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映画「ドラえもん」を語り倒す 第3回:のび太のパラレル西遊記

第3回目ですね。前々回、前回と、「次回は鉄人兵団か海底鬼岩城をレビューします」と言い続けてましたので、「パラレル西遊記」をレビューしようと思います。映画としては第9作目。藤子不二雄コンビ解消後初の映画です。

トラウマ映画としても名高いこの映画ですが、個人的には雰囲気含めて好きな映画の一つでもあります。ただ、メインゲストキャラであるはずのリンレイ の名前がどうしてもいつも忘れてしまう困ったチャンな作品でもあります。(紅孩児 という名前で覚えてしまうのですが…)

いつもの通りネタバレは全開です。ご注意ください。

魅力①:シリーズ屈指のホラー展開

さんざっぱら言われていることなのであまり長くは語らんのですが、俗にいう「トラウマドラ映画」の一つです。(他には「アニマル惑星」、「夢幻三剣士」、「魔界大冒険」など)

後述するドラとのび太の大ポカのせいで、人間世界は壊滅して妖怪に支配され、あまつさえその妖怪たちが人間の姿を借りて生活している世界にパーティーが放り込まれます。大ポカがシャレになってない。

新聞越しに父親に角が生えている様子を見たり、西遊記の劇の終幕が三蔵法師が牛魔王に食われる、になっていたりといった異変から「何かおかしい…」と徐々に気づいていく過程はもろ侵略系SF. もっともトラウマとして語られる、「顔の見えないママが徐々に階段を上がってくるシーン」はジャック・フィニィの「盗まれた町」も真っ青な侵略系SFお手本のような描写。個人的にはゾクゾクワクワクするのですが、子供には少しきついかもしれません。やりすぎだアホ。

魅力②:なんかゆるいパーティー

他映画に比べてなんかパーティーがゆるいです。もっというとアホです。特にドラ、しずちゃんがひどい。序盤でのび太が孫悟空が実在するということをみんなに証明するべく道具を使って扮するもアホすぎて即バレするといういつもの展開があるのですが、その時気づいたのは脳筋担当のはずのジャイアンでした。しずちゃんに至っては悪手までしといてまったくのび太だと気づかない節穴っぷり。どうした。

他にも、「金角・銀角と戦う時のドラのゆるさ」や「砂漠を歩いて疲れたパーティーのドラへの好き勝手すぎる要求」など、前述のホラー展開やシリーズでも屈指の凄絶バトルなどに反してなんか全体的にゆるい。ゆるさはセリフや大ポカにも表れてまして、

「危険が危ない!」「おれまた豚かよ!」「(絶体絶命のピンチを助けてくれたドラミに対して)派手なタイムマシンだね」などのシリーズでも屈指の迷セリフの連発

「ドラとのび太のヒーローマシンの消し忘れによる妖怪の現世侵攻&壊滅」「気配アラームを眠いという理由でドラが消してしまったことによる三蔵法師拉致」という、大ポカの連発

という、こいつらまじめにやる気あんのかとパーティーに言いたくなるひどさ。雲の王国のドラえもん、魔界大冒険ののび太、鉄人兵団のしずちゃん、宇宙小戦争のスネ夫、大魔境のジャイアン。おまえらのシリアスさはどこへ消えた。特にヒーローマシンのポカに至っては、妖怪に壊滅させられた国民たちはドラとのび太に本気で怒っていい。(そもそも結構あり得そうなポカで火の消し忘れ、てレベルでない大惨事になり得るこんな道具を子供向けに発売してんなよ22世紀…と思うけど、まあそれはいつものことです)

魅力③:羅刹女、牛魔王とのラスト・バトル

というゆるさがあるくせに、この作品実はラスト・バトルが熱いんです。初期のドラ映画はどれもラスト・バトルは熱いだろという話なのですが、この作品は珍しくラスボスとのガチムチな戦闘が味わえます。鉄人兵団はしずちゃんの機転で切り抜けたり、小戦争は巨大化して無双したり、海底鬼岩城はバギーが自爆したり、と実はドラ映画ってラスボスとガチ戦闘って珍しいんですよね。ぱっと思いつくのがこれと夢幻三剣士くらい。

裏切ったり味方になったりとなんか不安定なリンレイとともに、シリーズでも屈指のアップテンポ・ナンバー「君がいるから」をBGMに火焔山に突撃してからが本番。インディ・ジョーンズやグーニーズよろしく罠だらけの敵の本拠地を、しずちゃんと三蔵法師を助けるべく滑走するパーティー。のび太は敵のNo.2 羅刹女とタイマンバトル。なんて熱い!

で、なんだかんだあって全員つかまって(いつものことですね)、何の伏線もなく現れたドラミによって救われて、のび太はラスボス 牛魔王とバトル。なにげに伏線が貼られていた如意棒巨大化により、牛魔王に勝利。牛魔王は圧死し羅刹女は火焔山に飲み込まれ焼死。リンレイこと彼らの息子紅孩児はその死にざまを目の前でまざまざと見せつけられる。え、ちょっとひどくね?

…ということはあれど、やはり著名な妖怪たちとのバトルは上がるものがありますし、のび太はカッコイイし、シンプルなバトルで子供向けに良いと思います。なにげに実在の人物=三蔵法師が作品に登場した初めてのドラ映画でもあります。しかしこの武器を巨大化させて不意打ちでラスボス倒すのといい、ひみつ道具で現実と架空世界がごっちゃになるのといい、夢幻三剣士と類似性があんですよね本当。

あと、ものすごく今更ですがこの作品「タイム・パラドックスもの」なのですが(妖怪たちに支配される前に妖怪たちを倒しに行こうという物語)あれ、そしたら孫悟空=のび太を見つけた、タイムマシンで現代から来たのび太の世界はすでに妖怪に支配されてなきゃおかしくね?とか、そもそもそののび太はもうすでに妖怪の息子なんじゃね?とか、考え始めるとよくわからなくなるのでいつも通りあたたかーい目で考えないで見守った方が吉です。


ということで、第3回目は「パラレル西遊記」を語り倒しました。語り倒したといいながらいつもよりはだいぶ文字数抑え目。そして前回語った「宇宙小戦争」とは対極的にヴィランがド派手な脳筋。ホラー味も含めて家族で見るのには良い映画だと思うので、おすすめです。では。次回こそ。次回こそ鉄人兵団か海底鬼岩城。

#マンガ感想文 #ドラえもん #藤子・F・不二雄 #マンガ #レビュー #アニメ #映画 #SF

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