・杜興…この落とし前はともにつけるぞ、班光。

・楊令…これも言葉の持つ力だな。
・呉用…戦況次第では、死に兵にするのも有効だからな。
・張平…最悪そうなった時の状況は考えておきましょうか。

子午山

子午山…子午山ガチ勢とにわか勢の敷居は高すぎるようだ。

人物
花飛麟(かひりん)…子午山の矢の的にしていた人形は史進だったと、初めて出会った帰り道に気づいた。
秦容(しんよう)…やたら絡んでくる近所の女の子が煩わしい。
王清(おうせい)…王英と白寿の息子。笛を作るための竹を切っていたら女の子が出てくる夢を見た。
蔡豹(さいひょう)…蔡慶の息子。一日に10回は蔡福を脳内で嬲り殺しにしている。

23.
馬麟「…」
楊令「…」
張平「…」
鮑旭「…」
史進「進!」
武松「早いな、史進」
鮑「杯の照りを確かめる王進先生の死域は、三個目からが分水嶺だ」
史「しまった…」
花飛麟(なんの遊びだ、これは)
馬「杯の底を見る時間が長くなりはじめたら危ういよな」
楊「眼の色が変わるからな」
張「次は?」

武「焼物を作る王進先生の死域分水嶺」
鮑「子午山陶芸部の長の出番か」
武「…」
張(土を厳選するところから…)
楊(この時ばかりは、斬り落としたはずの片手が見える…)
武「…」
馬(こね始めた…)
張(そろそろ死域に…)
武「…」
楊(水差しの置いてあった棚まで見える…)
鮑(武松の所作が芸術の域だ)

鮑「畑を耕す王進先生の死域分水嶺!」
楊「負けられん」
史「畑は全員の得意分野だからな」
馬「…」
張「…」
花(適当にしてた…)
鮑「…」
楊(農具を選ぶところからか)
張(季節は秋だな…)
花(そこまで分かるのか?)
鮑「…」
馬「進!」
史「馬鹿な!?」
馬「袖をめくる所で既に死域だ」
鮑「見事」

楊令…畑を耕す王進の鍬の使い方について、鮑旭とディスカッションした。
張平…王母さまの一言ネタに定評あり。
鮑旭…最古参だけあって、子午山ネタの審美眼はピカイチ。
武松…開封府に行くと、たまに自分の器がすごい高値で売られてることがある。
史進…稽古ネタが得意。
馬麟…日常ネタが得意。

花飛麟…子午山ネタが何かないか、秦容に手紙を出して相談に乗ってもらっている。

24.
鮑旭「壁にぶつかったらいつでも立ち返る事ができる基本を持つように習いました」
武松「政の専門知識ばかりを追って基本を怠り、目の前の利を追い求め、遠くにある高い理想を蔑ろにしてはならぬと教わった」
史進「戦人とは、高い技を持ち、常に己の状態を保つ事、戦の変化への対応力を持つ事を学んだ」

馬麟「立合いや戦は、不思議の勝ちはあるが、不思議の負けは無い、と言っていたな」
楊令「不器用は遠回りではなく、自分だけの貴重な経験と考えよと励まされたな」
張平「失敗とかいて、せいちょうと読めとおっしゃっていました」
花飛麟「戦の時は、事前、実戦、反省をせよと習いました」

秦容「生きてから死ぬまでに、生計、身計、家計、老計、死計を考えよと述べられます」
王清「私にとって、私らしさとは何かを必死に追い求めて苦悩せよと言われました」
蔡豹「成功は目的ではなく結果であるという言葉が、心に残っています」

偉大なる師匠に乾杯!

