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出産② 予想外の連続


帝王切開の当日

2019年6月25日

梅雨入りが遅く
この日もとても天気が良い

わたしはいつも通り高速で片道40分ほどのところにある
病院にむかった


病院につくと妻は非常にリラックスしていた
そして義母もきていた


この日は朝の9時から別のオペがあるため
うちはそのあとになる、とのことで
だいたい11時くらいからかなーと予想をしてた


しかし11時をすぎてもお呼びはかからなかった

オペ用の服に着替えても妻はリラックスしていた


そして11時半ごろ
妻はオペ室にむかった


事前の話では帝王切開の場合
30分ほどで赤ちゃんは出てきてそのままNICUに入るが
その前にちょっとだけ面会の時間があると聞いていた

そして今回のオペは小児科の先生もたちあってくださると


病室で待機するようにと聞いていたが
看護師さんがベッドのセッティングをするのでしばらく
はずして欲しいとおっしゃったので義母と二人で食堂に移動した

小腹がすいたので売店に買い物に行った


ただ義母の前でガツガツと食べるのはどうなのか、と言う思いと
少量の食事では満たされない空腹感との板挟みにあい
考えた結果
小さいおにぎりが3つ入ったやつと
小さいどん兵衛を買った


食事を済ますと妻がオペ室に向かってから
30分くらいは経過していた

連絡がないな、と思ったが待った

義母もそわそわしていた


1時間くらい待ったがお呼びがない


30分くらい、と聞いていたし
実際帝王切開で出てくるまでなら5分くらいとも聞いていた

さすがに不安になる

病室の看護師さんに確認にいくと
ちょうど看護師さんの内線ピッチが鳴り

ちょうど今オペ室から出てくるところです、と報告をうけた



ワクワクという感情はほとんどなかった

とりあえず心配だった



クズみたいな事を言うが
何かハンディキャップがあって生まれてきたら
わたしは我が子を愛せるだろうか、と何度も自分に問うた

ただでさえ成長が他の子より三週間おそく
原因も不明
そしてさらに本来の予定日7/15より
三週間早い出産

予定より長いオペ時間


否が応でも不安は募る


あほでもいい
運動神経も悪くていい
ブスでもいいから
健康であってほしい


そして我が子は2人の助産師さんと小児科の先生とともに
わたしと義母の前にやってきた


あれ?大きい



よくみる普通サイズの新生児に見えた

言われてみれば細いが。

間違ってない?と名前を確認したが合っていた


助産師さんたちに「おめでとうございます」と元気に祝福していただき
無事に産まれたんだな、と実感した


わたしは号泣を覚悟していたが
まったく涙はでなかった

目の前のベイビーが我が子である実感がどうしようもなく湧かなかったのだ

五体は満足だし、顔もちゃんとしている

しかし内臓や脳は問題ないのか?
予想より大きい我が子を前にしても不安は少しも拭えなかった

義母は写真を何枚か撮っていたが
わたしはぼんやりと我が子を眺めていたせいで
1枚しか撮れなかった


我が子はNICUに運ばれていき
あとは術後の妻が帰ってくるのを義母と二人で待った。


助産師さんに渡していたデジカメの画像を病室で確認した

我が子と妻が初めて面会したところを撮影してくれていた


妻は母の顔になっており、子は母に甘えるような泣き顔だった


いい写真だ

すごく泣けた



それにしても妻はすごい

普段も落ち着いているが
オペを前にしてあの余裕

写真でもすっかり母の顔で
我が子を見つめているように見えた


この時点で我が子が生まれた実感はいまだ0に等しく
不安はまったく拭えていなかった


わたしの母も病院に到着しており
3人で妻が出てくるのを食堂で待っていた。


1時間ほど待つとようやく妻らしき人が
運ばれくるのが見えた

なにやら腕を振っているように見える。

あの人は元気だ


やれやれよかった、とここでは安堵した


しばらくすると助産師さんが呼びにきたので食堂を出た。

が、出てすぐに助産師さんが近寄ってきて何やら説明をしてきた。


正直あんまり頭に入ってこなかったが
薬を投与したので現実と夢の間にいる、みたいな事は聞こえた


ん?なに?どういうこと?


