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THE HARDBAIT #31, #32

「アフタースポーン期における芦ノ湖のトップウォーターゲーム①」

2023年のH-1グランプリの目玉のひとつは、開催地のひとつに神奈川県の芦ノ湖が加わったことだろう。赤星鉄馬によって日本で初めてブラックバスが移入され、2025年には百周年を迎えるシンボリックな湖であり、バスの魚種認定(漁協への漁業権免許の付与)がされている国内でも数少ないフィールドだ。

2000年からソフトベイト禁止のレギュレーションが設定されており、ハードベイトオンリーのトーナメントを行なうにはうってつけの場所。相模湖の2倍以上の面積があり、フィールドの広大さゆえにエレキのみのレンタルボートが普及していなかったが、今回は湖尻エリアのボート店4軒の合同開催というかたちで実現にこぎつけた。

その準備も兼ねて、鈴木美津男さんが芦ノ湖を訪れたのは5月末のこと。プライベートで1日半フィールドに浮かび、トネスプラッシュで46cmのみごとなネイティブをものにした。

普段は利根川や周辺のマッディーシャローで釣りをすることの多い鈴木さん。ときには数メートル下のボトムまで丸見えになるクリアレイクの芦ノ湖で、いったいどのような釣りを展開したのだろうか。

鈴木「念頭にあったのは、自分が手掛けたルアーで芦ノ湖のバスを釣りたい、ということ。かつてはホットリップスの大会で足繁く通ったこともあるフィールドなんだけど、ラッキークラフトさんでルアーを作るようになってからは、ほとんど来ていなかった。なので、今回はトネスプラッシュトネプロップジャークしか持っていきませんでした」

なお、トネプロップジャークはテールのペラを外してハイフロート系のジャークベイトとして使用。こうすることで水面だけでなく、1mほど潜らせてからのジャーク→浮上、のアプローチがしやすくなるという。

鈴木「去年、新利根川のThe Battleという大会で優勝したときに(『THE HARDBAIT#019』参照)、MTO4.5のブレードチューンで釣ったでしょう。あれはもともと、ダイブさせて浮き上がるときにブレードが回転する、そのアクションでコールアップさせることをねらっていたんです。産卵を終えたあと、体力を回復するまでの期間に浮くメスを釣るための、僕のなかでのセオリーのひとつですね」

浮いた魚をクランクで呼ぶか、フローティングジャークベイトで反応させるか、はたまたポッパーで食わせるか。ルアーのタイプこそ違うが、「アフタースポーンのメス」に照準を合わせることで、選択すべきアクションやアプローチが定まってくる。

さて、難しいのはここから先だ。広大な芦ノ湖のなかで、どのようなシチュエーションを探せば「アフタースポーンのメス」を反応させることができるのか。

「アフタースポーン期における芦ノ湖のトップウォーターゲーム②」

5月末の芦ノ湖を訪れた鈴木美津男さん。持ち込んだのはトネスプラッシュトネプロップジャークの2タックルだけ。いつもどおりの利根川親父スタイルである。

鈴木「まず日曜日に半日だけ浮いて、フィールド全体のようすを観察して回ったんですが、まずいタイミングで来ちゃったなと(笑)。ペアリングしている個体や、ネストを作っているオスがシャローにけっこう見えて、サイトでねらっている人も多かった。もちろん僕はそういうスタイルじゃないし、バンク際を釣っていってもダメだろうな、ということはわかりました」

前回の記事で解説したとおり、鈴木さんの目標は「自分の作ったトネスプラッシュトネプロップジャークで釣ること」。すでにスポーニングを終えた個体もどこかにいるはずだ。

鈴木「産卵のあと、オスはネストに残ってしばらく卵や稚魚を守ります。一方で、メスは水深2〜3mにボーッと浮くことが多い。いわゆる『アフターのメスが浮く』というやつですね。浅いレンジに浮くことで太陽光を浴びて寄生虫を落とすとか、そういう意味合いもあると思います。ただしこの状態が長く続くわけではない。特に芦ノ湖の場合、体力を回復するにつれ、ワカサギを追って沖に出てしまうと非常に難しくなる」

そうなる一歩手前の段階で「水深2〜3mにボーッと浮く」メスをねらうために、鈴木さんが選んだエリアが東岸の『樹木園』だった。

鈴木「トップや表層系の釣りを成立させるためには、風が大敵なんですよ。波立ってしまうと水面までコールアップさせられない。特に芦ノ湖は、いったん吹きはじめると大荒れになることもあるからね。そんななかで『樹木園』が良いのは、ほかのエリアとは違って、ワンドが奥に切れ込んでいること。風向きが南でも北でも、いちばん影響を受けづらい地形なんです」

下見をした翌月曜日の朝、さっそく『樹木園』に入ると、カゲロウが水面で羽化しているのを確認。それを捕食しているのだろう、ときおり巨大なレインボートラウトが水面を割っていたる。風はほとんどなく、ベタ凪で、トップウォーターには理想的な条件が整っている。

鈴木「ワンドの中央に沖へ伸びる桟橋があるんです。水中には太い鎖が伸びていて、浮くならここだろうという場所。まずトネスプラッシュを桟橋から数メートル沖に浮かべて、しばらく放置してみました。水深は7〜8メートルぐらいかな。すると、桟橋のほうから80cmぐらいのレインボーがスーッと寄ってきた。これが食っても楽しいなと思ってたら(笑)、真下から別の魚がドカン! と出て、それがこのバスでした。ものすごくきれいな魚体で、アフターにしては太っていた。オスだった可能性もあると思います」

記事&写真 水藤友基

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