【読書記録】2020年10月

ごきげんよう。ゆきです。

先日、kindleを買ったというお話をしたのですが、読んだ本が数週間で複数溜まるほど読書が捗っているので、今後この場で自分の記録用に感想を残していこうと思います。

ただの読書記録なのでラジオ形式は無くします。あくまでも自分の備忘録なので。ネタバレは無いように注力します。

今月は小説ばかり。

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その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは徐々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日――直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

電子書籍一発目は何を読もうか、と考えて、好きな作家、好きな表紙、適度な長さという条件で選んだ1冊。痛い。とにかく最初から最後までキリキリキリキリ心が痛い。それは冒頭でこれから何が起きてしまうかが分かってしまうからだと気付くと同時に、この作家が読者をこんな気持ちにさせるのがとにかく上手いことを思い出した。藻屑の悲しい嘘は、終始綺麗な物語のようでそれもまた切ない。冒頭で知った結末がどうか来ないようにと願いながら読み進めた。現代社会の問題に切り込むような内容でもあったので、ただのファンタジーとも思えない。私が山田なぎさでも、結末はきっと変えられなかった。でも、今私がいる小さな日常では、こんなエンドを知らずに生きていたい。

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作詞家が中毒死。彼の紅茶から青酸カリが検出された。どうしてカップに毒が? 表題作「ロシア紅茶の謎」を含む粒ぞろいの本格ミステリ6篇。エラリー・クイーンのひそみに倣った〈国名シリーズ〉第1作品集。 奇怪な暗号、消えた殺人犯人に犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビが挑む!

いつも思うのだけれど、100歩、いや1000歩譲って物語を実写化orアニメ化するのは許す、でもそのビジュアルを全面に押し出した帯を書籍に巻き付けるという宣伝方法は無くすことができないのだろうか(酷いものだとカバーまるごとそのビジュアルになっていて頭を抱える)。おかげでこの小説、全部斎藤工さんと窪田正孝さんで再生された。帯に巻き付いていなかったらその配役で実写化されていたことを知らずに済んだはずだった。小説の醍醐味は自分の想像したキャラクターが脳内で動き回ることだ、と思っている読者は私だけじゃないと思うんだよな。帯がそれだからって著しく売上が変わる?ドラマ観て原作を読みたくなったら自分でタイトル調べて買ってくれ、と思う。

内容はオーソドックスなミステリ短編集だった。びっくりするようなどんでん返しはない。通勤の往復で軽く1エピソード読了する感じがちょうど良かった。表題になっている『ロシア紅茶の謎』が一番好きだな。シリーズ2作目は長編らしいけれど、いったん別の作品に移ることにした。続編は斎藤工さんが恋しくなったら読む。

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何事にも積極的に関わらないことをモットーとする奉太郎は、高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられる。
さらに、そこで出会った好奇心少女・えるの一言で、彼女の伯父が関わったという三十三年前の事件の真相を推理することになり――。
米澤穂信、清冽なデビュー作!

いつも思うのだけれど(以下略)。アニメ化されているのはわかっていたけれど、実写化も存在するということはすっかり失念していた。広瀬アリスさん……わかる、わかるんだけど違う。私の脳内では高橋ひかるさんが「わたし、気になります!」と元気いっぱいに動き回っていた。……ほら、既存の実写化ビジュアルを見てしまうと「私だったらこの女優さんを起用する!」とか不要なことを考えて、登場人物の外見の可能性を狭めてしまう。これだから嫌なのだ。

一見真面目な(と言うと、この作品が真面目ではないように聞こえてしまうがそうではなくて)表紙からは想像できないラノベ感。だからアニメ化しやすかったのかな、と思ったりした。日常の小さな謎を解き明かしながら最大の謎に迫っていく連作学園ミステリ。誰も死なない。誰も罪に問われない。小さな謎は「なんだそんなことか」と拍子抜けするものもある。それでも、読了後にちょっと切なくなってしまった自分がいた。登場人物の心理描写も繊細で、脳内で氷菓ワールドを繰り広げるのは容易だった。こちらも続編があるようなので、月1くらいで浸らせてもらおう。灰色だった私の高校生活の記憶を、薔薇色に塗り替えることは今からでもできるだろうか。

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https://www.amazon.co.jp/砕け散るところを見せてあげる(新潮文庫)-竹宮-ゆゆこ-ebook/dp/B01M4R605W

大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。

いつも思うのだけれど(以下略)。某ウイルスのせいで、実写映画の公開が遅れているらしい。残念なことに文庫のカバーが丸ごと映画ビジュアルに成り代わっていたのだが、一見して思わず「おおう……」と唸ってしまった。蔵本玻璃=石井杏奈。わかる。こればっかりは悔しいかな、「それが最適解だ」と思ってしまう。決して悪口ではなくて、彼女、不遇な役が似合ってしまうのだ(たぶん『ソロモンの偽証』のイメージが私の中で強いからこんなことを思うのだと思う)。正直「アーティスト兼女優」を多少舐めた目で見てしまうのだけれど(何様なのか)、量産型ラブコメではなくダークなヒロインや不遇な少女役で活躍するのを石井杏奈さんには期待してしまう。これもその1つとして。

肝心の本編だが、叙述トリック満載で「わぁいこういうの大好き」という感じだった。途中まで全く気づかなかった。が、一読して納得するように上手く描かれていたので、スッキリ読了。ラノベ寄りの文体なのと、メタファーが過ぎる部分があるので、苦手な人は一定数いるかもしれない。内容は『砂糖菓子の〜』を彷彿とさせるが、グロさは無くて読みやすい。いじめを受ける少女を救ったヒーローの物語。サスペンス要素は大いにあれど、蓋を開ければ大きすぎる愛の物語だった。これは満足度が高い。ところでこれ、どうやって実写化するのだろう。「私が映像化するならこうかな」という案は思いつくけれどなんともチープ。気になるから観に行こうかな。

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読書はもっぱら小説、それもミステリー(イヤミスであればなお良し)を好む私の癖がありありと出たラインナップになってしまいました。本当はビジネス書とか格好良く広げてみたいんですけどね。

本は私にとって現実逃避のツールなんです。一度開けば何処へでも連れて行ってくれるし、何にだってなれる。その無敵感が好きで本を読んでいます。

とはいえ20代も後半の年齢なので、現実逃避ばかりもしていられないんですよね。来月はもう少し自分を磨くための本を選びたいなと思います。その先でほんの少し新しくなった自分に出会えることを願って。

あ、そうだ。「kindleで読んでるのに帯やらカバーやらにうるさくない?」と思われそうなんですが、私、本屋で一度は実物を手に取らないと落ち着かなくて。読む前に装丁や厚みや質感を知ってから中身に入りたいんです。まだまだ紙から離れられない自分に呆れますね。なので今後も多分本のビジュアルにうるさくなります。ご承知おきください。

See you next note.

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