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42%が失敗に終わる駐在員派遣を成功させるための準備

この記事はMUFG BizBuddyに掲載され、全世界の閲覧ランキング1位を獲得した記事となっております。

ビジネス市場がグローバルになって久しい昨今、日本に限らず世界の国々も海外にビジネスチャンスを求め、従業員を「駐在員」という形で海外に送り出しています。海外への赴任期間は様々ですが、KPMGの2021 Global Assignment Policies and Practices Surveyという調査によると、調査対象企業の全てで長期(1-5年)の派遣を行っており、88%が短期(12ヶ月未満)、69%が期間未定/半永久といった期間で駐在員を派遣している様です。

駐在員を海外に派遣する場合は多大なコストがかかり、一説では年間$311,000程度ともされていますが、必ずしも成功する訳では無いどころか、比較的多くの企業が失敗に終わるとされています。その様な背景の中で、今回は海外への駐在員派遣がなぜ失敗してしまうのか、成功させるにはどの様にするべきなのかを考察しています。


1. 失敗に終わる背景

Right Managementが以前行った調査によると、駐在員として海外に派遣されたマネジメントの5人に2人は任務を全うできていないという結果となり、厳密には「42%がFailure」とされています。これは、派遣元の地域に関わらず同様の結果となっている様なのですが、この調査では駐在員を海外に送り出す前にどういった準備を行っているかという部分に着目しており、次の様な結果となっています。

この結果を見ると、調査対象の25%が語学研修を行っているという事ですが、詳細を見ると派遣元の地域によって差があり、北アメリカでは18%に留まる一方で、ヨーロッパ・アフリカ・中東では33%となっています。そして、「何もしていない」と回答した企業は全体の16%となっていますが、こちらも詳細を見ると、北アメリカでは22%となっており、駐在員の海外派遣が失敗に終わる大きな要因の一つとされています。

この調査は日本企業にフォーカスしたものではないため、筆者が見聞きしているレベルで補足させていただくと、赴任前にしっかりとした研修を行っている日本企業は極めて少ない印象があります。在米日系企業の傾向としては、アメリカに派遣される駐在員の数が多い企業では派遣前後の研修を何かしら行っている一方で、駐在員の人数が少ない企業では研修が行われていない所もある他、赴任後のサポート体制が充実していない場合もが多く見受けられます。
 
駐在員の海外派遣が失敗に終わってしまうその他の要因として、「40%もの企業が駐在員の海外派遣を失敗している」という結果を示しているLearnlightの調査を見ると、次の要因が挙げられています。

この結果を見ると、人物選定やその人物を海外に送り出すまでのフローや、派遣先での仕事面・生活面のサポートに加え、帰任後にスムーズに業務復帰するための環境整備という部分に問題があるため、駐在員が海外に赴任している期間だけでなく、海外赴任の前後も含めより良い対応をする必要がありそうです。
 

2. 成功するための秘訣

これまで挙がった様な失敗をしないために何をしたら良いのかと言いますと、まずは「なぜ駐在員を海外に派遣する必要があるのか」という事を明確にする事から始まります。つまりニーズを把握するという事になりますが、例えば、既存拠点の人材需要を満たす、テクノロジーやナレッジを海外の拠点に普及させる、個人の能力を海外駐在の複雑なミッションを通じて向上させる、商品・サービスが顧客・ユーザーの関心を集められるかなどの市場分析をする、などといった事が考えられます。

続いて、適切な人物選定を行う事が重要で、心身の健康面はもちろん、駐在の目的に合致したスキルや経験の有無に加え、異なるビジネス環境に適応する柔軟性や忍耐力の有無もチェックポイントに含まれます。特に注意したい点として、日本で成功したからと言って、その人物が派遣先で必ずしも成功するとは限らないため、派遣先の状況を踏まえた上で駐在する人を慎重に選ぶ事が挙げられます。そして、その選ばれた人物とその家族が海外に赴任するための準備を行い、語学やビジネス文化・生活習慣の違いなどのクロスカルチャー研修などを行う事が肝要です。

その後、赴任先で勤務・生活する中での継続的なサポートや、赴任先での適切な評価を行う事も成功への鍵となりますが、更には帰任に向けた準備も欠かせません。海外の赴任先の働き方から、それまでの日本の働き方に移行する事になる中で、求められるものに加えて働く環境や一緒に働く同僚なども大きく変化するため、この部分も綿密に計画する事が大切です。

3. 駐在経験者から集めるべき情報

また、より良いサポート体制を準備するためには、過去に海外赴任した駐在員から成功/失敗体験などの情報を集める事も対応策の一つとされており、集めるべき内容の例としては次の物が挙げられます。

 ・海外赴任を何度経験しているのか
 ・それらの海外赴任をなぜ了承したのか
 ・過去の海外赴任ではどの様な問題に直面し、どの様に解決させたのか
 ・ 前回の赴任時において、環境に適応する上で助かった事にはどの様な事があったのか
 ・現地の従業員と交流を図る中で、どの様な経験が役立ったのか
 ・駐在員の海外赴任に関して、個人として成功と失敗とは具体的にどの様な事と考えているのか
 ・雇用主側は、駐在員の海外派遣の成功と失敗をどの様に定義しているのか、そしてそれをどの様に測っていたのか
 ・前回の赴任時に成功/失敗が分かったタイミングはあったのか、またそれをどの様に測ったのか
 
他にも聞くべき事はあるかと考えられますが、ポイントは、どういった人物が駐在員に向いているのか、どういった成功例や失敗例があるのかなどといった情報を集める事に加え、情報は社内だけでなく社外からも得る事ができる可能性があるという部分にあるのかもしれません。

4. 駐在員の海外派遣におけるHR(Human Resources ≠ 人事)の重要性

この様に、駐在員を海外に送る前の情報収集・分析や準備、海外赴任中の継続的なサポート、帰任に向けたプランニングなど、海外派遣を成功させるためにやるべき事は少なくありません。また、この方面に関する情報に加え、成功・失敗など経験値に関しても社内に蓄積させていく必要があります。

こういった部分もHRの担当領域に含まれ、特に「グローバルHR」という専門性が求められるものになります。駐在員を海外に派遣する際に「42%」の方になってしまわないためにも、皆さまの組織のHRの役割やその重要性に関して今一度見直されてみてはいかがでしょうか。

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文責:Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP, 中央大学 非常勤講師

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