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ZOZOTOWNの創造的破壊(前編)―15年前、CGで作られた架空の”街並み”は必要だったのか

こんにちは。ZOZO広報の松尾です。最近買い物をしていたら、お店に「アドベントカレンダー」が並んでいました。もうあっという間に年末ですね。みなさん、2019年はどんな一年でしたか?

私がZOZOに入社したのは昨年12月なのですが、それからもう一年が経ちました。本当に変化の大きな一年でしたが、一つひとつ乗り越えてこれたな…と振り返っては、少しほっとする思いでいます。


12月15日、ZOZOは「ZOZOTOWN」誕生15周年目を迎えます。前社長の前澤さんが退任し、また大きな節目を迎えることになった私たちZOZOですが、これまでの15年間も、多くの、そして時に大胆な変化を遂げながら成長してきました。

…ここで、みなさんに質問です!15年前のZOZOTOWNがどんな姿だったか、知っていますか?

実は15年前、初期のZOZOTOWNは、今とは全く違う姿をしていました。そこで今回は、ZOZOTOWNが15年前からどのような変遷を遂げてきたのか、さかのぼって紹介してみたいと思います!


15年前に誕生した、想像と創造の行き交う街 “ZOZOTOWN”

「ZOZOTOWN」という名前は、“「想像(SOZO)」と「創造(SOZO)」の行き交う街”というところに由来を持ちます。私たちの会社名「ZOZO」も、ここから名付けられたものですね。

ZOZOTOWNが誕生したのは、今から約15年前の2004年。初期のZOZOTOWNは、こんなふうにCGで作られたバーチャルな店舗が立ち並ぶ、“架空の街”からスタートしました。

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▲2004年、ZOZOTOWNがオープンした当時のトップビジュアル。

それまでは、店舗ごとに異なるURLやユーザーインターフェイス、ドメインを持つ個々のサイトとして運営していたのですが、お客さんからカートや決済システムの統一化のリクエストを受けて、「お店が集まる街」「想像と創造の行き交う街」をコンセプトとしたファッションECサイト「ZOZOTOWN」を立ち上げました。当時の店舗は、その数25店舗。ZOZOTOWNという名前の通り、まさにひとつの「街並み」だったというわけです。


しかも、このひとつひとつの店舗は、出店ブランドの担当者の方とディスカッションしたり、店舗によっては建築家やインテリアデザイナーさんに設計図を書いてもらったりして、CGを駆使しながら実在する店舗の世界観を忠実に再現しているんです。

こうして見てみると、かなり細部までこだわって作り込まれていることに驚きませんか…?

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▲CGで作られた店舗の外観と内観を一部紹介。この街では、モノレールに乗って海に浮かぶ島の上のお店に遊びに行けたり(右下)、クリスマスにはデコレーションが施されていたりしたそうです(左上)。

でも、今のZOZOTOWNには、こうした街並みはありませんよね。2010年、この街並みはZOZOTOWNから姿を消してしまうのです。


―――約15年前のZOZOTOWNは、なぜ、このような街並みを作る必要があったのでしょうか?そして、なぜ、その街並みをなくしてしまったのでしょうか?


ここからは、ZOZOTOWNの歴史的変遷を詳しく知る、デザイン部のAtoCさん、DAZZYさんに話を聞いてみました!

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左:佐藤敦施さん(通称:AtoCさん)
2004年入社。ZOZOTOWNの立ち上げから担当し、以降ブランディングやプロモーションなど幅広く行う。現在はプライベートブランドチームのプロダクトオーナー。

右:佐藤大介さん(通称:DAZZYさん)
株式会社ZOZOテクノロジーズ デザイン部 クリエイティブディレクター
2006年入社。ZOZOTOWNのサイト・アプリのUI/UX、プロモーション、映像まで、ZOZOのクリエイティブを幅広く担当。


―――さっそくですが、15年前のZOZOTOWNはなぜ、CGで「架空の街」を作ったのか教えてください!

