罪罰棟梁

 罪罰の幹部、首脳陣である九人の術師。全員が特別一級との評価を受けた実力者で構成されている。それぞれが並々ならぬ術式、一芸に秀でる強者であり、それを支える基本的な戦闘技能も侮れない。伝統ある旧家出身者も多いが、戦闘能力、統率力、詩歌の才能を加味して、一般出身者や呪詛師に近い素性のものもいる。しかし、いずれも劣らぬ強者である。

①"大日"鳳凰堂御前真章

 棟梁位階筆頭であり、大君主の側近築喜鹿に次ぐ発言力を持ち、組織内の派閥勢力では最大である。

 呪術の名門、鳳凰堂家の当主である。歴史上では、時の天皇を守護する役目を仰せつかり、御三家を越える権勢を振るったこともある。現在でも、京都府での政財、表裏に鳳凰堂の太いパイプが繋がっている。

生得術式:「遍照呪法」

  鳳凰堂家の相伝にして、密教の毘盧遮那仏(大日如来=太陽の化身)の再現とも称される強大な術式。通常、負の力でしかない呪力を正の力にするには、二つの力を混ぜるしかなくかなり効率が悪い。だが、太陽神を奉じる鳳凰堂家では、相伝の術式に最初から陽の性質(≒正の力)を馴染ませ、定着させることに成功したのだ。

 単純な呪力操作で、二級未満の呪霊は陽の呪力で弾け飛んでしまう。一級であっても、呪具に帯びさせて攻撃すれば事足りるほどである。そのため、元からの凄まじい呪力量や戦闘技術だけで平時の任務はほぼ解決する。

 一度術式を解放すれば、反転術式の様な正の力が放射される。通常、生物には心地よい暖かみだが、これを重点的に注ぎ込むと、呪力や生命力とでも言うべきものが過剰に回復して、しまいには爆発する。呪詛師はほぼ、触れてしまえば多大な呪力防御を行わなければ即死する。

 応用としては、手当たり次第、人間を含む生物に注ぎ込み敵に突撃させる、生体爆弾攻撃も可能である。

極ノ番:「本地顕現・盧舎那」

 自らを偶像に見立て、陽の呪力を全て自分に還元し大日如来を顕現させる。彼の奥の手であり、貴族としての矜持と強者としての責務の象徴とも言える姿。身体能力、呪力出力が通常時の数倍から最高十数倍に至る。呪力操作を一度誤れば、力に呑まれる、もしくは自壊してしまうリスクが付き纏うが、こうなれば最早特級呪術師ほどの瞬間火力を得る。

性格:華麗にして傲慢、優雅にして悪辣な太陽

 罪罰の懐古主義に積極的に賛成する一人。家格や実力では、御三家に勝るとも劣らぬ鳳凰堂の正に代表格と言えるエスタブリッシュな気品のある人柄である。だがそれは一面であり、傲慢にして非術師を見下すところはある種御三家を超えている。

 さらに言えば、術師の中でも有用でない者、一般家庭出身の者、彼の言うところの責務を全うしない下劣な者にも態度に出さないが軽蔑している。部下は愚鈍な者と、希少な能力を持った者を多く集めている。

 一応、「術師は無力な非術師を呪害から守るべき」というノブレスオブリージュに忠実である。これ自体は単なる建前でなく、ただ彼の場合「だからこそ我々術師がそれらを管理してやらねばなやない」という本音が加わるだけだ。

②"虚空蔵"芹沢我築

 鳳凰堂と並び称される実力を持つ、罪罰の武闘派棟梁である。不気味な呪力、性格無比な判断力、冷徹な任務遂行能力を兼ね添えた無慈悲な処刑人として罪罰の内外で恐れられている。

 かつては、裏社会に身を置き、暴力団に金で雇われる殺し屋であった。その異能により、社会や集団から孤立し、また呪術界ですら持て余すほどの実力に、いつしか誰も信用しなくなり、呪詛師に堕ちたと言われている。その後、罪罰大君主の正体を探り、場合によっては始末すらする依頼を受けたが、いかにしてかその標的に忠誠を誓い入団したのだ。

生得術式:「蝕穴操術」

 禁忌の次元、「あの世」とでも言うべき異界への門を開く術式。いわゆる反物質に満ちた空間であり、ここに入った者は最後消滅する。芹沢だけが、安全に中に入ることが可能である。敵には致死の罠に、自分には安全地帯と、攻防一体の技となっている。

技:「不会無」

 前述の応用として、自身の生得領域と同調させることで、瞬間的に異界に身を置き、攻撃をすり抜けることもできる。

極ノ番:「畢竟無」

 異界から反物質を取り出し、武器にする奥義。物体や呪力と接触することにより、爆発反応を起こして対消滅する極めて危険な攻撃である。

性格:暗黒の処刑人

 前述の境遇からか、他者を信用せず、粛々と任務に当たる。相手の人柄を見ることはしないが、能力に対して評価は適切に行い、無駄な派閥争いや利益確保に走ることもない。礼儀作法は、棟梁位階として一通り押さえているが、本質的には殺し屋時代から変わらず、目標達成の為に自他を駒にする冷酷な仕事人である。

