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「日本パズル協会」と「パズルゲーム」の微妙な関係について仮説を立ててみる

前回、「パズルゲーム」について書いたのは「日本パズル協会」について気になることがあったので、その予備知識としての用意でもありました。

「パズルオーディション」の結果が…

2019年7月19日に、日本パズル協会が「第1回パズルオーディション」の概要を協会自身のサイトにアップしました。

受賞作品は、10月および11月に開催される協会主催のイベント「東京パズルデー」にて展示されました。
……で、ここで仮説が1つあります。実のところ、「東京パズルデー」を盛り上げる目的での「オーディション」開催で、すでに「パズル懇話会」や「関西ぱずる会」などのコミュニティに事前情報を伝えていた、と考えられます。
この事態は特に問題はありません。オープンな公募だと多くの質の良い作品が集まる保証はありません。「オーディション」の成功を考えると、クローズ側での根回しをしておくのは、いい策略だと思います。

その一方、募集要項を見た際に気になったのがありました。「募集するもの
」に書かれている内容です。

商品として製造、販売できるパズル作品
※“答え”があり、それにたどり着くことを楽しむものが基本です。
相手が必要なもの(ゲーム)や、答えのない積み木やブロックは含みません。

太字にしたのが、自分が気になった箇所です。
『ウボンゴ』などの「ボードゲーム」は対象外だろうと読み取れます。複数人数だと結果的には勝敗を楽しむこととなるので、協会が考えている「パズル」の楽しむ基本からズレてしまうからでしょう。
ただ、そうすると「パズルゲーム」は募集の対象に入るのか、が気になりました。で、同年10月5日にオーディションの結果が出ました。

ペンシルパズル以外の受賞作品のなかで、

「パズルゲーム」はありません。

いやあ、まさかここまで避けているのかと驚いたし、協会の説明として

ジグソーパズル、クロスワードパズル、キューブパズルなど、パズルの種類はたくさんあり、その製造メーカーも異なる業種に属しています。
多くの人にパズルの素晴らしさを実感してもらい、さまざまなパズルの更なる普及に繋げることを目的に、業種の壁を越えた活動を目指して、設立されました。

と書かれているのが、馬鹿馬鹿しく思いました。
なぜそんな事態になったのか、仮説を立てていきたいと思います。

日本パズル協会の設立メンバー

協会概要を見ると、日本パズル協会の設立は2014年4月に設立されて、そのときのメンバーは、

ジグソーパズル:やのまん、ビバリー
出版系パズル:ニコリ
知恵の輪などのパズル:ハナヤマ、トライボックス、クロノス

の6社(株式会社は略しています)。設立以後、協会会員の増減はないようです。
前回のノートで書いた「パズルゲーム」を販売しているメーカーで協会の会員なのは、ビバリーのみ。ドリームブロッサム、キャストジャパンは会員ではありません。
ということで協会自身「パズルゲーム」は関わりが現時点ではほぼない、といっても言い過ぎでない状況です。

ついでに余談。パズル雑誌ニコリで、新しいパズル関係の書籍や商品を紹介するコーナーがあり、パズルショップ・トリト(運営はクロノス)が筆を取っています。そうすると、商品については、ほぼ協会会員関連に固まってしまい、「パズルゲーム」はほぼノータッチ、という傾向になっています。

なぜそんなことになったのか。次の3社、ハナヤマ、キャストジャパン、 Thinkfun、の関係を追ってみると、なんかいろいろ事情が見えて怪しいのです。

『RushHour』はどこが売る?

前回紹介してお預けしたThinkFunの「パズルゲーム」、『Rushhour』。

Wikipediaから引用すると、

ラッシュアワーは、芦ヶ原伸之が考案したパズルの商品名である。このパズルはスライディングブロックパズルに分類される。俗称として「納車ゲーム」と呼ばれることもある。
芦ヶ原はこのパズルを1980年代に雑誌で発表した。その後、いくつかの彼の著書で取り上げられた後匹見産業から"TOKYO PARKING"の名称で発売された。1994年にアメリカのバイナリーアーツ社(現在の名称はシンクファン社)からこのタイトルで発売された。

とあります。で、バイナリーアーツ(BinaryArts)社のときに日本で輸入販売したのは、ハナヤマでした。販売契約を結んでいる間に、BinaryArtsからThinkFunに名称が変わり、しばらくして契約が切れたのかハナヤマから商品を販売しなくなりました。
その後、輸入販売が復活したのですが、その契約した会社がキャストジャパンです。

ということで、協会設立以前ではあるものの、協会会員が「パズルゲーム」を扱っていた時期がありました。推測ですが、キャストジャパンのThinkFunとの契約は協会設立の時期2014年よりあとかと考えています(ハナヤマが再契約していた可能性もあり得たかも知れません)。

ついでの話。ハナヤマのパズル商品に『はずる』がありますが、2016年5月以前は違う名称『キャストパズル』でした。変えた理由は定かではないのですが、キャストジャパンと似ているため、なんらかの誤解が生じる可能性が高いため、と推測します。2016年時点で、キャストジャパンからThinkFunの商品を販売しているのは、ホームページの資料「2016年総合カタログ」から確認できます。

「かつのう」と「STEM」

日本パズル協会が「パズルゲーム」に取り組む場合、もう1つ大きな壁を持っています。特別顧問の理学療法士・川畑智さんと手掛けており、自分自身のブランドとも言える「かつのう(活脳)」があります。この提携した活動自体には何の問題もありません。

実は、アメリカの方でも「STEM(教育)」があります。STEMとは、
S:Science(科学)、T:Technology(技術)、E:Engineering(工学)、M:Mathematics(数学)の頭文字を取った、IT社会とグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を多く生み出そうとする、「21世紀型の教育システム」という考え方です。

「STEM」は、他の分野を柔軟に組み入れる傾向もあり、例えばA:Art(芸術)も追加した「STEAM」というのもあります。

アメリカの教育・玩具分野の企業は、この「STEM」も意識していますし、輸入代理店のキャストジャパンも「STEM」をおさえつつ、販売促進に利用います。

日本パズル協会も「STEM」について全くの無知ではないでしょう。ただし、自ら主導している「かつのう」ブランドの維持をしつつ、「STEM」との両天秤で手綱をとって推進していくのは、なかなか困難で大変だと思います。ならば、「かつのう」でしっかりと堅実に活動する選択を取るのは賢明でしょう。

とは言いつつも、実は…

前回のノートで、自分なりの「パズルゲーム」の定義をしてみました。引用すると、

1:盤面とコマなどのコンポーネントを用いて、
2:決められたルールから、
3:解答を導けるような問題をたくさん用意できる

です。この定義ですが、パズル雑誌ニコリの「ペンシルパズル」と照らし合わせてみると、

1:盤面と記号など描かれた印刷物と筆記道具を用いて、
2:決められたルールから、
3:解答を導けるような問題をたくさん用意できる

1の書き換えだけで「パズルゲーム」の定義と同じことが言えます。ついでに言えば、1はどちらもコンポーネントのことを指すので、これもほぼ同じ内容と考えます。
…えーっと、思いっきり暴言を吐くとですね、

「ペンシルパズル」は
「パズルゲーム」であり、
「紙ペンゲーム」である。

ということで、次のノートではその根拠を探るチャレンジをします。


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