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優秀な東大院卒を雇うのは死ぬほど簡単

こんにちは。

僕は東京大学の修士2年生です。
優秀かどうかは知りませんが、一応内情はそれなりに知っています。

さて、僕の場合、帰国して一月経った、9月ごろからまず技術職につくかビジネス系の職につくか悩みました。

東大理一に入り、院も同じ専攻に進んだので、周りの子は技術職がほとんどです。
ならZoeも技術職でいいじゃん?と思われると思うんですが、別に僕は研究が好きじゃなかったんです。

研究は本当に向き不向きがありまして、正解がないのはもちろんなんですが、結論が出るのさえ数年かかることもあります。せっかちで飽きっぽい僕にはこれが結構苦痛でした。
また、生粋のゼネラリストの僕は、知識の幅が広く、どんな話でも大体理解はできる一方で、一つのことを極めるのはあまり得意ではありませんでした。
しかし研究ってのは、もろにその能力が必要です。

さらに迷ったのが、ほぼ気まぐれで出したと言っていいシリコンバレーに行けるビジネス職インターンに通ったことです。
まあ当然、2000人ぐらい受けて12人しか通らないという狭き門だったわけですが、素のまんま受けて通ったので、自分はビジネス職の素質があるんだというのを実感しました。
実はなんとなく自覚はあったんですが、いざ結果として出されると違うものです。

と同時に、例えば自分が研究者を集めまくって12人しか枠のない研究者選抜のようなものに通るか?と考えると100%無理だと思いました。
以上を踏まえ、ビジネス職に絞ることにしたのです。

そんな風にしていよいよ募集する企業を探し始めたとき、驚いたのが技術職の初任給の低さです。
僕は要は技術職を諦めているわけで、僕が6年間かけて無理だと諦めるような職が、ビジネス職と比べても全然給料が変わらないどころか、普通に低いこともあるという事実に驚かされました。

大体技術職の院卒の初任給の相場は、月給23~27万ぐらいです。
賞与抜きで年収にすると、276万~324万ということになります。

や、低すぎじゃない?


相手にしてるのは院卒ですよ。ただの大卒でも、もちろん中卒でも高卒でもない、専門分野の知識をきちんと持ち、研究者として鍛え上げられたエリートです。
それがこの初任給は夢がなさすぎるとは思いませんか?

一応具体例を出しておきます。僕は化学系なので、大手化学メーカーの技術職を例に出すと、

・旭化成…247,550円
・三菱ケミカルホールディングス…243,500円
・住友化学…257,100円

となっています(各社2020年度募集要項より抜粋、すべて修士卒の月給)。


もう一回言う、低すぎ!!


まあはっきり言って、ビジネス職をはじめとした文系総合職なんてめちゃくちゃ代わりがききますよ。文系全学部+僕みたいな技術職に行かなかった理系組ですから、その数は相当です。

一方、修士卒は、それぞれ固有の専門がありますから、その専門ごとで言えばその数は文系総合職の人たちよりはるかに少ないです。人材としてどちらが希少価値が高いかと言ったら圧倒的に後者でしょう。

しかし、初任給は、例えば上の三社は全て技術職とビジネス職のそれは同額に設定されています。
こんなのおかしいよ。

ちなみに僕は専門であるデータ分析の知識・考え方を活かせるビジネス領域ということで、戦略コンサル・ITコンサル・IT事業会社といった会社を8社ぐらい受けて、3社から内定をもらったんですが、その初任給はこれらよりはるかに上です。
結果として入社する会社の初任給は、月50万を超えています。

別に自慢したいんじゃなくて、この額が標準にならないと今後日本の技術は衰退していく一方だという警鐘を鳴らしたいのです。

僕は就職活動の際、初任給もかなり重要視していました。
よく、福利厚生や年功序列があるから生涯年収は日系のほうが高い!もっと考えろ!みたいに言う人いるじゃないですか。そういう人たちの理屈で言うと、修士卒の技術職は確かに初任給は低いけれども、絶対に給料は上がるし、絶対に雇用が保証されている上に、福利厚生があるから厚待遇だということなのでしょう。

しかし、僕だけでなく今の学生は全然違う風に考えていると思います。
というのも、日本の未来を全然信じていないからです。

この20年、日本の技術は流出しまくり、完全に覇権を海外の会社に取られてしまいました。
半導体なんて日本の独擅場でしたが今は見る影もありませんし、白物家電すらLGとかに負け、ソフトウェアのような新ジャンルではぼろ負けです。
そしてこれからもそれは続くんじゃない?と思っています。だって生まれてから日本が成長したところを一回も見たことがないので。

なので、日本の会社に何十年も勤められるか疑問そもそもその会社が何十年も存在しているか微妙年功序列も30年後まで保たれているかかなり怪しいとにかく現行制度がずっと続くなんて絶対にあり得ないと思っている人たちだらけなんじゃないでしょうか。
そしてそれはとても自然な考えでしょう。雇用契約をする際にそれが永続的に続くことを全て保証しているわけでもないんだから。

そして福利厚生なんて当てにならない代表例じゃないでしょうか。
給料カットは結構難しいですが、福利厚生カットは簡単なので、景気が少しでも悪くなればすぐ切られます。
少し前も、DeNAが住宅手当やフリーランチ制度をソーシャルゲーム全盛期に導入したものの、業績が悪くなった時に廃止して話題になってましたし、実は僕の家族も社宅制度がなくなって引っ越して今の家に越してきたという経緯があったりします。
最近は福利厚生を外注しているところも多いので、そういうところは契約を切れば終わりです。

それでいったら、やっぱり金は強いんです。
確実に享受できますし、日本ではありがたいことに基本給はほとんど下がりません。
なので自分は初任給をかなり重視していたのですが、同様な考えの人は結構多いのではないでしょうか。

というのも、自分はゴリゴリのビジネス職を受けていたのにも関わらず、理系の修士生、それも東大や東工大のようなゴリゴリのトップ大学で研究も普通に好きという層をかなり多く目にしたからです。
理由は、確実に東京勤務であることと、やはり給料でした。

僕みたいな研究向いていない人が抜けるのは別にいいと思うんですが、向いている人たちまでお金を理由に流出しているのは非常にまずいと思います。
院でトップの層がお金を理由に博士に全然進学せず修士を卒業して就職する、という現象は何年も前からずっと起こっていますが、同じような構造がメーカー技術職とビジネス職にもすでに起こっているのです。

もちろん敵はビジネス職だけではありません。
むしろ考え方によってはこっちの方が深刻なんですが、外資の技術職に取られてしまうのです。

まあこれ自体は何十年も前から起こっているんですが、日本企業の技術職の給料が非常に低いのを利用し、その倍以上の給料を提示して引き抜いていくということが少なくありません。
今までは新卒よりも中途に多かった(それが技術流出の一番の原因です)のですが、今後新卒にも広がるでしょう。
ちなみに僕の知り合いは〇芝から台湾の会社に引き抜かれたんですが、給料が4倍になったそうです。そりゃそっち行くわ。

実際、HUAWEIジャパンは初任給43万です。これでもグローバルスタンダードだと低いらしいですよ。

そしてこれは経営者側からすれば大チャンスでもあります。
今院卒の人たちは完全にお買い得、実際の価値よりはるかに安い値段で買いたたかれています
この人たちを引っ張るには、お金を出すことです。

もし技術系新卒が欲しい方、優秀な東大院卒を雇うのは死ぬほど簡単です。

初任給50万/月出せば応募はウハウハ来ます。
以上。



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