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介護ってとんでもないお仕事!

私は資格マニアである。
ファイナンシャルプランナー、宅建、普通自動車2種、オープンウォーター、介護職員初任者研修。
これらの資格を取った。
子供も大きくなり、専業主婦である私は、とりあえず様々な資格を取ってみた。
何をやってみようかな?
よし、不動産業界をやってみよう!
急がば回れない私は思い立ったら吉日タイプ。
翌日、経験無しなのに生成大手不動産会社に面接に行った。
まぁ~落とされるでしょうね。経験ないんだからさ。
と、気楽に面接を受けた。
面接官はなんと女性であった。
スラリと背の高いショートカットがバッチリ決まってる美人だ。
「私が本日の面接を担当する小池です」
名刺を渡された。名刺には支店長と書いてある。
私は、なんか凄いたじろいだ。
な、なんか私、場違いの所に来ちゃたかな。
小池支店長が早速私に話しかける。
「ふぅーん、横山さんね、あら、国立大学をでてるの。宅建資格はお持ちなのね。未経験と」

私が、はい、未経験ですが、人生の節目となる住宅購入の御役に立てればと一生懸命学んできました。また、家に長く居るのは主婦の方々です。私は主婦の目線で快適な居住空間をお客様に提供したいと考えます。
未熟者ですが、先輩方の足を引っ張らない様に、一生懸命学ばせて頂きたいと思います!
と、頭に浮かんだ事をスラスラと話した。
生意気だったかな?まぁ、どうせ落ちるしいっか。
一通りやりとりした後、小池支店長が
「追って連絡致します」

私は、あー、落ちたな、と思った。
小池支店長の顔がこっちを一向に向かなかった。
なんか私に興味が無さそうだった。
面接して3日目、電話が掛かって来た。
「横山さんの携帯ですか?支店長の小池です。今回採用となりましたので、必要書類を送ります。つきましては、明日、当社に来て頂きますか。」
私はうっそー!と、小躍りした。
さあ、いよいよ初出勤の日、少し緊張しながら会社へ。
1日目はオリエンテーション。
明日から先輩について回って仕事だ!
翌日、50過ぎの小太りの男性の先輩と地主回り等を行った。
そして、土地回り。
よく、何を何をやっても必ず店が潰れる土地がある。
決まってそういう土地は方位磁石がくるくる回るのだ。
1人で1人前に仕事をする様になってから、ある日、携帯に電話がかかってきた。
地主のアパートのオーナーからだ。
「ちょ、ちょっと急いで〇〇アパートに来て!」
私は?となりながらも現場に直行した。
オーナーが105号室の前で立っている。
「腐敗臭がするって言うから部屋の鍵あけたんだが…」
私はつかつかと部屋に近づく。
鼻がもげる程の嗅いだ事のない臭いだ。
ハンカチで口と鼻を覆い、ドアを開ける
ぎゃあああー!
なんと、天井から、床、壁まで、うじ虫がびっしり!
私は次の日会社を辞めた。

また、ゴロゴロと専業主婦に戻った。
暇だ。
しかし不動産は懲り懲りだ。
さて、何しよう。
ん?私介護職員初任者研修の資格取ったんだな。
よし、介護のお仕事しよう!
またまた、思い立ったら吉日で次の日、有料老人ホームに面接に行った。
面接官は山田という痩せた背の高い中年男性だった。
面接かぁー何を話そうかな?と考えていると
山田さんが「よし!採用!」
は?何も会話しとらんぞ?なんだこれ?
入社して後から聞いた話しだが、介護士は慢性人手不足で有資格者は余程の事がない限り採用されるらしい。
お仕事初日、先輩から「介護の仕事はね、下の世話に始まり、下の世話で終わるのよ」
と、言われた。
確かにそうだった。オムツ交換、トイレ介助、お漏らしした利用者様の着替え。
しかし、私はこういうの案外平気だった。
だって、うじ虫よりマシじゃん。
食事介助もスムーズだった。歯のない方や、飲み込みの悪い方はミキサー食で、ご自負で食べられない方の介助をする。
次はトランス(移乗)
ベッドから、車椅子へ、車椅子からベッドへ。
これで良く腰を痛める人がいるが、力任せではなく、テコの原理を使えば案外平気だった。
次は入浴介助。
実はこれが一番大変!
とにかく、ちゃっちゃと着替え、身体洗い、入浴、また着替えを1人20分でやる。
中にはお風呂拒否のご老人もいる。
そういう方は言い方悪いが騙して入れる。
いつものお風呂嫌いな節子おばあちゃんにわたしが話しかける。
さぁ~節子さん、お花見に行きますよ?
節子おばあちゃん「まさか、風呂じゃないでしょうね!」
私は、屋上からお花見しましょう。お散歩ですよ?(真冬なのに)
と、車椅子をとっとと浴室へ誘導する。
節子おばあちゃんが「騙したねっ!」
私が、騙してないわよ。お着替えしてお花見よ。
そして、ちゃっちゃと服を脱がす。
そしてシャワーを足からかけていく。
節子おばあちゃんが「ぎゃあああー!殺されるぅう〜!」
大きい声で叫ぶ。しかし怯んでる場合じゃない。
私は、さぁ~!頭洗いますよっ!
次、身体洗いますよっ!
締めて1分半。
私が節子おばあちゃんにお風呂入りますか?
と聞く。
節子おばあちゃん「うん」
私が節子さん、気持ち良いでしょう?
節子おばあちゃん「やっぱり、お風呂は良いねぇ」
5分たった。
私が、さぁ~節子さん、お風呂上りますよ?
節子おばあちゃんはすっかり気を良くしている。
鼻歌まで歌ってる。
悪魔が天使になった。
男性の入浴介助も大変。色ボケおじいちゃんもいる。
必ず胸を触るおじいちゃん。
あと、モノをシゴイてくれと言うおじいちゃん。
はい、はい、はい!
身体洗うの先ね?ちゃっちゃと洗って風呂に入れる。
湯に浸かるとやはり悪魔が天使になる。
おじいちゃん達は「早くご飯食べたいねぇ」

