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カレーと横浜と悪意

 大学時代、音楽仲間の辻が随分格好いい曲を作ってきた。

「君、何だかボン・ジョヴィみたいで格好いいじゃぁないか」
「そうだろう。そういうイメージにするつもりで、服部緑地でカップルがたくさんいるのを眺めながら作ったのだよ」
 辻の中では『ボン・ジョヴィ=カップル』となっているらしい。
「それはご苦労だったね。しかし君のような長髪メタル野郎がいきなりギターを持って側に来たのなら、きっと気持ち悪かったろうね」
「あぁ、すぐにみんな逃げて行ったよ」
 他人の雰囲気を壊すという行為が、何だか面白そうだと思った。

 社会に出てからもそのことがずっと頭にあって、休みの日に何度か山下公園のベンチでコンビニカレーを食べたことがある。
 デート中のカップルがいれば隣のベンチで食べるつもりだったのだけれど、いくら山下公園でも平日昼間ではそうそう人もいない——当時自分は平日休みだった——。犬の散歩をしている人と、太極拳をやっている人はいたけれど、どうも趣旨が違う。
 結局、一人でカレーを食っているだけで何も面白くないから、今度は舞台を港の見える丘公園に変更しようと思ったら、こちらは近くにコンビニがない。わざわざ買って持って行くのもバカバカしいから、ついにやめてしまった。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。