続編 zokuhen

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続編 zokuhen

続編と申します。読みやすいよう、タイトルに文字数を記載しています。 <Instagram>https://www.instagram.com/zokuhen2105/ <Twitter>https://twitter.com/zokuhen2105

最近の記事

距離(564文字)

「ずいぶん長いこと歩いてきたなあ」 「そうだねえ」 「歩き始めたのが、いつだったか思い出せないよ」 「本当だね。もっとずっと若かったような気もする」 「そうだよね。いまよりずっと、若くて神経質だった」 「少しずつ、一緒に歩くなかで分かりあえたのかもね」 「うん。昔は、自分の速度しか知らなかったから」 「相手に合わせることにも慣れてなかったね」 「合わせたくない、と不満に思ったこともある」 「知ってるよ」 「バレてた? そうだよね。でも、本当なんだ」 「う

    • どうなっちまう(298文字)

      俺はどうなっちまうんだろう。 これまで何度も、数えきれないほど、そう思ってきた。 学校、恋愛、仕事、家族、お金、友人、健康。 その先に不安や恐怖や嫉妬を感じたその時、 俺はどうなっちまうんだろうといつも思ってきた。 そして、その度に、なぜだかどうにかなってきた。 学校も恋愛も仕事も家族もお金も友人も健康も、 いろいろあって右往左往して、どうにかなったんだ。 そして今、また俺は思う。どうなっちまうんだろう。 今度こそは、どうにもならねえんじゃねえか。 もうダ

      • 自分らしさ(229文字)

        自分らしくなんて、わかるはずがない。 親、名前、出生地、目の色、髪の癖。 何一つ自分では決められない、自分という存在。 そんな、自分以外に規定された自分なのだから、 時に頼りなくもしくは不平等に感じるのは当然だ。 そして、そんな不平等な存在のらしさなんて、 分かるはずもない、共感すらできないのだから。 それでも、一緒に生きていく。 自分という殻で、生きていく。 それは、自分を規定した何者かと 一緒に生きていくことと同じなのだ。 自分らしさは、自分を育んだ

        • まぁ、いいか(396文字)

          一番強いものを知ってるかい 最新の兵器より 最強の兵士より 最大の恐竜より 最小の細菌より どんなものよりも強いもの。 それは〝まぁ、いいか〟だよ。 その人に起きるあらゆること、 辛いこと、重要なこと、 別れ、出会い、お金、運、 生きることそして死ぬことすら。 〝まぁ、いいか〟は飲みこむんだよ。 〝まぁ、いいか〟は、恐ろしい敵だ。 君がするあらゆる決断そしてあらゆる行動に、 〝まぁ、いいか〟は潜んでる。 油断すると〝まぁ、いいか〟は君を飲みこみ、

        距離(564文字)

          変化(326文字)

          なにかを変えようとするとき 態度で示そうとすると たいていうまくいかない 相手に変化を促しているからだ 自分の態度を見て忖度して 相手が動いてくれることを期待している 相手が忖度してくれているからこそ こちらは後でいくらでも言い訳ができる そして相手の忖度に満足もできる だが必要なのは態度ではない 言葉でもない 反省ですらない 行動で答えを出しすことだ ささいな だが確実な行動 たとえば優しさや愛情を示すことだ それは分かっている 分かっている

          変化(326文字)

          そんなもんだ(358文字)

          私はあの子より仕事ができないとか 俺はあいつより頭が悪いとか 他人とくらべて焦って そのうちこんな能力のない自分には うれしい未来なんてないだろうと思う 華やかな明日や憧れのキャリアは 仕事のできるあの子や 頭の良いあいつに来るだろうと そうだろう 実際、そんなもんだ 愚鈍で無粋なひとに スポットライトはあたらない 退屈な発信者の動画に再生回数がつかないのと 同じことだ 大切なのは スポットライトの当たらない人生を どうとらえるかだ 仕事がで

          そんなもんだ(358文字)

          添えて(318文字)

          死ぬとその存在がいなくなる 思い出は残る 残るからつらいのだ 死ぬ お別れだ いいことも 困らされたことも 愛おしいことも 哀しいことも ここまでだ すべてお別れ これ以上それは増えない 思えば 生きるとは増えることだ 細胞も 記憶も 感情も リスクも 宝物もなにもかも 増えていく 生きるほどにそれは一緒に生きる人を巻きこんで 増える 増えていく どんどん そしてある日 死とともにその膨らみは止まる これ以上増えない 増やしあうことがで

          添えて(318文字)

          馬(314文字)