金国

金国…やっとこさ出来上がった、女真族の国。その代償は、帝になってヘトヘトになった阿骨打。

人物
阿骨打(あぐだ)…かつての溌剌とした軍指揮官も、帝になって心身を損ない…
唐昇(とうしょう)…梁山泊に片足突っ込んでた、元北京の将軍。能力のアベレージは高いのに、いかんせん煮え切らない。
許貫忠(きょかんちゅう)…童貫の軍師だったが、諸々合って今は唐昇の軍師。煮え切らなさすぎる唐昇にイライラして、狷介になりつつある。
蕭珪材(しょうけいざい)…遼の最強将軍が唐昇の招きに応じてやってきた。完璧超人と言っても差し支えないが、控えめすぎるところも。

25.
蕭珪材「…」

唐昇(相変わらず一部の隙もないな、蕭珪材殿)
許貫忠(同じ人間なのに、ここまで非の打ち所がないと自分が恥ずかしくなる)
蔡福(憎まれ口叩く埃一つない見事な男だ)

蕭「…」

唐(しかし彼ほどの男が)
許(なぜこの後の軍人会議の卓と席の準備を?)
蔡(文官にやらせればいい仕事なのにな)

唐「蕭珪材殿」
蕭「これは、唐昇殿、許貫忠殿、蔡福殿」
許「貴方ほどの軍人が、何をされているので?」
蕭「次の会議の準備ですよ、許貫忠殿」
蔡「そんなもの、下働きの文官にでも任せれば良いのに…」
蕭「私は新参者ですからね」
許「しかし、蕭珪材殿」
蕭「何か?」
許「見事な卓の配置ですな」

蕭「当然ですよ」
蔡「確かにこの配置は」
唐「私が書記を務める位置は、地図と出席者の顔が実に見やすい」
蕭「議事録の様式です」
唐「なんと…」
蔡「どうせ寝るであろう、斡離不は一番遠い席か」
蕭「歯を磨く枝も用意しています」
許「蕭珪材殿」
蕭「はい」
許「貴方の席は、どこに?」
蕭「!」

唐昇…なんとなく、あなたらしいですな。
許貫忠…微笑ましいな。
蔡福…しかし、やらなくていい仕事までやってしまう性分は心配だ。
蕭珪材…遼からやって来た、完璧最強将軍。ただ、金にやってきた経緯があるが故に、万事控えめ過ぎるところがネックになるかも。

二仙山

二仙山…生死の境目にあり、仙人様が住んでいると噂の山。近隣の村々では、爺だか婆だか分からん年寄をよく見かけるらしい。

人物
・羅真人(らしんじん)…公孫勝の師匠。仙人らしいが口汚い。

26.
羅真人「二仙山立合場へようこそ」
王英「…」
花飛麟「…」
聞煥章「…」
羅「ここは、某御大小説の露骨なネタバレにならぬギリギリの範疇で、やりたい放題やって良い場である」
王「…」
羅「貴様らは、私の独断と偏見で恣意的かつ強制的に集められた精鋭だ」
花「…」
羅「始め!」
聞「…何を?」

王「共通点が分からん」
花「そもそも誰なんですか?」
聞「青蓮寺の聞煥章とは、私のことだ」
王「お前があの変態か」
聞「貴様は私が生涯一番愛した女を妻にした幸せを、厠に捨てた助平ではないか」
王「俺を知っているのか!?」
聞「彼女にチクったのは、私たちさ」
王「殺す」
花「待ってください」

王「お前は誰だ、イケメン」
花「…花栄の息子です」
聞「鼻につくイケメンだな、お前は」
花「射殺するぞ、変態」
聞「なんだ、小僧」
花「一体その女性は誰のことだ?」
王「とてもじゃないが、俺の口からは言えん」
聞「私も恥ずかしくて口にできない」
花「私の愛した女性は…」
王「!?」
聞「!?」

王英…義足で潰せ!聞煥章!
聞煥章…お前の下腹部を義足ですり潰してやる!
花飛麟…チビともやしなのに、どこからこんなクソ力が!

羅真人…またやってみるか…

元ネタ

水滸伝

楊令伝

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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!