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ヘルムズ

遥々赴いたコルカタでエニ=リーが目にしたのはまたも兜と地獄だった。

対兜強襲部隊「イナバ」のクイ・スーツ部員200名の大半は、既に死体となって積み上がっている。最新型の対兜用クイ・スーツ達の背中には無数の矢。白銀だったペイントは赤褐色へ変わり、ヘルメットの『打垮_盔 脱兎』の文字は砕けた。
見上げると矢の群は未だ宙を旋回していた。

(苦しい、あまりにも苦しい!)

「莉ョオッ!」

死体達の中央、紅甲冑に身を纏った姿が何かを叫びこちらを指差す。
獲物の兜、ジニテーだ。

「医′縺!」

この世の言葉ではない。

次第、ジニテーの紅兜甲冑が光輝きだし、呪術めいた文様が浮かび始めた。

偽神症だ!

ああ!ジニテーは自らを神だと錯覚している!

兜に刻まれた魔術式の干渉は過剰を通り越し、常軌を逸した神の領域へと導く!

(もはや退くこともッ!)

エニの背後の4名が銃口を前に、だが震えた膝が標準を荒くした。
エニの標準を合わせるその手も震えて定まらない。
宙に浮かんでいた矢の猟犬たちは切っ先を向ける。

「撃て!中央政府のその未来の為!」




 気づけばエニの体躯に無数の矢が突き刺さっていた。
背後で物が倒れる音がした。

やはり、と思うより前に、視界が別のものを捉えた。

自分たちと同様の白銀クイ・スーツが、猛虎のように走り抜けていく様が見えた。

メットには『脱兎』の文字はなかった。
それは黒いボロコートを着ていた。メンテもしていないのか、その白銀はくすみ傷だらけに見える。

(クイ・スーツの部隊は黒いボロコートなど着ては!)

ホーミングめいて幾多の矢が黒コートのクイ・スーツを狙う。

刹那、黒コートはクンフーめいた手捌きで矢を一掃し、そのままジニテーの頭部に壊滅的な蹴りを直撃させた。

ジニテーの身体が四回転半し横転していく。

(ナゼ?どこの部隊が?)

即座に照合されたメットの測定結果には「NO DATA」の文字だ。

気づくように黒コートがこちらを向いた。


「俺の名前を、返せ」


【続く】


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