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Martijn Althuizenさんの製作したボードゲーム『Tix』について書いてみる。

2020年に逝去されたMartijnさんの命日2月1日に、noteを書きました。

Martijnさんの製作したボードゲームを紹介したのですが、とあるシリーズの紹介を後回しにしていました。

それが『Tixel』シリーズになります。
そして、シリーズの最も核のルールを持っているのが『Tix』です。

プレイ中の盤面が、こちらです。

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何?この積木?
そうお思しょうが、れっきとしたゲームのプレイ中です。
おそらく、史上最抽象レベルのボードゲームと断言してもいいでしょう。

プレイヤーの使う駒(ピース)は、立方体です。
2人対戦ですので、それぞれ色の異なる駒を持って遊びます。
立方体と言いましたが、実は正方形のタイルでも構いません。

Nestorgamesで販売されていた『Tixel』には、拡張駒として『Tix』の駒があります。
立方体ではなく、正方形のタイルです。

盤面は、正方形マスの6×6サイズ。
駒は8個づつ持ち合います。
勝敗は、自分の手番のときに何もできなくなってしまったら負けです。

これが『Tix』の概要となります。
遊び方を説明する前に、このゲームのルーツについて少し書いてみます。

ルーツは「世界最古のGame System」?

『Tix』が発表されたのが2009年。
その1年前に、前身となるゲームをMartijnさんは制作していました。

『SFIRS』。
意味は「球」です。
立方体なのに球という、お前は一休さんかと突っ込みたくなりますが、とあるゲームコンポーネントをモチーフとして制作されているゆえのタイトル(あくまで、Martijnさんはこう考えたの)ではないかと。

それは、『Marbles』。

日本だと『ビー玉』といったほうがわかりやすいです。

どれくらい前にあったかは定かではありませんが、Boardgamegeekでは紀元前3000年としているので、最古級のゲームでしょう(Geme Systemというカテゴリでみても最古だと思います)。

この『ビー玉』を使った遊びを真似て作ったのが『SFIRS』で、さらに簡素化したのが『Tix』です。

簡素化の1番大きいポイントは初期配置です。
『SFIRS』には初期配置があり、駒の動かすルールの他に、さらに初期配置から駒を動かすルールもありました。
『Tix』は、初期配置をなくして、盤面上に何もない状態から始めます。
したがって、初期配置から駒を動かすルールは不必要になり、よりシンプルなルールとなりました。

『Tix』の遊び方

先手後手は、それぞれ8個の駒を持ちます。
交互に手番が回ります。

手番のアクションはどうするかの前に、盤面に置かれた駒の状態について説明します。

駒の状態は2つ「アクティブ」と「非アクティブ」があります。

アクティブ:
マス目に対してナナメ45度に傾けて駒を置いている状態です。
非アクティブ:
マス目に合わせて駒を置いている状態です。

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左:アクティブ状態の駒
右:非アクティブ状態の駒

違いは、アクティブの駒は手番で移動することができますが、非アクティブの駒は移動することができません。

−−プレイヤーの手番にできるアクション:

以下の2つのアクションのうち1つを行います。

1)手持ちの駒を盤面に置く
手持ちの駒を盤面に置きます。
駒は、アクティブ・非アクティブどちらの状態でも置くことができます。
ただし、
・タテヨコに接するマスに、非アクティブの駒があると、アクティブの状態では駒が置けません。
・タテヨコに接するマスに、非アクティブの駒がないと、非アクティブの状態では駒が置けません。

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左:アクティブ状態の駒を置く
右:非アクティブ状態の駒を置く
※黄色ミープルくんのいる駒です。

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左:アクティブ状態で駒が置けない例
右:非アクティブ状態
で駒が置けない例
※赤色ミープルくんのいる駒です。

2)盤面の駒を動かす
・盤面上の自分のアクティブ状態の駒を動かすことができます。
・飛車(またはルーク)と同じく、タテまたはヨコに一直線に動きます。

【動かすときのルール】
・動かす駒は、一度非アクティブの状態にします。
・動かした際、隣接するマスにあるアクティブの駒は、もらい事故で非アクティブの状態にします。
・移動して止まったマスで、駒をアクティブ状態に戻します。
※ただし、止まる予定のマスの前方に他のアクティブ状態の駒がある場合は、そのマスで止まることはできません。
※※また、止まる予定のマスに隣接するマスに非アクティブ状態の駒がある場合は、動かした駒は非アクティブの状態で終了して、ボーナスアクション(後述)ができます。