AtoCさん:ZOZOTOWNがこの街並みをつくった主な理由は2つあって。

1つ目は、お客さんに対して「ZOZOTOWNはネットの中にあるファッションモール」だということを伝えたかったから。2つ目は、ブランドさんに対して「ブランドの世界観をしっかりと表現することで、リアル店舗と同じようにブランドイメージを作り上げます」ということを伝えるためだね。

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当時、お客さんにとって「インターネットで服を買う」ということは当たり前じゃなかったんだよね。それを、ブランドの持つイメージや雰囲気をCGを使ってお客さんに伝えることで、リアルのブランドイメージを取り込もうとしていたんだ。

たとえばこれを見て!どちらもサイトTOPのビジュアルで、インターネットの中のファッションモールを表現してる。これは、ZOZOTOWNオープン当時である2004年と、その2年後の2006年のサイトTOPのビジュアル。

▼2004年のサイトTOPのビジュアル

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▼2006年のサイトTOPのビジュアル

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どちらにも「街並み」があるのは同じなんだけど、2004年のグラフィックは、本当にあってもおかしくないぐらい「写実的」でしょ。結構リアルだったから、ネット上にあると思われずに「ZOZOTOWNってどこにあるの?」って聞かれたこともあったぐらいだった(笑)。

だから、2006年にはあえてグラフィック要素を強めてバーチャル感を出してるんだけど、伝わるかな? これも、「インターネットで服を買う」ことが当たり前じゃない時代だったからこそ、ZOZOTOWNというファッションモールが「インターネットの世界に存在する」ということを強調しようとした例だね。

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ZOZOTOWNのアイデンティティへ

―――ファッションECに対する認知度がまだまだ低い時代だったからこそ、ZOZOTOWNはたくさんのお客さんに来て楽しんでもらえる場であるということを、ブランドさんにも認知してもらうことが必要だったんですね。

AtoCさん:そうだね。当時、ブランドさんの中にはインターネット上に出店することに抵抗のあるお店も多かったと思う。だからこそ、ブランドさんの世界観を忠実に再現して作った「ファッションブランドが立ち並ぶ街」は、ブランドさんに「ZOZOTOWNはネット上にある服を売る場所」っていうことを認識してもらって、共感してもらったり、仲間になってもらうのにぴったりだったんだよ。そして、広告やCMの効果もあって、やがてこの街並みはサイトTOPのビジュアルの枠を越えて、ZOZOTOWNのアイデンティティとして確立されていったんだ。

DAZZYさん:その後も、「リアルよりも夢があって楽しい場所」をつくろうと、アイコンである「街」という世界観の中で、例えば、ファッションSNSやリアルショップ検索、Q&A、ブログや壁紙・待受け画像ダウンロードのサービスまで、ファッションに関するあらゆるニーズに応えるファッションポータルとして色んなコンテンツを増やしていったんだよ。


2010年、「街から人へ」。サイトを全面リニューアル

―――ZOZOTOWNに並ぶお店の数は、気づけば、数百にまで増えていたと。

AtoCさん:そう。こんな感じでグイグイきてたZOZOTOWNなんだけど、2010年を節目に、この街並みはサイト上から姿を消すんだよね。それまで「街」というアイデンティティを大切にしていたZOZOTOWNが、「街から人へ」というテーマのもとリニューアルし、この街並みを無くすという決断をするんだよ。

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破壊なくして創造なし――コンセプトは、「街から人へ」

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▲リニューアル後のZOZOTOWNサイトTOP。街並みの姿はどこにもない。


―――街並みのビジュアルは、まるっきり無くなってしまっています。

DAZZYさん:2010年にもなると、ネットで服を売ることも、買うことも、受け入れられてきていたんだよね。その一方で、当時のZOZOTOWNのサイトは、ユーザビリティがいいサイトとは言えなかった。例えば、あのバーチャル店舗のグラフィックと街並みもCGとFlash*を駆使して作っていたから、当時のZOZOTOWNのサイトはかなり重たかった。時代がどんどん変化する中で、無理が生じるようになっていたんだね。