③"韋駄天"光孝堂二兎隆成

 京都に地盤を持つ、古き術師の家系、光孝堂家の当主。皺の深い、齢七十を越えるかという老人のような容貌だが、実年齢は四十過ぎくらいと言われている。

 光孝堂家は、検非違使の時代から京都の治安維持に関わりを持ち、実際表の顔は、京都府警の特別顧問である。そのため、その権力を利用して、京都府周辺の呪術事件に、罪罰は総監部よりも速い情報収集・解決・隠蔽を行うことが可能である。

生得術式:「神足通」

 身体を生得領域として、領域内時間を加速する。シンプルだが強力であり、加速すれば思考時間も相対的に稼げる為、一分一秒の戦闘では、攻防・移動・奇襲全てを賄える術式である。

領域展開:「二兎匆匆原」

 自らの加速を最大化し、更に周囲の相対時間が鈍化する領域。この領域内では、如何なる者も、光孝堂に足で追いつくことも、目で捕捉することもできない。ただし、体内時間を加速することで、自らの持つ時間(寿命)も消費し、その副作用で今の老人のような姿になってしまった。

性格:時間の遅れを嫌う完璧主義者

 鳳凰堂と並ぶ名家の出であり、同じく術師の貴族制による支配を考えている。術式の特性と合わせて、貴人たる自分のリソースを下々に無駄に割くことも嫌っており、総じて効率主義的である。部下は、量より質を選び、中々の実力者が揃っている。

④"摩那斯"与原巌虎

 棟梁階級きっての武闘派。生得術式はなく、呪力を活用した格闘術を極めている。元々は、龍神道場という、シン・陰流と同じ術式に寄らない術師流派に師事していた。何らかの確執で出奔し、いつしか罪罰に身を置くようになった。

 呪力の有無に関わらず、格闘術、武道に並々ならぬ学習力を持っており、京都府の裏格闘界でのし上がってきた経歴も持つ。現在は、罪罰の資金源の一つである「暗闘試合」のプロモーションも行なっている。

生得術式:なし

戦闘技術:「応報拳」

 生得術式のない彼の持つ秘技。術式に寄らない持前の高い学習能力によって、受けたり見たりした相手の体捌き・足運びまで、戦術を模倣する。

 術師であれば、呪具の使い方や動きの癖、呪霊であっても、超人的な呪力操作をそっくりそのまま学習し、返してしまえる。相手の戦術を理解してしまえるので、筋肉の動きや視線だけで相手の出方を予測することすら可能である。術式の開示は彼にとって悪手でさえある。

性格:鷹揚だが抜け目ない火龍

 豪放磊落で典型的な武芸者と言った佇まい。しかし、儀礼や上下関係は一通り熟し、粗にして野であるが、卑ではない組織人としての一面も持つ。罪罰内での武闘派術師には彼を慕う者も多くいる。

⑤"如意輪"四十九院田村菱陰

 鳳凰堂や光孝堂と並び、御三家と熾烈な争いを行う名門、四十九院の次男として生まれた。有力家の出ではあったが、次男であり相伝を継いでいない彼は術師の家系としてよくある部屋住みに過ぎなかった。しかし、罪罰の伸長にいち早く同調し、組織成立に一役買い、また四十九院の繋ぎ役に漕ぎ着け、一族内外の権勢を持つに至った。

生得術式:「飛天光」

 掌打一発分に相当する、呪力の光弾を発射する術式。一発一発は、直接打撃するのと変わらない威力であるが、彼の場合は秒間数十発もの弾数を誇り、その物量で弾幕すら張る広範囲攻撃である。

 通常、呪力を遠距離に投射するのは消耗がはげしく、威力も距離に応じて減衰するものだが、生来の類稀な呪力量と再生産力により、全くデメリットになっていない。

技:「断界壁」

  簡易領域のように、呪力を相殺する障壁を球状に生成する技。前述の呪力量により、飛天光と同時に使用もできる。

極ノ番:「光奔」

 自らの呪力を最大出力にして、周囲に光弾を撒き散らす。この時、無差別に全てを破壊すること、精度を最低まで落とすことで、一発の破壊力は数十倍に昇華する。

性格:権謀術数が趣味と実益を兼ねる策士

  鳳凰堂や光孝堂と並び、貴族趣味を追求する者の筆頭格である。彼らと違い、最初から後継者の道が閉ざされていたことがコンプレックスであり、自らの実力で切り開いた現在の地位に執着し、しかし現状に甘んじない強い野心が見え隠れする。

