見出し画像

常連とイチゲン

 大学時代、学校の近くに行きつけの喫茶店が3軒あった。その内2軒――ギャルソンとTARO――については先日書いたから、今回は□□について書いてみる。
 この店だけ伏せ字にするのは、もしも関係者が読んだ場合にきっといい気がしない内容だからである。

 □□のカレーは不味かった。何しろ苦かった。きっと焦がしたのだろうと最初は思ったけれど、いつ食っても同様に苦い。事によるとこれがこの店の味なのかもしれないと思ったから、以後ここでカレーを食うのは止しておいた。

 □□の店主は女性で、客からもスタッフからもママさんと呼ばれていた。
 この人は大いにやり手で、すぐに客の顔を覚えて常連にしてしまう。また、バイトの女子を厳選してきれいどころを揃えていたから、――カレーが不味くても――主に男子の常連客でいつも繁盛していた。
 自分もそれで通っていたのだけれど、こちらが話さないものだからママさん以外のスタッフには一向に覚えてもらえなかった。
 先輩のI氏がやはりここの常連で、バイト女子の一人に学内で出会した際、「昨日、店に百裕と行ったのだよ」と話したら「百裕さんて、誰ですか?」と言われた。それで「僕と同様に髪が長い奴だよ」と説明したのだけれど、「んー、ごめんなさい、わかりません」と謝られたと云っていた。そんなことは黙っておけばいいのに、わざわざ教えてくれるから何だかどんよりしたのを覚えている。
 そうして結局、常連なのかイチゲンなのか判然としないポジションのままで卒業してしまった。

 他に「準行きつけ」ぐらいの位置付けで、パインビレッジという店もあった。
 この店のカレーは100%レトルトの味で、いかにもやる気がなかった。
 パインビレッジは自分の在学中にオープンして、在学中に潰れた。まぁ、あれでは仕方がないだろうと思った。


よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。