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普通、が、すごい。月の井酒造「彦市」。 冷蔵庫に常備したい「なんでもいける」日本酒

30代も半ばになると、自分と同世代の蔵元が醸すお酒が増えてきました。
いちお酒好きとして、味はもちろん「応援したい」という「飲みたい理由」が増えるのは楽しいものです。

紹介するのは茨城県・大洗にある「月の井酒造」のお酒。
同世代(30代)の蔵元ががんばっています。

購入したのは新宿伊勢丹の和酒売り場。法被をきた女将さんがひとりで試飲販売をしていました。
お話を聞いてみると「有機栽培」認定の米を使ったお酒にとりくむなど、小規模ながら素敵な酒造りを続けているそう。商品ラインナップのなかでもひときわ目につく場所に置かれていたのが、息子さんが手がけた新ブランド「彦市」。地元・大洗のお米にこだわったお酒なのだとか。

試飲がおいしかったのはもちろんですが、「彦市」とそれを作る息子さんの活動について話しをするときの女将さんが、あまりにもうれしそうだったのが印象的でした。それも買う理由です。

そのお酒が、この「彦市」。(写真は純米酒)
ラベルは大洗の「海」をイメージしたものだそうで、息子さんが考えたとか。
栓の部分は、最近しゃれたデザインのお酒で見るようになった、ゴム製のカバー付き。

「このフタなんて、自分の(お酒)にだけ取り入れて、ほかのお酒にはしないんですよ」と笑っていた女将さんの顔が浮かびます。

「普通」がすごい日常のお酒

お米を全面に押し出していることから「穀物のパワーある感じ」を想像していたのですが、印象はその反対。主張しすぎない「普通さ」に驚きました。

・香りは控えめ
・アタックはやさしく、ほとんど抵抗なし
・抑えめの甘みと、同様に強すぎない旨み、
・微かな酸味と微かな苦味

これらがサラサラと口に広がります。それもいやみではない。

特別な個性で押すのではなく、「ちょうどいい」「ちょっと控えめ」くらいのバランスです。若手酒造家は個性的な味を打ち出すことが多い印象がありますが、月の井さんは奇をてらいません。水がいい、米がいい。もともとの素材の上質さがあるからこそなし得る味だと思います。

飲んだ瞬間は特別な言葉がなくても、気がつくと次の日も飲んでいる。
普通に、うまい。じわじわと、うまい。この「普通」がなかなか出会えないものです。

また、冷蔵庫で2日ほど置くと味が一層のり、口のなかで感じるボリューム感がぐっと増しました。

冷たくても、常温でも、熱燗でもいいです。
海辺の酒蔵らしくお魚とのペアリング推奨されているものの、あっさりなサラダにも、濃い味付けの煮物にも、なんなら唐揚げとかも受け止める芯の強さがあります。どの飲み方でも、どのようなものと一緒に飲んでもうまいやつ。ケースで購入したいやつです。

蔵を見学させていただきました

彦市を買った時に女将さんから「大洗は近いので、遊びにきてください」というお言葉をいただきました。その社交辞令を真に受け、1月にお邪魔してきました。
酒蔵の最繁忙期に見学を受け入れていただき、本当にありがとうございました。そしてご迷惑をおかけしました。

8代目蔵元の直彦さんです。少人数をわざわざ案内してくれました。

貯蔵タンク。知らなかったのですが、よく酒造にあるタンクは手作業で作られるため、貯蔵できる量がひとつひとつ微妙に異なるそうです。

しぼりたて(むしろしぼり途中)の純米酒を少しいただきました。できたては「普通」なんて言葉がふっとぶほど躍動感があります。

土地の名物「あんこう」と味わえば天国です

酒蔵で購入したのは、彦市とフラッグシップである「月の井」。相性のいい料理は、大洗とあり名産「あんこう」だそう。そこで大洗のスーパーであんこう(切り身が普通に売っています)を買って帰り、お鍋に。この組み合わせはもう、最高でした。

同年代のお酒というと、これまでは「尖った」取り組みを評価するときに使っていましたが、月の井酒造のお酒は「常備したい味」と思えました。

ごちそうさまでした。



月の井酒造
http://www.tsukinoi.co.jp/index.html




もちろん、お酒を飲みます。