⑥"徳叉迦"賀東残月

 罪罰の武闘派棟梁の一角。爬虫類のような鋭い眼光の持ち主で、全体的に蛇のような威圧感を放つ人物。術師、呪霊問わず強者と死闘することに大きな価値を見出しており、時には任務よりも優先する一面を持つ。

 加々地という同門の術師と共に、「双頭蛇」としてその武名を馳せた。現在も二人揃えば、抜群のコンビネーションを誇る。

生得術式:「蟒蛇化法」

  蛇の様な身体的特徴・蛇を模した特殊能力を獲得する術式。彼の爬虫類の様な双眸もその一種である。

技:呪毒生成

 呪具や打撃に、毒の様な性質の呪力を纏う。

極ノ番:「蛇視」

  視線を合わせた者、あるいは眼から発する呪力の延長上にある者の精神に干渉する一種の催眠術。受けた者は、否応なく石のように固まり、意識がなくなる。

一級呪具:「朽縄」

 普段は普通の双刃剣だが、呪力を込めると即座に蛇腹状に展開する呪具。

技:「長虫追い風」

 対面で防御を固めている敵に、展開した刃を手首のスナップで無防備な背中を襲わせる技。

性格:何物をも戦に費やす毒蛇

  戦闘狂で平時には豪快な雰囲気を醸し出す。しかし、いざ組織内で利権争いがあると、不敵な態度で海千山千な技量をのぞかせる。諧謔と風流にも通暁した知的さがある一方、本質は闘争に生き甲斐を見出す武辺者である。

⑦"阿修羅"豪峨堂燕慶

 二条城の中庭を務める番人。彼は代々、御庭番の家系とされ、更に遡ると織田信長に行き当たると誠しやかに囁かれる。

 御庭番らしく、平時は庭師のようなことも行い、剪定や庭園造りをしている。有事には、二条城の最強の警備員と化し、その戦闘力を指して「阿修羅」と称される。

生得術式:「影武者操術」

  傀儡操術の亜種で、呪術界の文献では織田信長もこれを用いて青銅の軍団を率いたとされる。二条城の中庭に建てられた仁王像は、この術式を媒介するために存在する。彼の紫色の呪力を注ぎ込みことで、仮初に動く二体の護法戦士が敵を粉砕する。

技:「修羅の闘法」

 六つの武器を術式で式神として操作する技。これにより、阿修羅のように三面六臂あるかの如き連撃を行う。

性格:修羅の如き番人

 大君主に特に忠誠を誓い、またその為に日夜庭園を静謐に保つことに心血を注ぐ。仮に、侵入を許した場合、彼の鬼神の如き鉄槌と狂信が暴れるだろう。

⑧"妙見"晴明院葛葉

 罪罰のシステムエンジニア担当の幹部。呪術界と言えど、現代的情報化社会の一部である以上、監視カメラやスマートホンのような機材にも理解を持ち、隠蔽に利用する必要がある。

 また、近年は呪詛師の中にもクラッカーやインターネットを介した呪害を起こす者もおり、呪霊もまた電子機器に対応することもあり、電算機室主任として日夜、株価操作・カバーストーリー工作・写真や動画削除で応戦している。

生得術式:なし

戦闘技術:「経済拳」

  日夜忙しなく、インターネットやシステム管理に従事しつつ、戦闘にも備えなくてはならない棟梁として彼がたどり着いた境地。

 戦闘しつつ、常にネット上でもカウンターハッキングするという特異な戦闘法である。両手はホームポジション、両脚は蹴り技と正に「経済的(無駄のない)」体術である。

性格:あらゆる事態に警戒する仕事人

 深い隈からは、日夜ハッキングに備え常に警戒する仕事ぶりが窺える。しかし、彼はひと時たりと油断せず、常にヒヤリハット、重大インシデントを未然に防ぐ燻銀である。

⑨"阿難陀"築喜鹿

   大君主の最側近。小柄な老人だが、大君主への忠誠心は棟梁内で最大である。平時は車椅子で、言葉も覚束ない大君主を陰に日向支えている。

生得術式:なし

戦闘技術:「合気道」

  呪力により強化した身体能力で、あらゆる攻撃に合気道によるカウンターを返す。

性格:忠臣の鑑

 大君主への忠誠心は誰よりも深く、少なくとも今の罪罰大君主への儀礼や新人へのイニシエーションは彼が整備したとされる。また、術式は保有していないものの、術式や格闘術を総合した戦闘技術への知識や理解は他の追随を許さない。

 これだけのクセのある実力者や特殊な技能者が、なぜ一つの組織に加入したのか、あまつさえ大君主という一人へそれぞれの忠誠を捧げたのかは謎である。総監部の内偵によれば、大君主の術罰は一罪の精神罪罰である罪さ罰、罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰

罪罰影業組合と大君主に幸あれ!





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