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真夜中万華鏡 毎週ショートショートnote

「星空に勝る万華鏡なんて無いさ」
お兄ちゃんに万華鏡を作って欲しいとせがんだけれど、お兄ちゃんの返事は素っ気ないものだった。
作るのが面倒だからってこんな言い方しなくたって。

「いいよ、自分で作るから」



月が怪しく光る夜
おまえの心に届くだろうか
月の光が見せる夢

おまえの作った万華鏡
月の光が差し込むその時に
万華鏡が万華鏡で無くなる不思議
さあ見るがよい
その万華鏡が見せるもの


「もう、お兄ちゃん、変な声で変なこと言わないでよ」
「僕は何も言ってないよ」

私は早速出来上がった万華鏡を覗いてみた。

万華鏡をクルクル回した。
私は月の側に立っていた。

月の光は揺れながら私の前で立ち止まる。
「私を呼んだのはおまえか」
「私は万華鏡を回しただけです」
「せっかくだから、おまえに見せよう。絵にも描けない、文字でも書けない美しさを」



気がつけば、私はわけもわからずに泣いていた。
月が笑った。

「おい、大丈夫か」
お兄ちゃんの声で気がついた。

私は何を見たのだろう。



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たらはかにさんの、今週の裏お題『真夜中万華鏡』です。
かにさん、よろしくお願いいたします。


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