きまぐれな夜(9)
今日も眠れないので、「BAR きまぐれな夜」を開けた。
しばらくすると、店のドアが開いてお客様が入ってきた。
若い女性と、子ども。
子どもは、女性にしがみついて離れない。
「 あのー、お願いがあって参りました。
今夜、一晩だけ、この子を預かっていただけないでしょうか?
いつもは、この子が寝ている間に仕事に出て、
起きるタイミングで帰っているのです。
でも、今日はどうしても寝てくれなくて、
ママ、行っちゃ嫌! と言って聞きません。
困り果てていた所、あなたのお店の看板の明かりが、
私の家から見えました。
ご迷惑なのはわかっています。
でも、食べていくのがやっとの暮らしで、
仕事を休むと更に大変になるのです。
どうか、助けてください。」
(つづく)