食事が終わると約半分位のお年寄りは言う。
「食事たべてないんだけどまだ?」
私が、後、30分したらご飯ですよ。
(今食べたじゃん…)
これを何回も繰り返す。
そうしているうちに本当に夕食の時間になる。

暫くして介護福祉士国家試験に合格する

私は夜勤を任されるようになった。
とにかく夜7時までは戦場だ。
遅番と2人で食事介助、下膳、口腔ケア、トイレ介助、オムツ交換、就寝介助。
夜7時に遅番が帰る。
ふぅ~。やっと自分の食事。 
食事が終 わったら、パソコン入力。
食事量、排便回数、排尿回、水分量、バイタル。

夜勤は基本、1フロア1人体制だ。

夜10時に決まってナースコールを鳴らすおばあちゃんがいる。
高木さんだ。
ナースコールがなる。305号室。やはり高木さんだ。
305号室へ向かう。扉を開ける。
高木さん、どうされました?
高木さんは言う
「ここは鬼怒川温泉なのに、何故温泉に入れてくれないの!」
私が、高木さん、確かにここは鬼怒川温泉ですが、もう遅いので明日の朝お迎えに参ります。
それまでゆっくりおやすみくださいませ。
高木さんは「そうかい。親切な宿だねぇ。おやすみ」
明日の朝には忘れている高木さん。
夜11時の巡視の時間。
307号室から泣き声がする。宮本のおじいちゃんだ。
宮本のおじいちゃんは「姉が迎えに来てくれないから寂しい。家に帰りたい」
私が、そっか、じゃ私と手を繋いでフロアで折り紙しようか。
手を繋ぎながらの折り紙だからぐちゃぐちゃだ。
しかし、出来はどうでも良い。
何かをしながら楽しくおしゃべりすれば良いのだ。
一時間程話しをしていたら、宮本のおじいちゃんは眠いと言って部屋に帰って行った。
夜中の3時の巡視。
カーテンがゆらゆらと動いている。
またか…
カーテンをガッと開けて懐中電灯を照らす。
80過ぎの、おじいちゃん、おばあちゃんが
下半身裸になり、所謂アレを無理矢理やろうとしている。
私が無理矢理、はぁ〜い、離れて!
2人を引き離す。
2人はすごすごと己の部屋に戻って行く。
私は毎度毎度、ゲッソリする。
灰になるまで色は失わないのね…ヤレヤレ。

何故か決まって急変は夜間帯におこる。
1人のご老人の様子がおかしい。
バイタルを測る
高熱、高血圧、SPO2が80しかない!
救急車を呼ぶ。
その間に施設長、ご親族に電話を入れる。
救急車車が到着。
施設長とバトンタッチで私も救急車に乗り込む。
病院へ到着して、ドクターに様子を話す。
ご親族様が病院へ到着。
ご親族様に状況説明をする。
ゲッソリしてタクシーを呼び、施設へ戻る。
通常の夜勤勤務を終え、事故報告書を書く。
激疲れ…。
実は私は身長170センチある。
しかし夜勤勤務をやっていた頃は体重が47キロまで落ちた。
ガリガリだわ。

暫くして、ケアマネージャーの資格を取る。
そして施設長になった。
現場の仕事はやらなくなったが、謝罪、ご葬儀への出席がやたら多くなった。
やたら雑務ばかりになった。
あ〜あ。現場に戻りたい。
しかしながら悲惨と言われる介護職。
私は案外向いている。

お、わ、り。

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