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日常で見かけるゲームっぽい仕組みをさがしてみよう

ボードゲームを作るとき、日常で見かけたゲームっぽさを転用することがけっこう多いです。

例えば最新作の『サラダマスター』という企画は、なんか身体の調子よくないな、ちょっと野菜多めに食べるようにしようかなという、野菜への興味がきっかけで始まりました。

過去に作ってきたゲームも大体こういう感じです。日常にある仕組みから作っていけると、ネタ切れも起こりませんし、遊ぶ人には理解してもらいやすいし、いいことづくめだと思ってます。

コインパーキングはジレンマバトル

最近だとたとえば、コインパーキングってめっちゃゲームっぽいなと思いました。

きっかけは、外を歩いていて見かけたコインパーキングがすごく高かったことです。たしか、30分500円。単純比較にならないかもしれませんが、パーキングメーターが1時間300円なので、大体それの3倍くらいの価格です。それでも思い返すとまあまあいつも埋まっていて、不思議だなと思ってました。

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そこからちょっと移動すると30分300円とかになるんですが、少し考えてみると、500円の駐車場は某観光地にかなり近い場所だったんですよね。だからそこに行きたい人が使ってるのかなと。

これの何がゲームっぽいかというと、ここに駐車場を運営する企業側とドライバー側のジレンマがイメージできる点です。

企業側はできるだけ利益を大きくしたいけど、あんまり高くしすぎると誰も車を止めてくれなくて利益が出なくなっちゃう。ドライバー側は観光地に来たからには近くの駐車場に止めて楽々観光したいけど、離れれば安くなる。コインパーキングはそんなジレンマバトルのステージなのです(想像)。

数万人単位でこれを繰り広げていると、妥協点がデータとして蓄積されていくので企業側が有利になると思います。結果、ドライバーはちょっと高いなと思いながらもコインパーキングに駐車することになるでしょう。このゲームは企業側の勝ちです(なんかひどい話っぽいけど、別に騙したりしてるわけではないので悪いことではない)。

ただ、僕がボードゲームデザイナーとしてコインパーキングのゲームを作るなら、プレイヤーがそれぞれパーキングを運営する企業になって、顧客であるドライバーを奪い合う形にすると思います。持っている情報量は大体同じで、いかに市場にフィットする提案をできるかを競う感じ。

ちなみにそれと似たことをやらせるゲームは既にあって、『フードチェーンマグネイト』と言います。僕はとても好きなゲームです。おそらくですが、作者はファストフードチェーンがしのぎを削っている様子を見てこのゲームを発想したんじゃないでしょうか。

「ゲームっぽさがあるはず」と思って見る

今回僕はコインパーキングにジレンマという要素を想像してゲームっぽいと思いましたが、他にも「ゲームっぽさ」を感じるシーンは日常にたくさんあります。

レストランは何を食べればもっともハッピーになれるかメニューを見て考えるゲームで、ビジネスは幸福や利益を最大化させる拡大再生産ゲーム、保険は死亡や病気の発生タイミングに賭けるギャンブルゲームとも言えます。

共通して言えるのは、「ゲームっぽさ」は複数の選択肢やプレイヤーがいて、絶対の正解がない状態で発見されやすそうだということです。正解の傾向までは読めるけど、最後の最後は決断が必要になる感じ。そういうシーンを見つけたとき、ゲームにできるかもと僕は考えます。

ちなみに「ゲームっぽさを見つける」を重視するなら、“ゲームっぽさがあるはず”という決めつけじみた見方がコツです。このとき事実は重要じゃなくて、解釈して、アイデアが拾えるかを優先します。具体的な調査はアイデアがもうすこし形になってからでよいのです。コインパーキングにジレンマなんて、本当はないかもしれません。

というわけで日常から「ゲームっぽさ」を見つけた例と、それをやるときのコツでした。多くのゲームデザイナーはこういうフィルターで世の中を見てるんじゃないでしょうか。

ちなみに「ゲームっぽさ」にさらに興味があれば、古今東西のいろんなゲームがどういう仕組みでできているかがまとめられている『ゲームメカニクス大全』を読んでみると良いと思います。パラパラめくっても楽しいので、紙で買うのがおすすめです。




ナイスプレー!