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UNKNOWNMIX

90年代半ばに佐々木敦がCreativeman Disc内に立ち上げたレーベル、UNKNOWNMIXからは7枚のアルバムがリリースされていた。その当時、彼が雑誌媒体等で取り上げる未知のレーベル/アーティスト達は兎に角刺激的で謎で面白可笑しく更には異様にかっこよかったりと、クロスビートやremix、骰子にエレキング、GROOVEにSWITCH(UNKNOWNMIXと冠した連載ページがあった)なんかの彼の文章は兎に角読み漁っていた。そんな彼が満を持して始めるレーベルだもの、期待するなというのが土台無理なお話しで。


レーベルカタログ1番のhi-speedは、骰子のホームテーパー(自主カセットを佐々木さんに聴いてもらうというナイスな企画)なんかに音源を送ったり、モダーンミュージックでは相当数のカセット(なんでも10作品位がズラッと並んでいたそう)も販売していたようだが、そんな彼等は後になんとディスコ/ハウス的な音に変貌(更に内メンバーの2人がDeavid Soulと名乗っての作品もそんな路線)を遂げるわけだけど、それ以前は所謂チェンバーミュージック/レコメン的な脱臼演奏がたまらない作風だった。ジャケも手掛けるミズヒロさんによると、フランスのレーベルAYAAぽさも滲んでいたそうな。佐々木さんが書いていた記事やレビューでレコメン周辺も聴いてはいたので、hi-speedの手探り感というか辿々しさ(これは意図的だったのかも)みたいなものも根底にはあった様な。帯にある「迷走するプチアヴァンギャルド」が言い得て妙。今は亡き黒色エレジー/OOIOO/HarpyのKyokoさんも参加(ここでの彼女のヴォーカルスタイルたまらない)。


カタログ2枚目は、ex.想い出波止場の故・大谷さんとパラダイス・ガラージでドラムを叩いていた吉澤二郎による身長2m。想い出波止場にいた人ですので(?)ぶっ飛んだ世界観がなによりも痛快で、「いつだって女子高生には花束を」を名曲であり迷曲。パリペキン〜ロスアプソンを渡り歩いた故・軍馬さんが1曲歌って(?)ます。


3枚目は後に篠原ともえのアルバムにも楽曲を提供する事になるHOI VOODOOも、また奇妙過ぎるスタイルで物議(?)を。アルバムには石野卓球が「全然落ち着きなくて狂っててマジ好みです サイコー!」と賛辞を寄せていたが(その流れで篠原ともえへの曲提供に繋がったのでしょう)、この作品を一体どう捉えるべきなのかは、当時も今もよくわからない。KUKNACKEさんやAhh! Folly Jet等も参加した、ストレンジミュージックと取り敢えず定義してしまうけれど、久しぶりに聴いてみて改めて思ったのは、当時よりも断然ポップに響いていたという事に心底驚いている。因みにこのCDの帯についてた応募券を郵送するともれなくHOIビデオが貰えたのだけど、その音は全てKUKNACKEさんによるもの。その後、ほい名義で一枚歌モノ7インチをリリースしていたけれど、これは山本精一さんも大変お気に入りの一枚。

当noteではお馴染み、4枚目はDUB SONICの「DUB FANTASY」。ご自身が手掛けた印象的なドローイングがあしらわれた素晴らしいジャケットが一際目を引くけれど(これのペンダントもロスアプソンに置かれていたんですよね)、ライナーは虹釜太郎。傍らにはタケさんが自筆で「太陽の塔みたいな大きなモニュメントを街のまん中に作りたい」と記されている。そう、このアルバムは音、ジャケットのアートワーク、虹釜さんのライナー、タケさんご自身の文章、そしてこちらも自筆であろうリスペクト欄。それら全てがこの作品の魅力を伝えてくれている。

5枚目は、イルドーザーによるいかしたデザインで発表されたAsteroid Desert Songs(以下、ADS)。ディスカッションバンド(?)なんて言われていた事もあったようですが、それもあってかリリースが遅れに遅れたという逸話も。ADSはAhh! Folly Jet、故・Magic Alex、Compuma、アキラザマインドからなる電子コラージュエレクトロその他諸々バンド(バンドと記させてもらいます)。ヤン富田にグランドマスターフラッシュ、ジョン・ケージチルドレンなんて取り敢えず言いたくなるけれど、彼等の流動的でより自由な解釈ったらば似た空気を醸し出してるバンドには今も昔もなかなかお目にかかれない本当に稀有な存在だったんだなと今も改めて思う。その後メンバー3人でスマーフ男組を始めるわけだけど、こちらはよりエレクトロ色濃厚でADSとはまた違った魅力が満載であった。


6枚目はDOTさん。帯文を山辺店長が書いているのだけど、「ドランクンテクノ」と称した、酒飲みに云々と綴られる横揺れがなんとも不思議な感触なのだけど、それこそがDOTワールドと言えるかと。ムードマン(彼のレーベルから一枚7インチもリリースしている)曰く、「スピーカーの右から左にゴリラが移動する」みたいな文章を何処かで読んで買いに走りましたよね。後にPANTYからリリースされる12インチもDOTワールドは健在でニヤニヤさせられた事を思い出した。他にも嶺川貴子さん、ex.リトルフジコのいまいさやかさん等のライブのサポートをしていた時期もあったり。

前述した身長2mの片割れ、吉澤二郎さんのソロユニット、Arrow Tourはその身長2mは全く異なるエレクトロニックな作風からまず驚かされる。1曲目の「Airport For Music」というタイトル、帯にある「旅する電子音楽」という部分だけ切り取るだけでも色々想起させられる。フロアライクではないドラムンベース的な側面も時折飛び出すけれど、全編で聴こえてくるノスタルジーや叙情性といった瞬間を内包した雰囲気というものは、後にChildiscからリリースされたセカンド、サードアルバムにも受け継がれていく事となる。


といった7枚は個人的に全部クラシック。当時UNKNOWNMIXからは他にHair StylisticsやKUKNACKEさん等もアナウンスされていたんだけど、実現せず…が、以前わたしがzineでKUKNACKEさんにインタビューさせてもらった際、UNKNOWNMIXからリリース予定だったアルバムの話しを少ししてもらえたんだけど、どうもおそらくどこかにマスターが残っている筈と言ってましたので…ので…

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