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人の縁(2024/01/16)

 学生時代の日記帳を読み返していたら、33年前の今日は木寺と友達になった日だとわかった。それで当人にLINEで教えてやった。
「日記を書いてたのか」
「書いてたさ。今ではなかなかの猛毒文書に成り果てたよ」
「まぁ、それはそういうものだろう」
「あんまり毒性が強いものだから、取捨しながらデジタルに転記して原本は神社でお焚き上げしてもらおうと思っているのさ」
「ブツとしても持っておいたらいいだろう? そのうち毒性も薄れるさ」
「俺が生きてるうちには薄れそうにないぜ?」
 何だか、チェルノブイリの像の足が頭に浮かんだ。

 19の時、大学の音楽サークルに春休みの合宿から合流することになった。
 途中加入でまだほとんど誰とも面識がないのに、いきなり合宿は心細い。それでサークルメンバーで学科も同じだった彼に事前に声をかけておいたのが、33年前の今日だった。
 後になって木寺は、「百はあの時、『君、P研だよね?』って、なぜか標準語で言ってきた」と言った。

 合宿から戻り、ある時自分の下宿で木寺と飲んでいたら、段々ビールがぬるくなってきた。これではどうも美味くない。
 自分の住まいは古い学生寮だったから、部屋に冷蔵庫などはない。それで近くの辻本の下宿へ「冷蔵庫を貸してくれ」と押しかけたら、辻本はこれから出かけるところだからダメだと云う。
 お前はいなくてもいいから冷蔵庫だけ貸してくれと云うと、彼は部屋の鍵を締めて駅まで走って逃げた。改札の向こうから「こっこまでおいで〜、れろれろれ〜」と言った。
 仕方がないから氷を買って帰り、ビールはそれで冷やした。そうして「辻本はダメだな」と言い合った。

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