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グリーの特許訴訟

先週土曜日午後2時のわずか1時間に1000件弱のアクセスが有って、びっくりしたので、アクセス解析を見たらグリーの話でした。せっかくなので、続報を入れます。誰かが紹介してくれたんですね。ありがとうございます。

差し支えなければ、お礼を言いたいので、リンク先を教えてください。

続報とはいっても、アメリカのスーパーセル訴訟ではなく、グリーが保有する日本特許の審決取消訴訟です。

対象特許もカードゲームをサーバー装置で行えるようにした別の特許群になります。

具体的には対戦型のカードゲームの第2のフィールドがいわゆる場で,第1のフィールドが手札の所(デッキ),第3のフィールドが山札の所の図が載っています。

なんと第五世代まで分割を続けた案件の権利化にかかわる裁判です。

【日本の出願経過】

日本の代理人が出願事務所から有名な知財ブティックの訴訟事務所に変わっていると以前お伝えしました。権利行使を考えたのか、分割に分割を重ねることで、はるか昔の審査請求7年時代やアメリカのCIP と同様のような息の長い手続きを行っています。

これは相手の製品に当てるために特許庁継続中の玉を維持しておいて、いざというときに相手のイ号製品が含まれるようにクレームアップしますから競合他社は要注意です。

次に控える第六世代が今も継続中ですから。

じゃあ何故そう言えるのかというと今回の第5世代の基となった2013年の基礎出願は3月4日に行いました。そこでは三年間の審査請求の猶予があるのに 翌4月17日に行って早期の権利化を図っています。実際に半年後の 9月13日に登録しています。権利化を図ったのはカードの配置と補充の移動方向です。

基礎出願の登録と同時に第一世代の分割を同年8月29日に行いこちらもわずか2ヶ月で通しています。選択するポイント上限のクレームです。

ここまでサーバー装置に関する同じ年の出来事です。

第二世代も第一世代登録と同時に分割しますが、ここから動きが係争を想定したものに変わったように思えます。

それは4年後の2017年6月2日まで審査が長引いたことや、第三世代の分割が 引っ張って遅らせた?2017年2月20日なのがひとつの根拠です。

また、第二~四世代はいずれもプログラム特許なので、係争を考えた変更だと思われます。

そろそろネタ切れに近いのか第四世代では拒絶査定不服審判まで引っ張り、

その審判請求日に今回の審決取消訴訟の第五世代出願を行っています。

同じく第六世代も第五世代の不服審判請求日に出願しています。

第五、六世代はまた先祖返りしてサーバー装置にしており、公開クレームは全く同一ですので補正により変化します。

【アメリカでのスーパーセルに対する訴訟状況】

アメリカではコロナの影響もあり余り進んでいません。

4月に新たな訴訟をしているのでそこだけアップデートですね。

4月の対象特許は

US 10,610,771 B2 Program, Method, And System Of Transmitting Or Receiving Message 07/30/2013

US 10,549,187 B2 Server Device, User Device, Method For Controlling Server Device, Recording Medium, And System 04/30/2013

他になります。

今回も安定の権利化直後の提訴となり

「The ʼ149 Patent duly and legally issued at 12:00 a.m. Eastern Daylight Time on April 21, 2020.」

権利化できた4月21日にスーパーセルを訴えています。出来立てホヤホヤですね。

最初に書いた相手の製品にあてるようなクレームの作り方について

まさに行っているように思えるものが見つかったのでご紹介します。

CL1は以下の通り

For example, claim 1 of the ʼ149 Patent recites:

[preamble] A game control method at a terminal used by a user, the method comprising:

[a] receiving first data indicating one or more messages sent from one or more users

[b] displaying on a display of the terminal, a chat screen comprising a game icon for entry to a game and the one or more messages based on the first data;

[c] in response to the game icon being selected by the user, transmitting second data indicating that the game icon is selected;

