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道具に拘る

 いつも仕事で使っているシャープペンシルが壊れた。最初に一度ノックをしたら、後は書き続けるだけで芯が繰り出されるというギミックのついたやつである。
 文具愛好家筋では随分酷評されていたが、コツを掴むと大変便利で、大いに気に入っていたものだから壊れると気分が悪い。
 とりあえずメーカーに修理依頼のメールを送ったら、現物を送るよう云ってきた。それで郵送しておいた。

 ツールに拘る癖が昔からある。
 パスタ屋時代には太さと長さが気に入った菜箸があって、ハンズへ行って私費で買っていた。
 派遣屋時代には別段何かに拘った覚えもないが、その代わり仕事も随分やる気がなかった。
 あの時分にはリソースをビリヤードに全振りしていて、キュー(撞き棒)には大いに拘った。少し重めで、グリップが糸巻きじゃないやつを好んで使っていた。
 ある時、有名な職人の一品物を安く譲り受けた。使ってみたら随分軽い。中身が詰まっていないような、ラップの芯で撞いているようなスカスカした感じがする。
 何だか好みではないけれど、有名な職人のやつだからと無理に使っていたらじきに慣れた。
 譲ってくれたのは老人に壺を売り付けるような胡散臭い人物だったから、ことによると偽物だったかも知れない。
 そのキューはしばらく使った後で、買った値にいくらか乗せて他へ売った。

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