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閉まるコンビニ

 パスタ屋従業員時代はほとんどずっと、非人道的な労働時間だったように記憶しているけれど、よくよく考えてみるとそういう時期もあったというだけで、町田に住んでいた頃などは、存外落ち着いてのんびり暮らしたように思う。

 町田には二年住んだ。最初の一年は成瀬で、後の一年は旭町だった。どちらも会社の借上寮で、旭町では隣にコンビニがあった。
 コンビニと云っても、その店は19時に閉店するから、仕事から帰る時間にはとうに閉まっている。だからそこを利用する機会はあんまりなかった。
 一度、休みの日に昼飯を買いに行って、初めて店内に入った。店主らしきおじさんが「いらっしゃい」と言った。店員は他にいない。
 普段使い慣れているコンビニとはどうも品揃えが違う。少ない。その中から、親子丼弁当を買って帰ったら、あんまり美味くなくて残念に思った。

 ある時、仕事の後でバイトが数人遊びに来た。翌日はシフトが休みだったから、朝までプレステで遊ぶことにしていたのである。
「これが夜に閉まるコンビニだよ」と教えてやったが、一人が「そうですか、珍しいですね」と云ったきり、誰も興味を示さない。
 それから朝まで遊んで、みな帰った。
 自分は隣のコンビニでパンを買って来て、食いながらあくびを三回した。

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