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陽気な胃腸炎

※スキズ記事ではありません。

先日、人生初の胃腸炎になった。

それはそれは、それはもうしんどくて驚いた。
何度も発熱して、お腹の痛みで夜中に起きて眠れずに過ごした。

初めての感覚に戸惑いながらなんとか病院に行くと、
「顔色わるっ!!!爆笑」と、謎に若さを見せるお医者さん。
(この病院に行くのは2度目だが、この先生は以前も初対面とは思えない気軽さで診察してきた。なんかもう、「!!爆笑」がデフォルトのような先生だった)


実は心当たりがある。
この前親友とオイスターバーなるものへ行き、牡蠣を食べたのだ。
遠方に住む大切な親友。ここぞとばかりに酒を飲み、珈琲を飲み、胃袋に拡張を重ねて食べ物を放り込み、夜更かしをして夢を語り合った。

たまにハメ外して胃腸でもいじめちゃえ、なんておちゃらけていた。

その結果が、この胃腸がちぎれるような痛みである。
見えないだれかに腸をねじられている、みたいなのが一番ふさわしい感覚だった。

毎秒、気を紛らわすために「胃腸炎 何日で治る」とか「胃腸 ちぎれるような痛み」とか「免疫 高く どうやって」とかを検索していた。

そのなかでも、免疫に関わる記事がいろいろと面白かった。
運動と食事はそこそこ気を付けているので置いておくとして、
「精神的ストレスは免疫の大敵!十分な休養と睡眠がカギ」
というタイトルが目を引いた。

あら?ストレスとネガティブ思考と不眠は身体に悪いらしい。
(当たり前なのだが)

なーんだ。ネガティブって、健康にも悪いのか。
免疫まで下げちゃうのか。ふぅん。

きっと人生で何度も触れているはずの常識なのに、
なぜだかそこですとんと、
「ポジティブになるしかねぇな」と私の脳のスイッチが切り替わる音がした。


熱にうなされながら、
「でも、人生で初めての胃腸炎だから。
これで今度から、胃腸炎になった人のこと、心からいたわれるもんな。
うんうん、人生経験だね」
なんて、底抜けにポジティブな自分がいるのを感じていた。


びっくりするほどいつのまにか、私は変化していた。
口ばかり「ポジティブに頑張ります!」と言って
陰でめそめそ泣いて悲劇のヒロインを気取るわたしではなくなっていた。

それがいつからか分からない。
トイレと布団を往復した胃腸炎の日々のなかでなのか、
実はずっと前からなのか。
でも、自然と胃腸炎が治ったあとからは、
自分がスーパーポジティブ人間に進化したことを日々感じるようになった。

今もオイスターバーで過ごした親友との時間に悔いは1ミリもなく、
胃腸炎になった時間を巻き戻したいとも特段思っていない。
免疫を高める意識改革をくれてありがとよ胃腸炎、と思っている。
(実際、胃腸炎の1週間ずっと22時就寝とかだったので、不眠だった私でも正しい時間に入眠する癖がついた)


人生、どのタイミングで変化するかわからない。
年齢を重ねるごとに変化できなくなるとか、幼少で培った性格は不変だとかいうけど、ぽっと出の芸人みたいに突然ポジティブが現れた23歳の人間もここにいるようで。

何事も前向きにとらえる感覚が根付いたら、
なんだか日々がずっと幸せになった。
もちろん仕事で疲れたり、キツイ言葉に傷ついたりはするんだけど、
自分の核はバリアを張って守れている気がする。
大好きな人が作った楽曲のテーマにしていた、楽天的な主人公のような気分がずっと続いている。

同期の男の子に、叱られても平然とできるひとがいる。
話を聞くと、「それを悪意で言われているのか親身になって言われているのかは分かるから。悪意でないなら、傷つく必要がないから」と。
悪意かをかぎ分けられることも才だし、普段はふわふわとしている彼が、落ち込むことが時間の無駄と真顔で言っている感じがちぐはぐで。単に鈍感に見えて、凛として大人な思考を持つ姿がかっこよかった。

そう、自分の核を壊されそうな攻撃がどれだけ飛んできても、核を守れるかは自分の心構え次第なのだ。同じことが起きても、喜劇の主人公ならばぱっと明るく、苦しいワンシーンをコメディに変えてしまえる。


私はもう悲劇のヒロインでなく、喜劇の主人公なのである。


陽気な胃腸炎、なんて題にしてみたら、
腸炎ってなんだか陽炎(かげろう)と字面が似ていてかっこよくさえ見えてくる。

陽気な胃腸炎。
今日も明日も、まぶしい陽の光とすっきりとした青空とともに、
人生という喜劇の舞台の真ん中で、晴れやかな1日を過ごせますように。

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