2022年の日記集:もし、自分みたいな子供がいたら

【2月16日】

流行りの感染病の影響によっては実施できるかわからない、結婚式が約2か月後に控えている。
家族のことが、よく頭に浮かんでくる。

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実家にいたころ、家族が苦手だった。
わざわざ罵倒したり、面と向かって何かを言ったりはしなかったけれど、冷めた目で見るように「分かり合えない人たち」というまなざしをもって、諦めていた。

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何をするにも「大丈夫なの?」と心配性な母。よく周りとも比較された。
干渉されないように、自立心が芽生えたとも言える。

父は単身赴任でそもそもあまり家にいない。だから何を話せばいいかわからない。何か聞かれても「大丈夫」「ボチボチ」としか答えられない。本当は家族のことも、学校のことも、部活のことも、将来のことも、めちゃくちゃ困っていた。

兄は自分の部屋にいることが多く、関わりが少なかった。小さい頃はよくついて行って一緒に遊んでもらったけれど、お互い大きくなると疎遠になるものだとは思う。
いつもイヤホンをしていてるのか返事がないので、家事を頼まれるのは基本的に私になった。

妹は「○○に行きたい!」「○○が欲しい!」と言える人で、ちょっと羨ましかった。わがままに感じてイライラさせられることもあったけれど。
意外と強かで甘え上手。なんだかんだ家族の空気を支えていたのは妹だったように思う。

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友達の家に遊びに行くと、色んな家族の形が垣間見える。
いつも誰かが遊びに来ている家。
ウチは、人を呼びたがらない(友人を呼ぼうとすると嫌がられる)家だった。

親に人間関係や恋愛の話をできる家族。
私はしたことがなかった。そもそも自分の話を親はしないので、私は気を許すことができなかった。

いつも「今日は何をしたの?」「勉強はどう?」と聞かれるばかりなので「別に」と答える。段々、この応答も面倒になり、気まずい空気感も居づらかったので、食事も一人で取るのを好むようになる。
こうして書いてみると"親に期待を押し付ける"ばかりで、関係がとおくなる原因は自分だったのではないか。

土日の部活帰りは「今日の試合どうだった?」とよく聞かれる。
そもそも試合に出られなかったり、ミスをしたり、いじめられたりしていたので、聞かれること自体が苦痛だった。弱音を吐けなかったのだ。

「良かったこと」以外は言ってはいけない気がしていた。
自分の部屋にいても、なぜか部屋のドアを閉めるのを禁止されていた。プライベートがない。

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そんなわけで、自分の家族に対して「絶対に分かり合えない」と諦めていた。

転機は数年前、兄の結婚式だった。
正直、あまり興味がなかったけれど、ハワイに行けるしいいかという気持ちでいた。

結婚式で、自分に驚いた。
お二人の幸せそうな様子に心から感動したし、その場に自分がいられることを嬉しく思った。

ハワイのドーナツ屋さんでマラサダを買い「買いすぎたからいる?」という理由で兄のホテルに渡しに行った。照れ隠しだった。

ドーナツと一緒に入っていた六つ折りのペーパーに、手紙を書きなぐった。

正直嫌いだったこと。実家に暮らしていた頃にされた、嫌だったこと。
それでも、今日感動したこと。これから家族ときちんと関わっていきたいこと。

兄は後日手紙を返してくれた。雪解けのきっかけだ。
ちょくちょく「夫婦で家に遊びに行っていい?」とか「甥っ子に会いにおいでよ」と誘ってくれるようになった。

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親が子をリードするべきだ。
という固定観念を私は持っていたように思う。

子に聞くなら、まずあなたが話しなさい。
子に勉強を勧めるなら、まずあなたが勉強しなさい。
家でゴロゴロするなと言うなら、まずあなたがそうしなさい。

こんなふうに。
こんな思想が強いから、大学生の時に「お前って、正論クソ野郎やな」と友人から言われるわけだ。

でも、別に私から歩み寄ったっていいのだ。
無視せずに、私の意見を伝えればよいのだ。
伝わらなくても、理解されずとも。

結果として、どちらにせよ分かり合えないとしても、きっとその過程で話し合うことは無意味ではない。今はそう思う。

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書き終えて、なんだか笑ってしまう。
自分みたいな子供がいたら嫌だなあ...。
生意気で、めんどくさいし、理屈っぽいし、こざかしい。

親が「どう接していいかわからない」のが、今ならわかる。ごめん。

※この記事は、過去にメンバーシップ内の掲示板に投稿していたものを再編集したものです。

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