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【育児】舌を出す娘

表現という言葉は「表に現れる」と書く。
表情や言葉などを通じて、「表」側に感情や考えが「現」れることが、表現の根本である。

ということは、前もって表に出ていない、表現されていない何かが内側にある、ということでもある。
表に現れているもの以上の「表現」が自己内部に広がっているということだ。
誰しも「ああいえばよかった…」などと思い悩んだ経験があろうが、それは「表現できなかったもの」そのものなのである。

最近、娘が笑顔で舌を出すようになった。ロックバンドの「KISS」よろしく豪快な出しっぷりで、時に頬を舌で舐めてくることもある。思った以上の冷たさに文字通りヒヤリとすることもあるわけだが、娘は自分には舌があることを知り、それをべえと口から出すという表現をいつの間にか学んでいたのである。

表現の最たるものの一つが言葉である。何か話し始めたときからあーだこーだと騒いでいたのだが、いつからか完全に意思を持ってかつスムーズに「ママ」というようになった。
もっとも、「パパ」はまだマスターしていないようで、私のほうを見て「マンマ」ということもあれば「パ」とか「ドゥア」「ナ」などとだけいうこともある。まあそれはそれでOKなのだが、パという破裂音二連発というのは難易度が高いことは明らかである。

当然ながら、娘にもまた表には出していないけれどもまだ見ぬ表情や言葉が内側には宿っている。それが表に出る瞬間を見たり、または自ら表現できたときの喜びはひとしおである。
未だかつてはっきりと娘から聞いたことのない「パパ」のしらべは、娘の頭のなかにある「表現」の宇宙を時にこだましているのかもしれないなどと思いつつ、今日も娘に自らを指差し「パパ」と話しかけてみるのである。

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