*FlashとはWeb上でインタラクティブな表現を制作できるアプリケーション。インタラクティブなアニメーションや3Dなど高度な表現ができる一方で、脆弱性問題や読み込みが遅いなどの問題もあった。

AtoCさん:それに、いくらブランドの持つ雰囲気をバーチャルで伝えようとしても、リアルには敵わない。だからこそ、WEBならではの強みを生かしたブランド訴求を目指し、コンセプトを「街から人へ」切り替えて、リニューアルを遂げていったんだね。

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破壊なくして、創造なし

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▲“No destruction, no creation. (破壊なくして、創造なし)”
当時のクリエイティブディレクターが作ったビジュアル。サイトのトップに出したり、広告用ビジュアルといった明確な用途はなかったらしいのですが、とりあえず「記念に作っとこ!」ということになり、作ったとのこと…! のちに企業広告として屋外広告に使われた。


―――リニューアル当時を振り返ってみて、いかがでしょう。今振り返っても、やはりあの街並みは、ZOZOTOWNにとって必要だったと思いますか?

DAZZYさん:正直、街のアイデンティティとして思い入れもあった分、なくなってしまうのは、僕自身も切ないというか「もったいないな~」って思いはあったね。ブランドイメージとしてよく機能していたし、コミュニケーションする上で使い勝手も良かった。まだまだ使えるでしょって。でも今となっては、正解だったんだなって思えるし、今考えてみても、あの街並みは、ZOZOが何者なのか?を広く伝えるのに十分な役割を果たしたと思うよ。

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AtoCさん、DAZZYさん、ありがとうございました!

こうして「街から人へ」をコンセプトに全面リニューアルを実施し、商品中心のサイト構成に生まれ変わったZOZOTOWNは、導線の単純化をはじめ、ユーザビリティ向上につながる改善を積み重ねました。

―――ここから、ZOZOTOWNのユーザビリティ改善は、さらに加速していきます。(後編につづく)


・・・・・・・

(編集後記)
あの街並みを初めて見たときは、率直に「何これ!すごいな…!」と思いました。一方で、当時を思うと、時間もコストもかかったことは想像にたやすく、だからこそ今回は「なぜあの街並みが必要だったのか」「それをなぜなくしてしまったのか」という問いもぶつけてみました。

プラットフォームとしては、サービス/商品を提供してくれる「売り手」と「買い手」の両方が集まる魅力的な場を目指す必要がありますが、魅力的な売り手がいなければお客さんには来てもらえないし、お客さんが集まらないところに売り手も集まらない。まさに「ニワトリと卵」問題ですよね。

「なんとなく好きになってくれる100万人より、熱烈に愛してくれる100人のファンを」*というのは、スタートアップのインキュベーター「Yコンビネーター」の共同創業者であるポール・グレアム氏がAirbnbの創業者達に贈ったアドバイスですが、ZOZOTOWNはまずは世界観の表現にこだわり、共感を大切にしたことで、出店してくださるブランドやメーカーさんをはじめ、仲間とつながり、多くのお客さんに来てもらえるファッションモールに成長することができました。(*)『Airbnb Story/リー・ギャラガー(著), 関 美和 (翻訳)』より引用

もちろん、15年前のZOZOTOWNに「あの街並みが必要だったか」は結果論でしか語れないかもしれませんが、あの「街並み」がZOZOTOWNの初期の急成長を支えたこと、そして、その後の拡大につながったことを思うと、ZOZOTOWNにとってあの街並みはやっぱり、ZOZOにとって、とても大切な歴史なのだと感じました。


みなさん、今のZOZOTOWNは好きですか? 5年後、10年後のZOZOは、どんなことに挑戦しているのでしょうか。

後編では、ユーザビリティの追求に踏み切ったZOZOTOWNが、UI改善などの利便性の向上にとどまらず大切にしていることを紹介したいと思います◎

後編もぜひ読んでください!次回もお楽しみに~!

(Kaho Matsuo)