          競走馬にも、いくつかのタイプがあるらしい。 スタート後、全力で走って差をつけるタイプ。 ゴール手前で、勢いよく追い越すタイプ。 馬群からチャンスをうかがう、戦略的なタイプ。 いずれもやり方は違えど、求めるのは同じだ。勝利。 どの馬より速くゴールをする。 そのために最適なやりかたを模索する訳だ。 だが、どうだろう。 馬が、そのプロセス自体を楽しんでいたとしたら。 スタートからゴールまで、数分のその時間自体を、 好奇心に満たされたレジャーだと捉えていたのなら。

          馬(314文字)

          就職(233文字)

          就職って、なんだか窮屈だ。 サイズのあわない靴下を履かされるようで、 うまく歩ける気がしない。 なのに起きているあいだ、ずっと付いてくる。 まるで生まれつきそこにあった染みのように。 あるいはもとから定められたルールように。 ならば、やめてしまおう。 やめて、やめた後に残った道を歩いてみよう。 そこには何があるだろう。 苦労か、貧困か、可能性か。わからない。 なぜなら、それは誰に定められた道でもないからだ。 会社には属さなくても、社会には属せる。 きっ

          就職(233文字)

          そんじょそこら(167文字)

          そんじょそこらの私だが そんじょそこらで終わる気はねえ そんじょそこらの夢だけど そんじょそこらで叶いやしないぜ そんじょそこらの性格と そんじょそこらの器用さで そんじょそこらの人生おくり そんじょそこらの暮らしをしてきた そんじょそこらの過去だったけど そんじょそこらの未来にはしねえ そんじょそこらの経験いかして そんじょそこらにはない人生おくるぜ

          そんじょそこら(167文字)

          ひと(128文字)

          あこがれよりまぶしく さよならよりあっさりと ありがとうよりあたたかで よくぼうよりしつこく いかりよりもえあがり こうかいよりはげしい じゆうよりのびやかで あいじょうよりおおきく やさしさよりつよくて ゆうじょうよりたのもしく じゆうよりとうとい こころのいきもの それがひと

          ひと(128文字)

          心(234文字)

          せめて心だけでも 身体とは言いません 一秒だっていらない せめて心だけでも わたしにくれませんか あなたの見つめるそこに わたしはきっといないはず あなたがつかってるその予定表に わたしの名前はどこにもないでしょう それならばすこし ほんのすこしだけでいい その心をわたしに わたしだけに分けてください そうすればきっと この震えも この嫉妬も この欲望も この悲しさすら 一緒にかんじてもらえるはず 触れるほどちかい距離で 離れても忘れない言

          心(234文字)

          その前に(173文字)

          お前が老けるその前に なにかをしなくちゃならないんだ お前が諦めるその前に どこかへいかなくちゃならない お前はじっとそこにすわって 俺の覚悟をまっている 身じろぎもしないその薄くらやみで 俺が立ちあがるのをまっている そうしてる間にときは経ち いつしかお前は老いていく かすかな希望をいだいたまま お前が老けるその前に お前が諦めるその前に そのくらやみを照らせるように

          その前に(173文字)

          すすめ ぼく(202文字)

          すすめ ぼく はしをわたれ みちをかけろ ときどきじてんしゃのうしろにのって たまにはじどうしゃのせきにすわって ぼくは すすむ どんどん すすむ すすんださきには きっとともだちがいる おやまもある さめだっている たまにはこわいはず でもだいたいたのしいはず だから ぼくは すすむ あつくても さむくても すすむ みんなついてきてるかな みんないっしょにいってくれるかな きっとだいじょうぶ すすめ ぼく

          すすめ ぼく(202文字)

          べらんめえ(349文字)

          べらんめえ口調のあの親父に聞いてみたところそのやり方では四方八方うまくいかねえってことなんで何とか工夫しなきゃなんねえなと反省しきりな訳だが、お前がいうよりも容易くはねえ。その答えを探してるそれ自体が俺にとっては苦労だし工夫だし苦役ってものなんだがいまいち伝わってないのがなんとも歯がゆい。とにかく、まずは一歩ぶらっと街に出なくてはと思うんだがどうにもこの布団から出る気が起きない。足も出ない手も出ない。舌だけ出してみるかチラッと。そんなことでのんのんと毛布にくるまっていると気が

          べらんめえ(349文字)

          自動車(214文字)

          ぼく自動車になりたい。 自動車になったら、タイヤをうんと回して、 見たことのない街までいきたい。 見たことのない街でエンジンをふかして、 またあたらしい道を走る。 時速は100キロ以上だす。 エンジンはフル回転。 アクセルは全開。 けど、らんぼうには走らない。 滑るようにスピードをあやつる。 ぼくいつか自動車になれるだろうか。 なれなかったら、なにを目指せばいいのだろう。 あの子を乗せてきっと走りたいから、 ぼくは今日も自動車になれるよう練習をする。

          自動車(214文字)