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2020年の「評価セッション」~なぜ評価が成功しないのか~

年末になると、従業員マネジメントの総本山イベントである「評価セッション」を行う在米日系企業が多くありますが、今年は期中にリモートワークに移行した事もあるため「どの様に評価をしたら良いか分からない」といった声を頻繁に耳にします。ただし、評価セッションが上手く行っていないと感じられている企業の中では、新型コロナウイルスやリモートワークの影響では無く、評価の根本的な部分に問題が潜んでいるという事も多々あるため、今回その点についてまとめています。

在米日系企業が抱える問題

2020年の評価セッションに関して、在米日系企業の皆さまから挙がって来るお悩みのほとんどが、「どの様に行えば良いのか分からない」といった内容ですが、その背景には「従業員が在宅勤務となって目の届かない所にいる」といった懸念がある様です。そのお悩みを解決するにあたってポイントとなるのが、「逆に目が届く所にいる時は、どういった所を見て評価をしていたのか」といった部分になります。

シンプルに考えると、従業員に対して求めるのは「役割をしっかりと果たす」という事なので、「目が届かないと評価できない」というのは、任せている役割やゴールが明確でない、あるいは進捗や達成度を測る術が無いという状態だったとも考えられます。つまり、以前は目の前で忙しく作業をしている従業員を見て安心していた所、リモートワーク開始以降はそれが目に入らないので不安だったというだけであり、元々評価の仕組みが適切では無かった、あるいはリモートワークに移行する中で職務内容やゴールが変わった人がいるものの、それを改めてすり合わせていなかっただけという可能性もあります。

そもそも評価とは何なのか

問題点や解決策を考察する前に、「評価をなぜ行うのか」という点を今一度整理する必要がありますが、評価は「この時期にやるものだから」という事で事務作業の一環で行うものなのでしょうか。恐らく、その様な感覚で行ってしまっている企業も多いのかもしれませんが、本質的にはそうでは無いと考えられます。

評価セッションは「各々の役割や進捗の確認」「結果や成果を振り返って労う」「改善点を話し合う」など、ビジネスを前に進めるために行う側面が大きく、アメリカのHRマネジメント協会・SHRM(Society of Human Resources Management)では評価の目的を「フィードバックやカウンセリングを行う」「リワードやその機会を正しく提供する事を促す」「従業員の要望や成長のために必要なモノを見定めて促進させる」としています。また、「評価を行う事によって何が期待できるのか」という事に関しては「建設的なフィードバックによって生産性を改善させる」「研修や能力開発の必要性やその種類を見定める」「期待値を共有する」「コミットメントと共通理解を促進させる」としています。

実際の所、評価を「何かしらのフォームを使って評価点をつける行為」としてしまっている企業も多いのですが、フォームを使って評価点をつけるというのは、生産性の改善・従業員の成長・期待値の共有・コミットメントなどを促進させるための「手段」に過ぎず、目的を整理せずに手段から入ってしまうと、内容の無い行為になってしまうため注意が必要です。そのため、手段が目的になってしまっている所は、早急に評価の根本的な部分を考え直す必要があります。

改善点とそのポイント

私が伺った事のある在米日系企業数百社の中では、評価制度が適切に運用されている所が非常に少ない一方で、大半の企業では「評価フォーム」の様なものが存在しており、年度末に評価面談を行っています。しかし、評価者側と被評評価者側の双方が有意義だと感じていない状況が多々見受けられます。

その原因としては、現在運用している評価制度が「何代も前の社長が作った」「日本で使用しているフォームを転用した」「評価の専門家では無い外部ベンダーが作った」といったケースも挙げられます。しかしながら、現在とはビジネス環境が異なる時期に作成した評価方法がそのまま適用可能であるケースは極めて稀である事や、ビジネス環境が異なる日本の仕組みをアメリカで運用できる可能性も低いため、多くの企業では「手法」と「運用」の部分が問題となっている現状があります。

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