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選ばれなかった人間=私は自己肯定感が低かった。


創作大賞の中間結果が発表された。

スマホをスクロールしても当たり前に私の名前はない。『ちぇっ、中間すら通らねぇーのかよ』そう思いながら落ちている缶を勢いよく蹴った。

それもその筈、私の文章力は小学3年生レベルで止まっているのだ。

大人になって居心地のいい環境を自分で選んではそこに身を置いてきたから忘れていた。


この世界は選ばれる人間と選ばれない人間で線引きされている。

振り返るといつだってそうだった。小学校の作文大会、部活動のスタメン、クラス委員、何かのオーディション、頑張った大賞。

自分を表現する特定な何かが〈とある誰かの基準〉により選ばれるか・選ばれないかの2択で自分自身を評価すると、それはそれは自己肯定感は低くなるだろう。


ころころころと転げ回る缶を眺めながら思い出す。

あぁ、こんな風に缶を蹴るのは16年ぶりだ。

あの頃、落ちている缶をよく蹴っていた私はいつだって選ばれない側の人間だった。


 * 


中学からの友人がいる。彼女の名前はK。

20歳の頃、毎週末のように彼女が家に遊びに来てはそのまま泊まっていた。 

相武紗季にそっくりな外見のKは、目が大きくて、笑うと笑窪ができるのがチャームポイント。顔まわりはシャギーが入っている軽めのミディアムヘア。そして天然で面白い性格で中学からモテモテだった。

胸はぺったんこだったけど、今にも折れてしまいそうな細い線をした身体は女の私でも守ってあげたくて、いつだって彼女を励ましたかった。


 彼女と一緒に繁華街を歩くと通った男性は必ずKを二度見する。その視線の先は私ではなく必ずK。

ですよねー、私じゃありませんよねー、あの人ちょっとタイプだったんだけどな~。

ほんの少しの切なさと劣等感を常に抱えていた。モテる友人がいる人はこの切ない気持ちを理解してもらえるだろう。 


「ちぇっ、所詮私はKの引き立て役かよ」と落ちていた缶をよく蹴っていた。


だけど、いつも明るくて天然で面白い彼女のことが本当に大好きだった。そしてKの何が凄いってイケメンや高スペックな人からのアプローチにいつもごめんなさい!とお断りするのだ。

そして、彼等は手に入らない彼女をより一層と追いかける。それが男という生き物だ。


そんなKの彼氏がいない期間は数年単位だった。

とりあえず付き合うという選択肢がなくて、奥手で慎重派。

そんな彼女は、7歳年上の医師から交際を申し込みされていた。 


出会いの発端は1ヶ月前。私がデートを重ねていた男性に飲み会をセッティングしてもらったのだ。 


私の相手は6歳年上、身長180センチ、切れ目と胡散臭い関西弁が特徴的な大学病院勤務の若手医師。

両親が開業医であるボンボンの彼は親からプレゼントされた珍しい型の外車を乗り回していた。

彼の車に乗せてもらい繁華街の細い道を通ると、誰もが足を止めびっくりした顔で彼の車を見続ける。それはまるで自分が注目を浴びているように錯覚して少しの快感だった。注目される側の心情を理解するのと同時に、私はどんなに踠いてもそちら側の人間にはなれない事も悟った。

そんな彼のプライベートは同僚の医師すら住む世界が違うと言うほどの派手な私生活だった。


当時交際を申し込みされていたが、若さだけが取り柄の私が付き合ったところで1回やったらポイっとされる事は学がない私でも想像できたし、彼女の4〜5人位きっといただろう。

つまり私のミッションは彼の知人を『出会いがない!』と嘆く迷える子羊達に紹介することだった。 

そして飲み会の日、彼は同僚を連れて来た。  


身長は175センチ、ゆずの北川君にそっくりだった。一般的なサリーマン家庭で育った彼は、両親に学費の負担をかけないように血を滲むような努力を重ね国立の医学部にストレートで受かったという努力家。

勉強と仕事に忙しい為に、恋愛は億劫になっていたそうだ。そして関西弁の医師とは特別仲が良いわけでもなく←重要 

当直明けで本当は寝たいけど懇願されて来たらしい。

えっ、待って…嘘でしょ!?

関西弁は胡散臭いけど、いい人連れて来たじゃーーーん!!


注)私は大阪出身なので、家族の前ではコテコテの関西弁です。


本当は私が彼を狙いたい所だけどグッと堪える。でも本心では、最初に北川君と出会えたらと願ったよね(笑) 


で、もちろん北川君はKの魅力にノックアウトされ連絡先を交換した。 


私もKに、両親が開業医のボンボンより、北川君は庶民の我々と価値観が合いそうでいいではないかと彼女の背中を押した。

な、なのに、彼女は2回目のデートで交際を断ったのだ。理由を聞くとお酒が好きなのが引っかかったという。

そのお溢れ私にくださぁぁーーい!と思わず心の中で叫んだよ。 


その後も二人で合コンに励んだが、

どの男性もKの魅力にノックアウト!はい、彼女の無双状態!!

カンカンカンカーン!!私、敗北…。



そして奥手な彼女は連絡先すら交換せずごめんなさい!のパターン。なんやねん!この飲み会!!

そう、Kと一緒にいると、私はいつも選ばれない立場だ。

それでも、ヤツとは付き合えない。彼の為に貴重な20代前半の時間を使う訳にはいかないし、弄ばれるのはごめんだ。

なにより私は身の丈に合った幸せが欲しかったから。

そんな自分が彼氏を作るには、戦う場所を変えるしかなかった。


Kがいない空間で、私のやり方で。

ただ、関西弁のボンボンには拍手を送りたい。飲み会で初めてKを見る男性は目を見開いてロックオンされるのに、 彼だけは彼女のファニーフェイスに全く見向きもせず、ひたすら私の良い所を力説し、胡散臭い関西弁で自分を売り込んだのだから。それはKも北川君もドン引きするほどに。

おまえさん、それキャバ嬢に披露し続けて腕を磨いたお得意なネタじゃねぇかよ…と思いながらも、少しだけ嬉しかったよ。関西弁に憧れてる人が話す変な関西弁だったけどね。だって彼、東北出身だったんだもん。(大学だけ大阪だった)

だけどよ、あん時ありがとな。


そんなKはもちろん今も大切な友人である。 

だけど、あんた…北川くんは本当にもったいないことしたよ。

* 


創作大賞の選ばれない立場を経験して、あの頃の甘酸っぱくて、缶を蹴っとばしていた日々を思い出した。 


私は誰かに選ばれるために文章を書いているのだろうか?


 それは違う。


 自分が生きてきた日々の中で、感じたことを残したいから書いているんだ。


 だけど、これからもコンテストなどお祭りには参加したいな。 自己満足の為に書いてその結果として誰かに賞賛されたら、形として残ったらそれは素晴らしいよね。 


そして、悔しさからこのnoteを生み出せたのだから、きっと無駄な感情ではなかったのだろう…

なーんてね。16年前に缶を蹴り続けた私は、こんな風に都合よく解釈する図太さを既に持ち合わせていた。

*


 あらゆる創作を生み出したクリエイターの皆様、来年こそと心の中で握手して敬礼しましょう。 そして中間を突破した人の健闘を祈ります☆



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