よくわからないがわたしは病室のカーテンをあけた



妻はすごい顔をして「痛い」「痛い」と繰り返していた。

あきらかに様子がおかしい。

目の開き方もおかしいし、挙動もおかしい。

そして「無理や。めっちゃお腹痛い」と繰り返し訴えてきた。

錯乱している。

「助けて」の言葉に背筋が寒くなった。


助産師さんが説明してきたのはこのことか、と思ったが
痛がる原因はなんだ?

まだ麻酔は効いてるはずだし、
妻の尋常ではない痛がり方と挙動に
え?手術で何かミスった?

と疑いが目ばえ、
妻がとんでもなく心配になった。

冗談じゃない。事前に「万が一」は聞いていたが。


間も無く担当の先生が現れた。

「オペ中に気持ちが悪くなられたので、眠くなる薬を投与しました。
まだ現実と夢の間にいるような感じですが、もうすぐ効果は切れてきて
意識はハッキリしてくるし、これから痛み止めの座薬をつかいます」

みたいな説明をうけた。


オペ中に気持ち悪くなる人もいる、ということも
事前に説明をうけていたし
実際、麻酔をしていても「触られている」感覚はあるだろうから
内臓を触られていたら気持ち悪くもなるわな、と思ったが

だったら「眠くなる」程度の薬じゃなくて
眠らせてくれたらよかったのでは?と思った。

看護師さんが痛み止めの座薬をもってきた。

妻は「それ使ったら良くなる?」と子供みたいな口調で質問していた。

基本的に人には敬語で話せる人間なので
よぼど余裕がないのだな、と伝わってきた。



ん?なんだこれ


ここまでは想像してなかった。


こういう時
わたしは目と脳の間にフィルターを挟む特殊技能を身につけており
都合よく適度な現実逃避をすることで
客観的になれるのだ


とりあえず妻がこれだけ取り乱して訴えていても
先生と看護師さんは慌てていない様子を見ると
経験済みの事例なのか、もしくはクソほどアホなのか


痛み止めの投与の間、わたしたちは再度
病室から出された。

義母と母には説明された内容を伝えた。


痛み止めは30分ほどで効いてくるとのこと。

この状況での30分は途方もなく長いだろう。


とりあえず励ましてみるが
無駄に安い言葉をかけると逆効果なので言葉は選んだ。

手を握るが、けっこうな力で握ってくる。


とりあえず薬が切れて意識がはっきりしてくるのと
痛み止めが効いてくるまで待つしかなかった。


次第に妻の言葉がいつも通りになり
痛みに耐える時間が少なくなってきた。

落ち着いてきたところで妻がオペの様子を語り出した。


ーー内容ーー

オペ室に入っても余裕があって、
「オペ室すげー」みたいにキョロキョロしていた。
年配の看護師さんが何やら激怒している声が聞こえたが
他の看護師さんに気にするなと言われた。

※これについてはほんまに関係なさそう

オペが始まると確かにすぐに赤ちゃんは出てきて
産声も聞こえた。


ここから縫合?になるが急に気持ち悪くなってきた。
「吐きそうか?」と聞かれたがそういうのではない。
と同時に麻酔してるはずなのに激しい腹痛に襲われた。
どうしたらいいかわからずパニクった。

主治医じゃない先生に
「あんまり動くと危ない」と怒られたが
じっとしていられなかった。

「眠った方がいいじゃないか」という話になったが
赤ちゃんの顔を見せるまでは薬は投与できない、てことで
しばらく投与しなかった。

赤ちゃんと面会して写真撮影されたが
この時、妻はそれどころではなかった。

顔を見てから薬が投与されたが
眠るには至らなかった。

しかし気づいたらオペが終わっていた。


という内容だった。

まぁちゃんとした口調で説明してくれていたので
とりあえず一安心。


お腹の痛みは子宮の収縮が原因で
帝王切開に限らず起こる痛み。

ただ妻は「よく縮んでる」ので痛みがひどいのでは?とのこと。

ああなるほど、ふた安心。


痛み止めが効いてきたのか、痛みの波はあるが
だいぶマシになった様子だった。


なんだろう

帝王切開前に色々と説明をうけていたが
【手術中にお腹が痛くなっても子宮の収縮だから心配ないよ。】

て教えてくれたら今回のようなパニックは起きなかったんじゃないかと思ったりもする。

ただ先生が「みなさんそうですよ」的な事を言っていたが
帝王切開でそんなんなる、って初めて聞いたけど。

まぁ人によるのだろう。




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