半導体業界をゲーム理論で読み解く

人間は合理的な意思決定をするという前提を基に、ゲーム理論が経営学で用いられています。

数学的な話も多くて、ビューが稼げないはずなので、数理を除いて、寡占状態の同時ゲームと、交互ゲーム、その混合で例示していきます。

今回もフィリップス、シーメンス、日立製作所の半導体分野を例に検討してみます。

とは言え、半導体分野のインテル、サムスンがメインでフィリップスとの提携から発展したTSMC(台湾積体電路製造)ぐらいしかメインプレーヤーとして登場していません。

画像1

設備投資の同時ゲーム

半導体基板の微小化の法則を述べる ムーアの法則では、その進歩が経験則の線で引かれているので、その線に対しての投資戦略を各社検討している。

いずれの企業も現在の立ち位置と、1年後にどこまで微細化しなければならないのかが分かっていて、競合、外部を含めてこれで動いているために同時ゲームと言える。

ムーアの法則とは、半導体業界において、一つの集積回路(ICチップ)に実装される素子の数は18ヶ月ごとに倍増する、という経験則。米大手半導体メーカー、インテル(Intel)社の創業者の一人であるゴードン・ムーア(Gordon E. Moore)氏が1965年に発表した見解を元に、カリフォルニア工科大学(Caltech)教授だったカーバー・ミード(Carver A. Mead)氏が提唱したもの。

半導体は産業の米と言われ、あちこちで使われるために景気に大きく左右される。また個別の商品、例えばiPhoneの爆発的な販売を予測して在庫管理が必要ともなる。ここで製造工場はクリーンルームや高額なスパッタリング設備、半導体露光装置などなど設備投資が必須であり、参加者は限られる。実際、そのため現在では参加者が限られている。

さてゲーム理論ではこの状態をクールノー競争といい、各社の増産、現状維持、減産のいずれかを選択する。

他社の戦略を考慮に入れつつ、自己の利益を最大化するような戦略を実行したときに成立する均衡状態をよく聞くナッシュ均衡である。今回は生産量ではなく、知財らしく微細化にどこまでコミットして開発するかに注目してみます。実際に、

半導体業界で長年引き合いに出されてきたムーアの法則(Moore's law)。法則と言っても物理的な根拠に基づくわけではない。いわゆる“経験則”であり、これまでの半導体、プロセッサーの進化がそうなっている事実に気がついたというものだと言える。また、有名になりすぎて、メッセージとして1人歩きを始め、事実の指摘から開発目標に主客が転倒した感もあった
2016年には、長らくムーアの法則の持続を業界全体として保証する役割を担ってきた隔年報告書が、この法則を業界の発展の“物差し”として使い続けることを断念した。アナリストやメディア、そして一部の半導体メーカーのCEOでさえ、ムーアの法則の終焉を伝える記事を数えきれないほど書いている。

ムーアの法則に従いトランジスターの微細化によって、性能を2倍にするペースを維持するという前提に、最新の2世代のチップ技術の開発をインテルとサムスン、TSMC(台湾積体電路製造)が凌ぎを削っています。

記事をあたると

インテルが2015年に市場投入した最新世代のチップ技術は14ナノメートルプロセスだが、全面展開は当初予定よりも約1年遅れだった。次世代の10ナノメータープロセスも、当初のスケジュールから遅れている。
台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は、ほぼ同世代の技術をすでに出荷しており、iPhoneのチップに採用されている。

つまり、微細化の将来を悲観したインテルは達成出来ないと、手綱を緩め、

反対に愚直にTSMC は突っ込んだ結果差が生まれたようです。

また、サムスンやLGは5Gの通信チップなどでも強く、ファーウェイが追っている。

さてTSMCは前述の企業と異なり既存の設備をそのまま維持して古い半導体基板も製造を継続します。

つまり、ポーターのマトリックスでいう金のなる木にしています。対するサムスン電子やインテルは先代、2世代ぐらい前までは維持していますが、新しい設備投資のためスクラップアンドビルドを行っています。

ある材料やさんとしては継続した利用が見込めるTSMCを重要視すると言っています。

ゲーム理論のナッシュ理論では均衡しますが景気変動により常時母集団がずれていきます。

撤退の逐次ゲーム

日本がDRAM などで半導体分野のトップを張っていた頃から、各社の撤退戦が起こっています。

当時よく言われていたのが、キャノンやニコンの製造装置が優秀過ぎて、導入するだけで同じものが造れるために比較優位が模倣されやすい。

アメリカから半導体貿易摩擦を仕掛けられ、韓国に譲ってしまったなど言われていたのがバブルの時代でした。

体力争いから脱落する判断をいち早くしてシーメンスは2000年にインフェニオン、日立製作所は2003年に後のルネサスエレクトロニクスを三菱電機と分社化しています。

フィリップスは2006年9月29日に20%弱の株式を保有したうえでKohlberg Kravis Robert & Co. (KKR)へ売却しNXP Semiconductorsとなりました。

日本企業のNECなど判断が遅れた企業は傷跡が重くのし掛かっているようにも見えます。

東芝のようにNAND メモリーにスライドさせた企業も有れば、そもそもインテルも転地で今の位置にいます。

混合のゲーム

実際の半導体業界は混合というか、参加者も多く、米中経済摩擦など政治色まで含まれるので複雑です。だからこそモデリングして単純化してから検討することを行っている。

また、一口に半導体と言ってもメモリーから通信チップから、グラフィック、GPU など多種多様な種類があり、またその開発度合い、成熟度でもバリエーションが有ります。どこに参加し、しないのか、が選択肢です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?