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【コマを動かす例】
左上:1番左の黄色ミープルくんの駒を移動します。
右上:駒を傾けます。
左下:右へ一直線に動かします。移動すると、赤色ミープルくんのいる下の駒と上の駒がもらい事故で非アクティブ状態に変わります。
右下:移動が終わって、再度傾けてアクティブ状態にします。

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黄色ミープルくんの駒を赤色ミープルくんのいるマスに移動することはできません(移動終了後、アクティブ状態にも非アクティブ状態にもできないから)。

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【ボーナスアクションの取り方】
左:左にある黄色ミープルくんのいる駒を動かします。
右:止まったマスの上に非アクティブの黒い駒があるので、非アクティブの状態で移動が終了して、ボーナスアクションを得ます。
(補足:1つ手前のマスも、下に非アクティブの白い駒があるので、同様にしてボーナスアクションを得ることができます)

−−ボーナスアクション:

ボーナスアクションは、以下の5つのアクションのうち1つを行います。

1)手持ちの駒を盤面に置く
2)盤面の駒を動かす
 
…1)2)ともに、通常のアクションと同じです。
(補足:再度、駒を動かしてボーナスアクションを得ることもあります。)

3)非アクティブ状態の駒をアクティブに変更する
ただし、非アクティブ状態の駒に隣接するマスに駒があると、アクティブに変更できません(駒を傾けることができないので)

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(例)
黄色ミープルくんのいる駒は、アクティブに変更できます
赤色ミープルくんのいる駒は、アクティブに変更できません

4)直前に動かした駒以外の盤上の駒を持ち駒に戻す
言い換えると、ボーナスアクションを得た駒は、持ち駒に戻せません。

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【例1】
左:黄色ミープルくんのいるアクティブ駒を動かします。
右:この状態だと、直前に動かした駒は持ち駒に戻すことはできません(なので、赤色ミープルくんが乗っているのです)。

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【例2】
左:黄色ミープルくんのいるアクティブ駒を動かします。
中:さらに、もう1つの白のアクティブ駒を動かします。
右:この状態だと、直前に動いた赤色ミープルくんの乗っている白の駒を持ち駒に戻すことはできませんが、最初に動かした黄色ミープルくんの乗っている白の駒を持ち駒に戻すことができます。

5)パス(ボーナスアクションをせず、手番を終了する)

−−ゲームの終了:

・プレイヤーの手番に、自分の駒を置いたり動かしたりできないと、負けになります。
・千日手(互いに駒を動かし続けて、ゲームが終了しない状態)の場合は、アクティブ状態の駒の数を比べて、多い方のプレイヤーの勝ちになります。同数の場合は、引き分けになります。

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勝ちの例:
白番だと、中央にあるアクティブ駒を動かせます(さらに、持ち駒も1つあります)。
黒番だと、持ち駒もなく、動かせるアクティブ駒もありません。
白の勝ちになります。

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引き分けの例:
どちらもアクティブ状態である唯一の駒を上下に動かして、終了になりません(駒を手に戻すなどの他の手もありますが、進展は見えません)。
引き分けになります。


丸いものを四角くするゲーム

以下の写真を紹介します。

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駒がアクリル立方体のデラックス版な『Tix』です。
盤面のマスは「正方形の凹み」になっています。
非アクティブ状態の駒は、凹みにハマって動けなくなります。

・真っ直ぐ弾いて飛ばすような動き
・弾き飛ばされた駒は、穴にハマって動けなくなる
・他の駒と接触(タッチ)したので、ボーナスアクション獲得

このように『Tix』のルールは、『ビー玉』遊びっぽいことが感じ取れたのではないか、と思います。

四角いものが丸くなる。
そんなアブストラクトゲームが『Tix』です。


ここから余談です。

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このおじさん。
名前は井上井月(いのうえせいげつ)
本名ではなく「井月」は俳号です。
つまり俳人です。

「井月」は、「井戸に映る月」という意味ですが

「四角い月」

という意味でも読めます。
『Tix』はまさに「井月」。
そんな印象を実感しました。

そして後継作へ……

今回は『Tix』の紹介でした。
こののち、Martijnさんは『Tix』をベースにしていくつかのゲームを作っていきます。
これらの話は、また別の機会に書きます。

また、なぜ続編の記事を2ヶ月以上も伸ばしたのかというと、

Nestorgames『Tixel』を注文して、
先日届いたから

です。
当初、ルール説明の図は、既存のルールPDFから引用する準備をしていましたが、折角なので現物の写真を使うことにしました。
改めて、発注をお願いしたサニーバードカフェさんにお礼を述べたいと思います。

ありがとー。わーい。

では。


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