[d] displaying a waiting message indicating waiting for an entry of at least

one of the one or more users to the game in the chat screen after transmitting the second data;

[e] receiving a third data indicating a user of the one or more users who has selected the icon for the entry to the game while the waiting message is displayed;

[f] displaying information indicating the user who has selected the icon for the entry to the game in the chat screen while the waiting message is displayed based on the third data;

[g] when a number of a group associated with the game icon and a number of the users who have entered the game satisfy a first relationship, displaying a player group composed of the users who have entered the game in the chat screen;

[h] receiving fourth data relating a battle by the group; [i] displaying the battle on the display based on the fourth data; and

[j] displaying a result of the battle in the chat screen.

イ号に対するあてはめはクラロワのチャット機能で(a,b)のエレメントは下記になります。

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(a、b)のエレメント上でゲームの他のユーザのエントリーを待っているメッセージを出すのが(c、d)のエレメントです。

その後(e、f)のエレメントの説明図は下記になります。

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(g)のエレメント上でプレイヤーのグループに入ると、

続く(h、i)のエレメント上でゲームが始まります。

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(j)のエレメント上で「i」のアイコンをクリックすることでバトルの結果がスクリーンに表示されます。

図は訴状から。

当てはめは完ぺきに思えるので、権利行使のために公開状態を維持するのは

お金を考えないと有効ですね。

【その他の訴訟状況の振り返り】

表の見方ですが、右から提訴日、グリーの対象特許、スーパーセル対応となります。

青字がクラクラ、緑がそれ以外、と言っても最近はクラロワになります。

ボクシングのグローブが提訴マーク

5角形の楯が不存在確認訴訟になります。

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ちなみに、これ以外にも権利無効化の動きとしてIPR,PGRを行っており(2020年6月末時点)、

グリーは2件提起、

スーパーセルは35件提起しています。内訳は

門前払いの「No Claims Instituted」が11件

「No Petitioned Claims Unpatentable」2件 これはいずれもPGR

「Some Petitioned Claims Unpatentable」 US 9,597,594 B2に対するPGR

「All Petitioned Claims Unpatentable」7件 これもいずれもPGR

残り「Pending Institution Decision」は審査するか検討中14件

コロナが問題になった2月以降で15件もPGR,IPRを行っています(IPRは内2件)。

スーパーセルにとってグリーからこれだけアクティブに訴訟を提起されると、

先行して無効化する活動にも有効性を見出しますよね。

【US訴訟案件の対応JPのファミリー特許】

日本でグリーがスーパーセルに提起した訴訟案件は、また別のファミリー特許です。

こちらも今回の審決取消訴訟案件と同様に分割を繰り返しています。

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【まとめ】

子供がカードゲームにハマって居るのである程度ルールも分かるつもりなのですが、

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これは紙のゲームをデジタル化しただけのように思えます。

デッキへの置き方はルール通りのように思え、基礎出願の時にも紙のゲームのルールは有ったんじゃあ無いのか疑問です。

さすが3/4は通してしまう特許庁でも、単なる置き換えに過ぎないのはどうなんでしょうかということで

拒絶査定したところ、今回の裁判所の判断は有効ということのようです。

遊戯王はミレニアムに出ていたと思うので2013年にはすでに紙では公知の内容になります。

後で調べたら「遊☆戯☆王」は、
1998年にバンダイから発売された『遊☆戯☆王カードダス』が初だし。
カードファイト!! ヴァンガードは
 2011年

だそうです。

今回の引例がYouTubeというのも時代の流れを感じますが

判決の詳細は弁護士の岩永先生のブログ


にまとめられているのでそちらを見てください。

おっしゃるように29条柱書違反というのが理解ができます。

第6世代の拒絶理由に是非。

それにしても、訴訟をアメリカで起こすと高額な事務所フィーがかかるのですが、全く訴訟スピードが落ちないですよね。

何がここまでかきたてるのか、お聞きしたいところです。



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